クラフトバンク総研

パイプ探査ロボット「配管くん」へ懸ける思い~株式会社KOEI

更新日:2026/1/10

2025年1月12日(日)15:00~15:55

ゲスト:株式会社KOEI 代表取締役社長・船橋吾一さん

昭和21年創業、山形県山形市を中心に建設設備業を行ってきた弘栄設備工業株式会社。創立70年を機に株式会社KOEIと名を改め、地域に愛される企業として成長し続けています。日々新たな課題に直面する中で、社運を賭けて開発したパイプ探査ロボット「配管くん」のお話など、船橋社長のお仕事への情熱をたっぷりと聞かせていただきました。

今年で創業70周年、建築設備工事は「建物を生かす」仕事

クラフトバンク中辻(以下、中辻):早速ですが、まずは会社のことについてお伺いしたいのですが、株式会社KOEIさんはどのような会社なのでしょうか。

船橋吾一さん(以下、船橋):株式会社KOEIは、昭和29年に設立されまして、今年で70周年という記念すべき年を迎えています。本日のこのラジオ出演も大変嬉しく思っております。

私たちの仕事は、建設業の中の建築設備工事を担っております。いろんな方にお話をするのですが、「建築設備工事ってわからない」とよく言われます。私はこの建築設備工事を、いつも自分の体に例えて説明するストーリーがありまして。体というのは見た目や形があって、それを生かす中身が当然あります。建物も同じで、屋根や壁といった見えるところは建設会社さんが行いますが、我々建築設備工事というのは、その中に敷設する、いわゆる「建物を生かす」ものを施工している会社です。

中辻:建物を生かす中身、ですか。

船橋:人間も若い頃は見た目を気にしますが、私も53歳になってきますと、そういうところよりも中身、健康でいるために体の中を大切にしなければいけないと思います。いわゆる人間の内臓系ですね。食べ物を口から入れて消化し、腸で栄養を取って排出するとか、心臓で血液が送られて循環するとか。そういった人間を人間らしく生かさせるための仕事をしているのが、我々建築設備工事だとよく言っています。

建物も屋根や壁、空間があっただけでは、人間が快適に暮らせないですよね。ご自宅を思い浮かべていただくと、快適に暮らすための冷暖房設備があったり、水回りがないと生きていけません。そういった空間を快適なものにする、いわゆる「中から」この建物を生かす役割というのが建築設備工事であるとお話をさせていただいて、それを真剣に向き合いながら70周年を迎えたという会社になります。

祖父が満州鉄道の設備技師だった

中辻:最初の頃から設備工事でスタートされたのですか。

船橋:70年前、私の祖父が創業するのですが、その前に戦時中、満州鉄道の設備技師として日本から派遣されて働いていました。終戦と同時に日本に当然戻ってくるわけですが、その頃から設備をやっておりました。いわゆる日本の粋を集めた最新技術がその満州鉄道にあったわけで、それを持ち帰って起業した場所が、実は山形であったと。元々出は栃木でして、山形にゆかりもなく、たまたま仕事で山形に来たきっかけが、その創業するきっかけになったという形になります。

「弘栄設備工業」から「KOEⅠ」へ社名変更

中辻:70周年を機に、社名を変更されたとお伺いしました。

船橋:今年の8月までは「弘栄設備工業株式会社」と申しまして、今年社名を変更させていただきました。これも70周年ということもありますが、実は「弘栄」というのは、私の祖父が「船橋弘(ひろし)」といいまして。「弘が栄える」と書いて弘栄設備工業と名付けたのです。

中辻:ご自身のお名前だったのですね。

船橋:その意を組んで、先代の私の父が社長になってもその意を組んでいるわけなので、やはり「弘栄」という響きだけは残したかったのです。世間一般には「弘栄設備工業さん」と言われないで「弘栄さん」と言われるので、その響きを残しながらも、いろんな形、いろんな色に変えられるような社名に変更しようと前々から思っていたのが、70周年このきっかけに変更したということになります。

グループ拡大と新規事業への挑戦

中辻:なぜ「設備工業」を取られたのでしょうか。

船橋:私が2012年に社長になってからグループを拡大しまして、2社から今13社になりました。建設業がだいたい占めているのですが、もう一方で新しい事業を立ち上げたりもしています。これは建設業もさることながら、我々の業界の発展、または振興みたいなところの中で、業界を魅力的なものにしていきたいなというところで、実はちょっと本業から派生した、考えの違う事業を始めたということもあって。

そういう動きの中で、建築設備業をこれからも担っていくのはもちろんのこと、いろんな方向性を見いだすことができる社名に変更すべきだろうという中で、弘栄設備工業の「設備工業」を取りまして、ローマ字に変えて「KOEI」とさせていただいたというところになります。

社長就任と東日本大震災

中辻:その建設業から派生した新しい挑戦というのは、どんなことか教えていただけますか?

船橋:私は2012年に社長に就任しました。その前、皆様ご承知の通り東日本大震災があったわけですね。私は副社長という立場で、社長は先代の父でした。その気苦労から実は癌になるのです。2011年の11月の手術のお見舞いに行った時に、「もう早いけど、来年3月社長になってくれと。俺どうなるかわからない」と。

中辻:そうだったのですね。

船橋:(父は今ピンピンしてるのですが)そういう気持ちの中で、私もいろんな役職を経験する中で、経営者としての目線が自分の中で出来上がっていたので、5年か10年前倒しの社長を引き受けることになりました。

「新しい事業を興す」決意

船橋:ただ副社長と言いながらも、それまでに1999年から13年ほどこの会社でお世話になって、営業課長から始めたのですが、会社は生き物であり大変な状況に置かれていた時期もあり、そういったことを経験した時に、前々から「何か新しい事業を興して、その事業から新しい市場を作っていく、プロダクトを作って、そのプロダクトを利用する市場を作っていくことで、新しい自分の生きる道を作らなければいけないだろう」と。

中辻:ご自身で道を切り開こうとされたのですね。

船橋:そう思い立ったのが2012年社長になった時で、何か新しいことをしようというところの中で、MA(M&A)というキーワードのもとグループを拡大していくことと、もう一つは新しい事業を興すということを選ぶわけです。

反対を押し切ったロボット開発

中辻:その新しい事業が、先ほどおっしゃっていたモノづくりですか?

船橋:工事屋なので、モノづくりなんかやったことないわけです。ソフトも作れない、モノなんか作れない。だけど気持ちはある。その気持ちはどこにあったかというと、そういう時代を経て、この会社は永続的に発展し続けることを選ぶならば、何か自分で挑戦しなきゃいけないよね、というところから、実はその事業を2012年から始めるわけです。

中辻:それが「配管くん」というロボットだったのですね。

船橋:そのニーズは、私が営業だったので、営業で聞くお客様の声から拾って「配管くん」っていうそのロボットを作って。そのロボットを市場に投入することによって、新しいお客様から新しいビジネスモデルを回して、新しい仕事を作って、そこから利益を得て、今までの建設業の中にとらわれることなく、自分で生きる道を作っていくということを選んだのです。

役員会は反対の嵐

中辻:かなり大掛かりな挑戦ですが、周りの反応はいかがでしたか。

船橋:もう大反対でした。社員の皆さん「何言ってんだこの人」って、全然わけもわからなかったと思います。役員会で言うわけですが、そしたらもう皆さんから否定の嵐で。

中辻:お父様からも。

船橋:私の父、先代社長も「ふざけるなと。何考えてんだと。そんなもの作って、そんなお金使っても何の意味がないよ」と散々言われまして。罵倒の嵐だったのですが、やっぱり自分なりの経営をしたいなってすごく思っていて。先代と初代の意を組みながらも、自分なりの経営を貫くのが社長であるし、そうしなければいけないだろうと自分に言い聞かせて、それを持ち続けるわけです。

見えない配管を調査する「配管くん」

中辻:その「配管くん」というのは、どういうロボットなのでしょうか。

船橋:我々は建物を快適に暮らすための設備を施工していますが、主には水とか、使った水を排水するとか、ガスを供給するためのガス管とか、いわゆる配管を敷設する事業が主になります。建物ができた時、配管について皆さん存在はわかってると思いますが、敷設されてる状況って確認できないんです。

中辻:壁の中や床下ですものね。

船橋:ただ、見えなくていいのかっていうと実は違っていて。建物が古くなると、屋根を塗り替える、壁を塗り替える。でも配管って見えないところに敷設されているので、実は問題が起きてから、その大切さに皆さん気づくのです。

私たちはお客様の悩み事をお伺いしに行きますが、そこで言われるのが、「配管って見えないんだけど、どっかで漏れていると。どっかで異常をきたしている」と。いろんな業者さんに直してほしいって言うけども、結局見えないので「見えるところから見えるところまで全てやり替えましょう」という提案でしか来ないと。お客様が要望するのは、「問題箇所をピンポイントで調べたい」「そこに予算をかけたい」と。大きな修理じゃなくて、できれば小さいところで、工期も短く修理したいというのがお客様の願いなのです。

中辻:その願いに応えるものがなかったということですね。

船橋:はい。だったら、我々配管を敷設している会社であれば、何かそのお客様の悩みに応えることができるだろうという答えが、「配管の中に入っていって、その位置情報とか状態がわかるデータを取ることができれば、わかればピンポイントで直すことできますよね」というニーズを、具体的に作り込んだのが「配管くん」だったと。

2.5cmの細い配管にも対応

中辻:配管の中を見てくれるのですね。大きさはどれくらいなのですか?

船橋:4つぐらい製品がありまして、2.5cmから15cm、20cmぐらいまでを4つのタイプで。我々は建物の設備に特化しているので、インフラ(道路)の太い配管ではなくて、建物を全て確認するには、やはり細いところからある程度の太さまでをカバーできなければ、お客様のニーズに応えられないというところで、その商品群を作ることができたということになります。

「配管くん」事業の現在地

中辻:その「配管くん」の現在の状況はいかがですか。

船橋:ようやく立ち上がってきました。事業を興すって大変だなと本当に今も痛感してます。ただ、お客様のニーズをしっかり捉えて、それを商品化して、しっかりお客様にアプローチすることができれば、必ず物事ってうまくいくかなと、今はそう思いますけど。

中辻:当時は違ったんですか?

船橋:ついこないだまでは全くそう思わないで、もう本当に始めてしまったはいいけど、どうするんだろうと。毎日心が折れてましたね。

東北DX大賞を受賞

中辻:この「配管くん」も大きなDXの取り組みの一つですよね。

船橋:そうなんです。我々そこを狙ったわけじゃないんですけど、世の中がDXに動こうとするところとちょうど合ったのです。行政のDX大賞というのが東北であって、第1回目、東北経済産業局のDX大賞を当社が取らせていただきました。

「見える化」による作業量の圧縮

中辻:その「配管くん」がDXだと認められたポイントはどこだったのでしょうか。

船橋:今、盛んにやらせていただいてるのは駅舎の図面化だったりするのですが、配管って見えないところに敷設されているので、例えば修理をするとか、大掛かりにやり替えるとなった時に調査をしなければいけないのです。見えないところを調査するって大変ですよね。「ここを掘ったら配管あるんじゃないの」って掘るんですね。往々にしてないのです、そこに。で、やってると「じゃあ全部やり替える」ってことになっていくのですが、「配管くん」を使うと、その配管の軌跡が3Dのマップデータとして取得できるということと、あと、その状態を映像としてリンクさせることができます。

中辻:すごいですね。

船橋:いわゆる、見えないところを見える化できる作業がなくなるわけです。作業量が大幅に圧縮できると。で、ピンポイントで修理ができたら工期も大幅に圧縮ができる。イコールDXだというところを認定されたのです。

10年前からのiPhone/iPad導入

中辻:そのほかにも、施工の部分などでDXされていることはありますか?

船橋:社長に就任したのが2012年で、その2~3年後に、実は社員にiPhone、iPadを持たせるっていうところで。多分、建設業、もっと言うと地元の会社の中では、先んじて社員に配ってたはずなのです。10年ぐらい前なので。

中辻:かなり早いですね。

船橋:そこも当時の経営陣から「何のため」とよく言われたんですけど。

社員と「つながる」ためのデジタル化

中辻:なぜ導入しようと思われたのですか。

船橋:我々の仕事って、現場ができると社員をそこに現場代理人として送り込むわけです。ちょっと遠い現場があると、その社員と触れ合うことができないわけですよ。会社になかなか戻ってこれない。その状態がわからない。社員からすると「置いてけぼりされてる」感じが。

それをなくすために、よりよく心と心が通じ合うために何ができるか。ソフトとか作れないので、だったらあの時出ていたiPad、携帯を渡す、そういうところから当社は始めたのです。Excel状態でみんな書き込みができる、もう古い話かもしれませんが、状態を報告しあって、経営陣が確認して連絡をするとか。

中辻:情報共有のツールとして。

船橋:メーリングリストで情報を提供したりとか、あと会議で、本社で行われているものに各現場から入ることができるとか。今はいろんなツールがありますけど、その以前の話なので、それがその当時からやろうとしてきたことで、端末を配ったというところから始まってます。

その時からリモート会議などもよく行っていました。

社員が自ら構築する社内システムと社員の自発的な動き

中辻:今では、どのように活用されているのですか?

船橋:今でこそテレビ電話とか会議でつながることは容易にできてます。でも、我々はそういった感覚にすぐ馴染めたのは、多分、先行投資で端末を配ったからなのです。今、当社で一番誇りに思ってるものがあって。私、何も言ってないのです。仕事効率化でデジタルを使おうと社員が選んで、社員があるソフトを使って自ら構築してるのです。なので、今まで紙ベースだったものが、今ほぼほぼ紙がないっていう状態になっていて。

中辻:それは社長のご令ではなく?

船橋:ないです。社員が「こうである」っていう、デジタル化を進める担当がしっかりいるからできたのかもしれないですけど、その彼に要望を出すことで、作ってもらったものを使って。で、作ってるのを見て、作れる人間が何人かできてきて、今、社内システムっていうのは相当、私が知らないスピードで。

中辻:すごいですね。

船橋:そういう環境が作れたのは、やっぱりこう、自分で遊ばせた、考えさせた結果がそういう形になっているのかなと。

遊びから生まれたデジタル活用

中辻:最初に導入された時、何かルールはあったのですか?

船橋:最初は「遊んでいいよ」って言ったのです。よく制限する会社があるんですけど、そういう時代じゃなかったので、まず遊んでその価値を分かってもらって、慣れてもらって、そこからどうつながっていくかっていうことを、我々だけじゃなくて社員同士からも提案をいただく。遊びから入って、そこから仕事に生かしていくっていうことを選んだっていうのが、ちょうど十数年前でしたね。

社長勉強会での情報共有

中辻:社員の皆さんとの距離感も、そういったデジタルツールで縮めてこられたのですね。

船橋:その背景には、私が社員との時間をすごく大事にしてきたというのもあります。社長になった当初はまだ2社で100人ぐらいだったので、毎月1回、全営業所と全会社を回ってたのです。

中辻:全国をですか。

船橋:そういうふうなことが多分あったので、今に至れるかなと。今はもう不可能なので、その頃からやっていたのが、その端末を利用して「社長勉強会」っていうのをやってるのです。これは一方通行なんですけど、私が何を考えてるかっていう最新情報とか、私なりの言葉の解釈を説明することで、社長ってこういう考え方持ってるんだっていうことを理解する機会を、ずっと示してきた。そういう結果が、自ら行動しよう、自走する組織になってきたのかなと思いますね。

建物と共に残り続ける仕事の魅力

中辻:船橋さんが思う、この建設設備業の魅力はどういったところでしょうか。

船橋:やはり、我々は見えないところを施工してますが、ただ建物はそこに存在するのですね。建物が取り壊されるまでは、我々が携わった建物がそこに存在するわけです。これは未来永劫、例えば子供ができる、孫ができる、いろんな家族に誇りといえるような建物を、この地域に残すことができる。そういうふうなことが、我々の業界の素晴らしいところなのかなと思います。

苦労の末に掴んだ公共施設の受注

中辻:これまでで、特に印象に残っているお仕事はありますか?

船橋:数年前ですが、当社は地域ナンバーワンの業績を持っていましたが、実は観光庁発注の公共的施設の受注がかなわなかったのです。入札に参加する上で、我々は国から点数をつけられていて、その点数によって受注確率が変わるのですが、我々の点数は追いついてない時代があったのです。

中辻:点数が足りなかった。

船橋:もうこれは事実変えられないので、受注可能性があるのであれば、「提案」してその提案を認められて点数にしていく入札が片一方であって。その提案力を高めることによって、点数を上げて他社との差を埋めて受注に向かっていきましょうと。そこで社員のいろんな部署から数名上げてもらって、プロジェクトチームを発足して提案をブラッシュアップして。

中辻:結果はいかがでしたか。

船橋:見事、一つの物件で二つ発注されるものの、二つとも受注をさせていただいたと。ここからうちの会社は受注ができる環境が全て整った。落札確定の連絡をいただいた時は、本当にもう抱き合って涙して、みんなで喜んだことを思いますね。

「配管くん」で業界全体の発展を目指す

中辻:では最後に、これから取り組んでいきたいことをお聞かせいただけますか。

船橋:今、koeluグループの成長の鍵は、先ほどから申し上げている「配管くん」を利用したビジネスモデルを回している「弘栄ドリームワークス」という会社がありまして、その成長にかかってると思ってます。この建設設備業は、インフラを守るという意味合いからすると、我々の業界は未来永劫存続しなければいけないと私は思っていて。

中辻:業界全体として。

船橋:そのためには、我々のようなアプローチを良しとするならば、一緒になってこの「配管くん」ビジネスを使いながら、お互いが発展に結びつけるために、これを利用していくことができたならば。その輪が広がれば、業界はより良い発展をしながら、地域社会に貢献できるような業界が築けるんじゃないかなと思ってるのです。

中辻:全国に広げていくのですね。

船橋:今、「配管くん」を利用したKOEⅠsドリームワークスでは、そういった思いを同じくする人たちをパートナーとしてお迎えする機会を作ってます。こういう動きを全国に発信をしながら、よりよく我々の建設設備業界、もっと言うと建設業の発展に、もっと言うと建設業の魅力創出につなげていければなというふうに思っています。

株式会社KOEI https://koeisetsubi.jp/

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