解体工事業界のリーディングカンパニー~株式会社前田産業
更新日:2026/1/10
▼目次
- 1 住宅から犬小屋まで。あらゆる建物を壊す「総合解体」の領域
- 2 30年後の健康を守る。アスベスト除去という「特殊解体」の使命
- 3 処分場も自社で運営。解体から処理まで一気通貫の強み
- 4 熊本から東京まで。全国8支店を展開する攻めの戦略
- 5 入札参加条件をクリアするために。地域に根ざした支店展開の裏側
- 6 従業員226名。100名以上の直営職人を抱える現場力
- 7 建設一家に生まれて。バスケットボールの夢から解体の道へ
- 8 父の背中を見て育った。汗にまみれた「かっこいい」建設業の姿
- 9 2016年熊本地震。35,000棟を2年で解体した壮絶な日々
- 10 住民の想いに寄り添う。「解いて返す」職人たちのキャッチフレーズ
- 11 45メートルの高さを壊す。巨大重機がもたらす解体の魅力
- 12 重機をキリンに見立てて。子供たちを笑顔にする現場の工夫
- 13 現場の安全を遠隔で見守る。移動式カメラと15台のモニター
- 14 リーダーの視点を共有する。ヘルメットカメラ導入の狙い
- 15 無人重機の可能性。解体特有の「感覚」をどう再現するか
- 16 事務作業の効率化。AIによる施工計画書作成の自動化
- 17 出退勤もアプリで管理。位置情報を活用した公正な労務管理
- 18 自由参加の「日曜日勉強会」。ベテランから若手へ技術を継承
- 19 事故事例を徹底共有。リーダーとしての責任感を育む教育
- 20 住民説明会に3Dを活用。安心感を生むビジュアル化の力
- 21 「解体のアイディアマン」へ。杉野支店長が描くこれからの展望
2025年2月2日(日)15:00~15:55
ゲスト:株式会社前田産業 南九州支店長 杉野洋平さん
熊本に本社をおき、全国7箇所を拠点に全国で、建造物をいかに安全に「解いて」地球に「帰す」かを常に探求する株式会社前田産業。「環境クリエーター」として、「空気」「水」を汚すことなく、地球に負荷をかけない「安全」を最優先した解体技術を創造し、エネルギー資源の利活用を目的とした産業廃棄物処理を行い、循環型社会の形成に貢献しています。番組では、南九州支店長の杉野洋平さんに会社としての取り組みや、今後の展望などを伺いました。(熊本県熊本市・熊本シティエフエムにて収録)
住宅から犬小屋まで。あらゆる建物を壊す「総合解体」の領域
クラフトバンク八木橋(以下、八木橋):早速ですが、まず前田産業について、どういったお仕事の内容なのか教えていただけますか。
杉野洋平さん(以下、杉野):会社の業種としましては、総合解体工事をさせていただいております。もちろん建物を壊す工事、そして今問題になっているアスベストやダイオキシンといった特殊解体もやらせていただいております。
クラフトバンク田久保(以下、田久保):住宅と、ビルや商業施設といった非住宅があると思いますが、どちらも対応されているのですか。
杉野:壊せるものはすべて壊します。大きいものから小さいもの、犬小屋まで解体は可能です。
八木橋:建物であれば、どんなものでもいけるということなのですね。
30年後の健康を守る。アスベスト除去という「特殊解体」の使命
八木橋:今お話にあった「特殊解体」ですが、通常の解体とはどのようなところが違ってくるのでしょうか。
杉野:現在、日本全国、世界でもそうですが、アスベストという建材があります。それが法的に使用できない時代になっており、それを除去する作業を行っています。
杉野:アスベストを吸い込むと、約30年後くらいに中皮腫という病気になる可能性があります。アスベストは繊維でできている素材ですが、それが肺に刺さることで病気を引き起こし、お亡くなりになる方が出てきて、やっと問題になってきた状態です。そうしたアスベストの除去を適切に行える解体を行っています。
八木橋:除去ができる解体の仕方をしっかり徹底されているのですね。
処分場も自社で運営。解体から処理まで一気通貫の強み
八木橋:解体だけでなく、産業廃棄物の処理場も会社で作られていると伺いました。
杉野:熊本県内に2箇所あります。北区の方と天草の方で処分場を運営しています。
田久保:処分場自体は自治体の施設であることが多いですが、その運営を前田産業でやられているということなのですね。
杉野:そうです。前田産業が解体して、その処理場に持っていき、前田産業の人間が受け取るという流れになります。
熊本から東京まで。全国8支店を展開する攻めの戦略
八木橋:現在、事業所はどれくらいあるのでしょうか。
杉野:先ほどの処分場2箇所と、熊本本社、沖縄、鹿児島、南九州、福岡、広島、大阪、名古屋、そして東京です。全部で8支店あります。
八木橋:全国でお仕事を受けて、どんどん支店を広げてこられたのですね。
杉野:もともと県外の工事も熊本本社から行っていました。福岡や広島に行っていたのですが、それならば支店を立てようということで設立しました。
入札参加条件をクリアするために。地域に根ざした支店展開の裏側
杉野:もう一つの理由は入札工事、公共工事です。その地方で入札公告が出る際に、そこに支店を持っていないと入札に参加できないという条件があります。それならば事務所や支店を作って入札に参加しようということで、支店を設立してきました。
田久保:支店を増やし始めたのは、最近のことなのですか。
杉野:約5年前くらいから各支店を作っていき、現在に至ります。
田久保:コロナの影響で解体の需要が伸びたという話も聞きますが、そのあたりはいかがでしょうか。
杉野:我々解体業としては、それほど大きな影響は受けていません。良くも悪くも、というところです。逆に建築会社さん、作る側の方は物が届かないといった理由でダメージを受けていたという話は聞いています。
従業員226名。100名以上の直営職人を抱える現場力
八木橋:現在、従業員の方は何名くらいいらっしゃるのですか。
杉野:約226名です。解体メインでここまで大きな会社は、九州では他にないと思います。おそらく日本でも一番と言えるくらいの規模ではないでしょうか。
杉野:何をもって一番かというのは難しいですが、他社には負けない会社だと思っています。
田久保:直営の職人さんも結構抱えられているのですよね。
杉野:職人は半分以上いると思います。100名以上は在籍しています。
建設一家に生まれて。バスケットボールの夢から解体の道へ
八木橋:杉野さんご自身が前田産業に入社されたきっかけは何だったのでしょうか。
杉野:実家が、祖父の代から土木の建設業を経営していました。父が後を継ぎ、現在は兄が3代目となっています。私は次男ですので、兄弟で同じ会社ではなく、どこか別のところを見つけなさいという父の判断があり、前田産業に入社しました。
田久保:新卒で入られたのですか。
杉野:いくつか別の建設会社を経験した上で、最終的に前田産業に入社しました。
八木橋:建設業界に入ることは、学生時代から決めていたのですか。
杉野:一択でした。将来の夢を聞かれて、当時は日本にプロバスケットボールリーグがなかったので「NBA」と言っていましたが、それは非現実的だったので、建設業しかないと思っていました。
父の背中を見て育った。汗にまみれた「かっこいい」建設業の姿
八木橋:家業が建設業だと、反発して別の業界へ行く方も多い印象ですが、杉野さんは違ったのですね。
杉野:小さい頃から見ていたというのもあります。昔は父が汗水垂らして泥だらけで帰ってくる、そういう姿が素敵だな、かっこいいなと思っていました。
杉野:今の若い方はスーツを着てビシッとしているお父さんがいいと言うかもしれませんが、私はその真逆でした。父や祖父の姿を見て、建設業はかっこいいと思っていました。
八木橋:実際に入社されてからは、現場のお仕事をされていたのですか。
杉野:現場は10年くらい経験させていただきました。
2016年熊本地震。35,000棟を2年で解体した壮絶な日々
八木橋:現場経験の中で、特に印象に残っている現場や大変だったことはありますか。
杉野:2016年の熊本地震です。3,5000棟の建物が倒壊しました。当時の知事が、熊本県にある解体事業者の協会に依頼し、それを2年のスパンで終わらせてくれと言われました。35,000棟という途方もない数字です。
杉野:結果として、2年間で終わらせました。県外の業者さんからも応援をいただいたりしましたが、人手不足で現場に人が行けないという苦労もありました。2年で終わらせるという公約がありましたので、意地でも終わらせるという思いでバタバタとやりました。
田久保:その2年間は、相当集中されていたのですね。
杉野:休みもなかったです。平日は現場、土日はクレーム対応が多かったです。解体していると近所の方から「うるさい」とか「重機が邪魔だ」といった連絡が入ります。一般の方は土日が休みですので、連絡も土日に集中しました。
住民の想いに寄り添う。「解いて返す」職人たちのキャッチフレーズ
八木橋:2年間をやり遂げたときは、どのようなお気持ちでしたか。
杉野:ホッとしたというより、やり遂げたという達成感の方が強かったです。被災された方には申し訳ないですが、無事に終わってよかったという気持ちでした。
杉野:ただ、解体期間中は辛い思いもありました。建物を壊す際、ここで家族団らんがあったんだなと感じることもあります。住まわれていた方が涙目で見に来られて「ご苦労様です」と言ってくださるのを見ると、辛い思いもしながら、やり遂げなければいけないと感じました。
八木橋:住まわれていた方の思いを汲み取りながらの現場だったのですね。
杉野:弊社のキャッチフレーズに「解いて返す職人たち」というものがあります。思い出のある建物を敬意を持って解き、綺麗にお返しするという思いでやっています。
45メートルの高さを壊す。巨大重機がもたらす解体の魅力
八木橋:杉野さんから見た、解体工事というお仕事の魅力はどこにありますか。
杉野:やはり大きい重機です。高さ45メートルくらいのところを壊すのですが、そういった光景はなかなか見られません。大きな機械を操る職人の姿も魅力だと思います。
八木橋:重機がお好きなのですね。
杉野:息子と一緒に重機が大好きで、各地の建設フェスタに行ったりしています。前田産業のホームページにある保有重機も舐めるように見ています。SK2200などは本当にかっこいいです。
杉野:弊社には女性のオペレーターも2名いますが、非常に上手です。重機を操る姿は本当にかっこいいですよ。
重機をキリンに見立てて。子供たちを笑顔にする現場の工夫
杉野:余談ですが、前会長が保育園の隣で大きな重機を使って解体していた時の話があります。お昼寝の時間にうるさいとクレームが来て、工事が進まなくなりました。そこで重機に絵を描こうということになり、キリンの絵を描きました。
杉野:するとクレームどころか、園児たちが見に来て「動かして」と大喜びしました。それを見た先生も「仕事だから」と理解してくださり、クレームが来なくなったそうです。
八木橋:素敵なエピソードですね。子供たちは働く車が大好きですから。
杉野:私も保育園や幼稚園の隣で解体する時は、重機の先端が口に見えるので「昔はこういう恐竜がいたんだよ」と例え話をしたりします。
現場の安全を遠隔で見守る。移動式カメラと15台のモニター
八木橋:ここからはDXやデジタル化の取り組みについて伺います。現場で導入されているものはありますか。
杉野:現場に移動式のカメラを設置しています。上下左右に動くカメラで、それを本社で全員が見られるようにテレビモニターで共有しています。
杉野:一人の目で見るより、みんなの目で見て安全を第一に考えています。ズームもできるので、不安全な行動がないか目視できます。また無線を持たせて、管理する側から指示を出したりもします。
田久保:安全パトロールを遠隔で行っているということですか。
杉野:現場に行くのが一番ですが、行かなくてもカメラでわかる範囲の安全パトロールを行っています。これによって人件費の削減にも繋がっています。
リーダーの視点を共有する。ヘルメットカメラ導入の狙い
杉野:ゆくゆくは、職長という現場のリーダーのヘルメットにカメラをつけようと考えています。リーダーと同じ視点を第三者が確認し、指示を伝える。録画機能もつくので、後で振り返って「ここが危なかった」と指導することもできます。
田久保:現在は何台くらいのカメラを回しているのですか。
杉野:15台くらいです。県外の現場をメインにモニターしています。熊本からはすぐに行けない距離ですので、常時モニターを見ています。
田久保:解体現場は危険が伴いますから、多角的な視点があるのは心強いですね。
無人重機の可能性。解体特有の「感覚」をどう再現するか
田久保:解体工事におけるICTや新しい工法については、どのような変化がありますか。
杉野:土木などでは一般的になりつつありますが、無人の重機を遠隔で操作する技術があります。一度弊社の現場でも他業者さんの下でやらせていただいたのですが、なかなか難しいです。
杉野:ゲーム感覚ではありますが、実際に乗っていないので感覚がわからないという面があります。手先の繊細な動きが必要な解体では、少しのタイムラグが命取りになります。現在はメーカーさんがその時差を解消してきているので、今後は現実味を帯びてくるのではないかと思っています。
八木橋:自動運転などと同じで、解体の世界でも無人化が進んでいくのかもしれませんね。
事務作業の効率化。AIによる施工計画書作成の自動化
杉野:あとは施工計画書の作成をAI化しようという動きもあります。解体の手順をインプットして、勝手に図面化させる。そうすることで人件費もかかりませんし、発注者さんへの説明もスムーズになります。
田久保:そういったAIツールを開発している会社があるのですか。
杉野:大手の会社ではあります。初期費用はかかりますが、導入できれば我々も助かります。
杉野:すべてが無人でできるわけではありませんが、AIやロボットの力を借りることで、より安全で効率的な解体ができるようになると考えています。
出退勤もアプリで管理。位置情報を活用した公正な労務管理
田久保:社内の連絡や事務的な部分でのデジタル化はいかがでしょうか。
杉野:スマートフォンに出退勤のアプリを入れています。以前はタイムカードをガチャンと押して集計していましたが、今はアプリの「出勤」ボタン一つです。
杉野:どこでも押せてしまうと困るので、位置情報を紐づけて、現場の近くでしか押せないようにしています。有給や半休の申請もすべてアプリ上で行います。
田久保:200名以上の集計をするのは大変ですから、自動化のメリットは大きいですね。
杉野:押し忘れると欠勤扱いになるという厳しいルールにしていますが、そうしないとみんな守りませんから。社内ルールの徹底という意味でも役立っています。
自由参加の「日曜日勉強会」。ベテランから若手へ技術を継承
八木橋:社員さんの教育については、どのような取り組みをされていますか。
杉野:日曜日に自由参加の勉強会をやっています。頑張りたいという人たちが集まり、ベテランの職人がマンツーマンで教えたりしています。
杉野:特に重機のオペレーターは、一人で運転するので教えるのが難しいです。広い敷地で実際に乗らせて、ベテランが横でアドバイスをする。見て覚える時代から、見てアドバイスを受ける時代に変わっています。
八木橋:若手の方も積極的に参加されているのですか。
杉野:はい。今は大きな機械を若手が操っていたりします。教育のサイクルがうまく回っている証拠だと思います。
事故事例を徹底共有。リーダーとしての責任感を育む教育
杉野:勉強会では事故事例の報告も行います。自分の現場で事故を起こさないという責任感を持たせるために、何が原因で事故が起きたのかを詳しく教えます。
杉野:また、部署ごとの勉強会もしています。営業、施工計画、積算、産廃など、それぞれの部署で知識を深めています。
田久保:教える側も、教えることで改めて気づくことがありそうですね。
杉野:教えてもらった人間が、また下を育てる時に同じことをする。この良いサイクルを続けていきたいです。
住民説明会に3Dを活用。安心感を生むビジュアル化の力
八木橋:将来的に、さらに効率化したいことや挑戦したいことはありますか。
杉野:現在は施工計画を3Dで見せられるようにしています。パソコン上で重機が動いて、こうやって壊していきますよという映像を見せるのです。
杉野:これが一番役に立つのは、近隣住民の方への説明会です。図面だけではわからないことも、立体的な映像であれば「こういう順番で壊すんだな」と理解していただけます。
田久保:騒音についても、どの程度の音が出るかシミュレーションできるといいですね。
杉野:そうですね。音のシミュレーションも含めて、住民の方に安心していただけるような説明ができるようにしていきたいです。
「解体のアイディアマン」へ。杉野支店長が描くこれからの展望
八木橋:最後に、これからの展望を教えてください。
杉野:支店をもっと増やしていきたいです。ただ増やすのではなく、仕事があるところに戦略的に出していきたい。それには人員の確保も重要です。前田産業というブランドを全国に広め、日本一、世界一を目指したいです。
杉野:個人としては、解体のアイディアマンになりたいと思っています。建物はどんどん進化していますが、壊すことは考えられて作られていません。新しい工法や壊し方を考えて、現場をより良くしていきたいです。
田久保:大都市での解体も増えていくでしょうから、杉野さんのアイディアが活かされる場面が多そうですね。
杉野:東京や大阪などの大都市で勉強して、それをまた熊本に持ち帰りたい。常に挑戦し続ける会社でありたいです。
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