建築でワクワクさせたい!~大同工業株式会社
更新日:2026/1/10
▼目次
- 1 湘南と伊豆、2拠点で手掛ける「別荘建築」
- 2 創業104年、大正時代からの歩み
- 3 鉄道工事から建築へ、先々代の事業転換
- 4 建築家だった先代(現会長)
- 5 「作り手」への転身、図面を具現化する魅力
- 6 建築家の意図を汲み、作り手として提案
- 7 口コミで広がった信頼
- 8 建築家の想いを形にする「施工管理」集団
- 9 リストは数ページにも。増え続ける建築家との出会い
- 10 情熱の「建築家」と資格の「建築士」
- 11 建築家の情熱とこだわり
- 12 難解な図面を「読み解く」面白さ
- 13 「図面の中を歩き回る」ワクワク感
- 14 大学では教わらない「施工」の面白さ
- 15 「施工」こそが「設計」である
- 16 夢を「形」にするのが施工の仕事
- 17 会長の娘との結婚が入社のきっかけ
- 18 前職は自動車の設計、異業種からの転身
- 19 図面を「読む」スキルは共通していた
- 20 30代で夜間学校へ、建築を猛勉強
- 21 モチベーション高い仲間との濃密な3年間
- 22 建築の魅力にハマった3年間
- 23 デジタル化の取り組み、試行錯誤の現状
- 24 現場管理アプリが馴染まない理由
- 25 ルーチンワークが少ない「一点モノ」の現場
- 26 働き方改革、オンとオフのメリハリ
- 27 20代が中心、若返る現場
- 28 「面白い建物がやりたい」と集まる中途採用者
- 29 30代・40代が「スポッと抜けている」
- 30 ベテランから若手へ、技術伝承の難しさ
- 31 3人1組のグループ制で育成
- 32 構想中の「社内Wikipedia」
- 33 自動車業界と建設業界の「分断」
- 34 現場のデジタルリテラシー問題
- 35 最大の課題は「技術が詰まった」社内Wikipedia
- 36 マニュアル化のジレンマ
- 37 機械いじりとパソコン自作、ゴリゴリ理系の少年時代
- 38 少年時代の夢は「ロケット作り」
- 39 最近の趣味は「植物」、盆栽とコーデックス
- 40 ゴルフ場で「コケ拾い」
- 41 建築の行き着く先は「和」
- 42 消えゆく「和」の技術
- 43 職人と技術を守るために
- 44 現代の基準と「和」のジレンマ
- 45 「面白い建築」をやる仲間を増やしたい
- 46 建築家と創る「一点モノ」の価値を広めたい
2025年1月19日(日)15:00~15:55
ゲスト:大同工業株式会社 代表取締役社長・堀口岳士さん
創業104年、静岡県伊東市に本社を構える大同工業株式会社の歴史は、隧道(トンネル)工事や鉄道工事から始まりました。現在は建築業に特化し、伊豆湘南のエリアで建築家と呼ばれる方々の作品を施工。個性溢れる建物を手掛けています。前職では、自動車の設計をしていたという堀口社長。車から建物の設計へと変化しても、”ものづくり”へのこだわりは変わりないようです。そんな堀口さんの仕事への熱意をたっぷりと聞かせていただきました。
湘南と伊豆、2拠点で手掛ける「別荘建築」
クラフトバンク八木橋(以下、八木橋):早速ですが、大同工業さんがどのような会社なのか、教えていただけますでしょうか。
堀口岳士さん(以下、堀口):弊社は、本社が静岡県の伊東市、伊豆半島の真ん中ぐらいにありまして、もう1箇所営業所が湘南の藤沢にあります。
場所が非常に良いものですから、別荘建築がとても多いです。リゾート地ですよね。そういったことから、特に別荘建築に特化しており、建築家の先生方とのお仕事が多い、そういった会社です。
創業104年、大正時代からの歩み
八木橋:現在は創業何年目くらいになるのですか?
堀口:創業104年になります。
八木橋:104年。それは大正時代から。その頃からずっと建築に携わってこられたのですか?
堀口:初代は鉄道工事とかトンネル工事をやっていたそうです。もともとは山梨でそういった工事をしていました。
鉄道工事から建築へ、先々代の事業転換
八木橋:鉄道工事から建築のほうへ変わっていったのは、いつ頃だったのですか?
堀口:先々代の、大同工業っていう名前にしてから建築に特化してきました。その頃から山梨から伊豆に出てきた形です。
建築家だった先代(現会長)
八木橋:別荘建築に特化されたのは、建築家の方との出会いか何かが先々代の時にあったのでしょうか。
堀口:建築家とのお仕事は、先代ですね、今の会長です。会長自身が建築家だったというか、設計をやってたんですね。
当時、もう50年以上前ですけど、アメリカに渡って大学で勉強して、アメリカの設計事務所にも勤めていました。日本に帰国してからも設計事務所で働いていて、本当に建築の設計が好きだったんです。
「作り手」への転身、図面を具現化する魅力
堀口:会長にとっての親がやっていた会社だったわけですが、「戻ってこないか」と言われた時、最初は嫌がったみたいです。
でも、その作り手の魅力というのも感じたんだと思います。建築家が書いた図面を具現化する立場の人間も必ず必要だなということを感じて、じゃあそっちで生きていこうと。
建築家の意図を汲み、作り手として提案
堀口:ですから、会長は建築家が考えていることが分かるんですよ。「こんなことをしたいんだろうな」というのが読める。
それをやるためには、こうしてあげた方がいいよっていう、作り手の側からのアドバイスができるんです。設計者の方たちはずっと絵は描けるんですけど、作り方が分からなかったりする。でも「こんな空間にしていきたい」というイメージはあります。そのイメージを具現化するために、「じゃあこうしようよ」「こんなふうにした方がいいよ」っていう提案が、こちらからできるんです。
口コミで広がった信頼
堀口:それが重宝されて、いろんな建築家の方に紹介していただけるようになったんです。「あそこだったら作ってもらえるよ」と、口コミで。
建築家の想いを形にする「施工管理」集団
八木橋:今、会社としては従業員の方はどれくらいいらっしゃるのですか?
堀口:今45人ぐらいですね。皆さん、設計士さんではなく、施工管理をされていらっしゃる。
リストは数ページにも。増え続ける建築家との出会い
八木橋:お仕事されている建築家さんは、どれくらいいらっしゃるのですか?
堀口:数えたことないです。本当に、リストにすると何ページにもなるぐらい。
1年間にこなせる棟数はそんなに多くなくて、4、50件なんですけど、大抵新しい建築家の方とのお仕事なんです。もちろん、何度も声かけくださる建築家の方もいらっしゃるんですけど、大抵初めての方が多くて、年に何十人かは新しい建築家が増えていくという感じです。
情熱の「建築家」と資格の「建築士」
八木橋:「建築家」さんと「建築士」さんの違いというのが、私分かっておりませんで。
堀口:僕もそこをうまく言語化したいんですけど、なかなか言葉にできなくて。世間一般的には多分「建築士」のほうが伝わるし、理解がされる。建築士っていうのは、一級建築士とか二級建築士っていう国家資格がちゃんとあるので、それに合格すれば建築士なんです。
でも「建築家」って人たちは、免許証も何もない。勝手に名乗ってます。芸術家が「自分は芸術家だ」って言えば芸術家だし、「建築家」って言えば建築家。特に僕が建築家を好きだと思っているのは、彼らはすごく建築に情熱を持って取り組んでいるからなんです。
建築家の情熱とこだわり
堀口:ただ一級建築士の資格を持って、業務をやってるだけの人とは違って、ちゃんとお客さんに向き合って、土地にどういう建物がいいかとか、どういう空間にしたいかっていうのを、すごく一生懸命考える連中なんです。
そのために模型もいっぱい作るし、何度も何度もエスキス、トライ&エラーですね、作っては壊し、もっとこうした方がかっこよくなるとか、良くなるっていうのを、本当に一軒の住宅でも丁寧に考えて図面化してくる。そういう人たちと仕事をしているのが、すごく楽しいんです。
難解な図面を「読み解く」面白さ
八木橋:その建築家さんの情熱が溶け込んだ図面って、逆にちょっと難解そうだなと。
堀口:ありますよ。そればっかりです。一番最初に図面をもらいに行った瞬間、わかんないんです。これがどういう空間になるか、なかなか理解できない。
一回会社に持ち帰って読み直して、「あ、ここがこんな空間になってくるぞ」とかってだんだん理解が進むんです。そうすると面白くなってきて、「あ、じゃあこうしてあげた方がいいな」とか、「あ、ここ楽しみだな」とか。
「図面の中を歩き回る」ワクワク感
堀口:最初は図面の中を歩き回る感覚ですね。で、出来上がった時に「あ、ここの窓からこんな景色が見えるぞ」とか。
そういうのがすごくワクワクしてくる。建築を造るって本当に面白くて。
大学では教わらない「施工」の面白さ
堀口:ちょっと悔しいのは、大学でこの面白さを学生さんに伝えてくれないんですよ。建築学科で建築「設計」は教えてくれるんですけど、「施工」、造ることを全然教えない。
だから大学出た子たちって、大抵「設計やりたいです」って言ってくるんです。でも、君がやりたい設計ってどういうこと?って掘り下げていくと、アート的な意匠を造ることよりも、もっと技術的なことに興味ある子って結構いるんです。
「施工」こそが「設計」である
堀口:それなら施工の方が面白いよと。施工って設計なんですよ。設計者が描いてくるのは図面というより「絵」なんです。
で、物が造れる図面っていうのは、施工者、僕らが描いてるんです。それを「施工図」と言って、職人さんはその施工図を見て、物がやっと造れる。その施工図っていうのが実は設計なんだよと。君らが造れるようにどう組み立てていくかを考えるんだよって。
そこが面白いって思う子は、施工面白いって思えて。僕はまさしくそこなんです。
夢を「形」にするのが施工の仕事
堀口:自分では白紙からかっこいい空間をイメージするっていうのは、やっぱり特殊な能力で、僕にはできないんです。建築家の方々がそういうのが得意な人たち。
でも彼らは、技術的なところまではそこまで深掘りしてこない。むしろ「こういうのやりたい」って夢を描いてくれればよくて、その夢を形にするのが僕らの仕事だと思っています。
会長の娘との結婚が入社のきっかけ
八木橋:堀口さんご自身が、大同工業に入られたきっかけもお伺いしたいのですが。
堀口:きっかけはすごく受動的なんですけど、今の会長の娘と結婚しまして。
結婚した当時は入るつもりは全然なくて、普通にサラリーマンやってたんですけど、ちょっときっかけがあって、来ないかみたいな話になって。でもその時は建築の「け」の字も本当に知らなかったです。
前職は自動車の設計、異業種からの転身
八木橋:元々は何をされてたんですか?
堀口:元々僕、大学は機械工学科を出てて、自動車の設計やってました。兄貴が日産で、僕がホンダなんです。
八木橋:ええー!車兄弟!
堀口:機械家族でした。ゴリゴリの理系でした。全くの業界違いで、建築は全然分かんなかったです。
前職は車のボディの設計をやっていました。だから図面は描けたんですよ。車の図面を描くのが仕事だったんで。
図面を「読む」スキルは共通していた
堀口:建築の図面を読むことは全然違和感なく入れて。二次元の絵を見て、ちゃんとこう、どんな形かが想像できるようにはなってたんで。
もちろん違いはあるんですけど、寸法が入ってるとか、どっちから見てるっていうルールはあるんで。
30代で夜間学校へ、建築を猛勉強
八木橋:とはいえ、慣れるまで大変だったんじゃないですか?
堀口:大変だろうなと思ったんで、前の会社辞めてから時間をちょっともらって、建築の勉強をさせてくれっていうお願いをしました。で、3年間学校に通って。
もう30過ぎてからですけど。子供も2人いたんですけど、お父ちゃん学校に通いました。
学校は夜間の学校にして、昼間は同じような仕事をしている東京の会社があったんで、そこでお世話になったり、半分あとは設計事務所にも行って、昼間仕事を手伝わせてもらって、夜間学校に行くみたいな。
モチベーション高い仲間との濃密な3年間
堀口:本人は全然そう思ってなかったです。面白かったです。あの3年間は本当に濃い3年間でしたね。
行ってた学校も良かったんだと思うんですよ。早稲田の芸術学校っていう夜間の専門学校で、一緒に学んでる学生も、僕と同じような立場で1回社会に出てから建築を学びたいっていう子が来てたり、大学でダブルスクールで、法学部なんだけど建築も勉強したいとか、モチベーションがすごく高いんです。
先生方もすごく熱心な先生で、むちゃくちゃ熱くて。すごく身になったと思ってます。
建築の魅力にハマった3年間
堀口:その3年間で建築を好きにさせてもらえたと思っています。本当に僕、最初「好きな建築家言ってみて」って先生に言われたんですけど、誰もしんないんですよ。ギリギリ安藤忠雄ぐらいで。
でも、それ以外いろんな建築家の方々を教えてもらって、こういう建築家がこんな作品作ったんだぞとか。その図面を見せてもらって、作品の写真を見せてもらって、休みの日に行けるところなら見に行ったりとか。そういうふうにしてくうちに、どんどんハマっていきましたね。
デジタル化の取り組み、試行錯誤の現状
八木橋:引き続き、堀口さんにお話を伺っていきます。
クラフトバンク田久保(以下、田久保):大同工業さんのデジタル化の取り組みとか、DXで「こういうのやってるな」とパッと思い浮かぶものって何かありますか?
堀口:だいぶ出遅れてると思ってます。結構ね、いろいろ取り組んではいるんですけど、うまくいかないことが多くて。
ツールとしてはスマホを使ったりタブレットを使ったりっていうのはやっています。で、ソフトもアプリケーションもいろいろ試してはいるんですけど、なかなか浸透ができなくて。何回か取り入れたけど、やっぱ違うのにしようっていう、こういうのを繰り返してる感じです。
現場管理アプリが馴染まない理由
田久保:どういったソフトを試されたのですか?
堀口:現場管理アプリとかっていうのがいくつかあるじゃないですか。ああいうのを入れましたね。
ツールが難しかったっていうよりも、うちがやっている仕事に馴染まなかったっていうか。多分、そういうツールを開発してる方々って、どっちかっていうとハウスメーカーとか、量産の住宅をどんどん作っていく、そういう施工屋さん向けのアプリなんだと思うんです。
ルーチンワークが少ない「一点モノ」の現場
堀口:ルーチンワークをこなすんであれば、同じことを繰り返す作業は楽になると思うんですよ。でも残念ながら、うちの仕事ってあんまりルーチンワークがなくて。
ルーチンワークはあるんですけど、それって全体の仕事ボリュームの1割とか2割ぐらいしかなくて、多分社員のほとんどの頭の中、8割9割は「図面どうやって納めよう」とか「工程どうやって納めよう」とか、毎度毎度の悩み、違うことにぶつかっている悩みなんですね。だから、なかなかこう、うまくなじまないんじゃないかなとは思ってるんですけど。
働き方改革、オンとオフのメリハリ
田久保:やっぱり結構、施工管理の方は皆さん、かなり根詰めて働かれている方が多い感じですか?
堀口:そうですね、入ってっちゃうんです よね、仕事に。だから僕は経営者としてはもう「帰りなさい」「残業するな」「さっさと帰れ」って言うんですけど、「いや、ここまで終わらしたいよ」とかっていう顔をされるんですよ。
その情熱も分かるもんで。できるだけ今オン・オフをつけるように、集中する時は集中しろと。でも、ひとつの現場が終わって、ちょっと一段落できることがあれば、まとめて休み取れとか。土日どうしても出なきゃいけないことがあったりするんだけど、土日出たらもう次の週どっか平日休み取れとか、そういう話をしてる最中です。
20代が中心、若返る現場
田久保:従業員さんの年齢層はどれくらいな感じなんですか?
堀口:今、ベテランは60のベテランもいますけど、一番ボリュームゾーンは20代ですね。
田久保:あ、そうなんですか。
堀口:新卒もしてるし、中途もしてるし、両方です。
「面白い建物がやりたい」と集まる中途採用者
田久保:中途の方は、未経験の方とかも採用されたり?
堀口:未経験、今まで1回だけ入ってもらったことあるんですけど、馴染めなかったですね。かなり情熱を持って来てくれたんですけど、ちょっと途中でくじけちゃいました。
一番多いのは、やっぱり同じような施工会社からですね。ハウスメーカーとか勤めてて、「でも、俺がやりたいのこんな建物じゃないんだよな」「もっと面白い建物やりたいんだよな」って思ってる子がいるんですね。そういう子がうちの募集要項を見て、「あ、ぜひやりたいです」とか、「あ、こういう建築家の方と仕事してるんですね、僕もそれやりたいです」っていうようなモチベーションの子が来ますね。
30代・40代が「スポッと抜けている」
田久保:じゃあ結構、平均年齢若いですね。
堀口:ここ10年ぐらいに慌てて。このまま行くとやべえぞと。
だから、20代多いって言ったんですけど、逆に30代、40代少ないんですよ。ここがスポッと抜けちゃってて。だから今の20代の若い子を丁寧に育てて、あと数年でベテランというか、一線級頼むよっていう。
ベテランから若手へ、技術伝承の難しさ
堀口:うちのベテランはすごいです。本当にどこ行っても通用するベテラン監督が何人もいます。でも、そのちょっと下の年代が少なかったもんで、ベテランからいきなり若手にってなかなか難しいじゃないですか。そこが今ちょっと苦労してて。
でも、あと何年かすると、その大ベテランもいなくなる可能性があるんで、その前にちゃんと若手にその技術を伝承していかなきゃいけない。
3人1組のグループ制で育成
田久保:OJTというか、2人1組で行動してもらうとか。
堀口:会社の中にグループを作ってて、ベテラン・中堅・若手っていう3人組にしてます。ベテランが中堅に教えて、中堅が若手に教えて、みたいな感じで。
ただ正直、ベテラン社員って、教えることを教わってないんですね。自分はできるんですけど、教え方が分かんない。自分自身も背中見てこいで育ってる年代なんで。そのスタンスで若手の子に行くと、ギャップがあまりにもある。そこにこう、中間になる子がいればうまく回っていくんですけどね。
構想中の「社内Wikipedia」
堀口:それもその技術伝承っていうのも、デジタル化、DXうまく使えないかとかって考えて。技術マニュアルみたいなのを整備して、社内Wikipediaを作ろうかとか。
面白そうだなとは思うんですけど、まだそこには行ってない。そういう意見が出てるぐらいで。
旗振り役やってくれる子がいて。彼自身も現場持ってるんだけど、やっぱり今後のこと考えて「社長こんなの入れた方がいいよ」とかって言ってくれるんです。
自動車業界と建設業界の「分断」
田久保:元々、自動車の設計をやられてたってことなんですけど、自動車の産業とか業界と、建設業界と比べた時に、やっぱり自動車業界のほうがデジタル化とか進んでるイメージがあるんですが。
堀口:そういうイメージは間違いないです。メーカーなんで、設計から造りまで一貫した同じデジタルツールで行くんです。
ただ、建築の場合は、設計してる人の設計CADと、僕らが使ってる施工図CADと、職人さんはもうCADなんか使ってなくて紙の図面っていう、繋がりがないんですよ。
ゼネコンみたいな大きな組織であれば、多分一気通貫にいけるんですけど、世の中ほとんどの建築って分かれてるんですね、設計・施工・職人。そこのギャップはあります。
現場のデジタルリテラシー問題
堀口:正直、今、建築の現場って、スマホすらろくに触んないお年寄りがいっぱいいます。
そういう人たちに、まずスマホの使い方から教えてあげて、LINEでこうやって写真撮って送ってねっていうところからですよ、今。
田久保:Webカメラを導入されたりとかもしてるんですか?
堀口:はい。全部の現場じゃないんですけど、ちょっと遠方の現場だったり、規模が大きい時にはつけるようにしてます。
もうずっと動画です。撮りっぱなし。で、いつでもスマホとかタブレットで見れる。一番便利なのは、休みの日に台風が来たりとか。現場の状況が見れるんで、「あ、やべえ、ちょっと仮囲いが危ないぞ」っていう時には飛んでいかなきゃいけないし。
最大の課題は「技術が詰まった」社内Wikipedia
田久保:これから取り組まれたいこととか、ここ絶対課題なんだけど、なかなかうまくできないなとかっていうポイントってあったりされますか?
堀口:これからやりたいのは、さっきちょっと言っちゃったんですけど、Wikipediaをやっぱり作りたい。社内の、うちの技術が詰まったやつを。
「あの時こんなふうにやったんだよ」っていうのがあるんですよ。今、それがベテランの頭の中にしかないので。
ベテランが来てくれれば、口でアドバイスしてくれるんですけど、それがね、出先でピッて見れて、「あ、これだ、これでよかったんだ」とか。
マニュアル化のジレンマ
堀口:文字にもして、マニュアルも社内にあるんですよ。でも、それもこう継続できなくて。
で、作ってる人は頭にしっかり入るんですね。でも、見る人がそれを見るかっていうと、なかなか見てくれないんですよ。
パッと見て分かるマニュアルまで作り込むのってすごい大変で。それをこうベテラン監督に片手間でやれって言っても、なかなかできない。後回しになっちゃうんですよね、そういう仕事が。でも、それを言って十何年ほったらかしにしちゃってきてるもんで、もうやばいぞと。
機械いじりとパソコン自作、ゴリゴリ理系の少年時代
八木橋:堀口さんのプライベートな部分もお伺いしていきたいのですが、大学が機械工学だったと思うんですが、そこに進んだきっかけは?
堀口:なんとなくだと思います。そこしか知らなかったというか。兄貴がいるんですけど、兄貴も機械系でゴリゴリ理系で、親戚の兄ちゃんもゴリゴリ理系で。もう周りそういう話ずっと聞いてたんで。
ちっちゃい頃から飛行機とかロケットとか、電子部品いじってみたりとか。昔ってパソコンを手作りしたんですよ、昭和の時代。
田久保:ええ!?
堀口:もう0101の時代です。トランジスタを組み合わせてとか。兄貴も多分、親戚のその兄ちゃんの影響なんです。その兄ちゃんも自分でスピーカー作ったりとか。そういうのを見てたんで、なんとなくそれしか知らずに。
少年時代の夢は「ロケット作り」
八木橋:その堀口少年の将来の夢っていうのは?
堀口:小学校の頃はロケット作る気でいました。
八木橋:ええ!
堀口:ロケット作るためにはどの大学に行かなきゃいけないんだ、そこに行くためにはどの高校かなっていう発想してました。
最近の趣味は「植物」、盆栽とコーデックス
八木橋:お忙しいと思うんですけど、何か趣味とかは。
堀口:最近ちょっとはまってるのは植物。盆栽にちょっと興味を持って。
ネットで松の木のちっちゃいのを買って。で、それをちょっといじってるうちに、面白いなと思い出して。ちっちゃい盆栽みたいなのをいくつか揃えだして。
今、コーデックスって聞いたことあります?塊根植物。根っこがこうドボっとでっかい根っこから、ちっちゃい緑の葉っぱがちょろちょろって出てる。ああいうのが面白いと思って、最近いくつか買っただけなんですけどね。
ゴルフ場で「コケ拾い」
堀口:ついこの間、コケにも手を出しまして。あの、ゴルフ場に行って、ゴルフのスコアが伸びないんで、コケ拾ってきました。
八木橋:ええ!?
堀口:僕が打った時に、コケも一緒にこう飛んでっちゃって。かわいそうだから袋に入れて持ち帰りました。盆栽の土台に貼ってあります。
建築の行き着く先は「和」
八木橋:盆栽もやっぱり奥深いですよね。
堀口:すごく深いと思います。針金巻いたりとか。まだそこの域までいかないんで、水やりと枝打ちぐらい。
八木橋:和服とかもお似合いになりそうです。
堀口:和服、好きですね。着れない、自分で着れないんですけど。
建築の行き着くところは「和」です。僕、一番やりたいのは、和のいい建物をやりたい。モダンな家もいいんですけど、僕やっぱりね、最後落ち着くのは「和」だなって思ってます。
消えゆく「和」の技術
堀口:でも、それが設計できる人もなかなかいないし、作れる職人も本当にいなくなってるんですよ。それをなんとかしたい。
昔のいい和風建築を設計できる人って、今本当にいなくて。みんなこうモダンには行くん ですけど、丁寧な和の仕事っていうのをやってない。
それは設計だけじゃなくて、僕ら作り手のほうもそうなんですけど、一つ一つ丁寧に作ってく和風建築っていうのは、仕事で出会う機会がないんです。
職人と技術を守るために
堀口:そうすると、今までせっかく技術を持った職人さんたちも、それを発揮できなくなっちゃってて、やり手がいなくなってく。後引き継ぐ後継者もいなくなってく。
大工さんとか左官屋さんとかって、丁寧な仕事じゃないと和風建築ってできないんですよ。簡単に組み立てるだけっていう建物じゃないんで。そういうところはやりたいですね。
現代の基準と「和」のジレンマ
八木橋:将来、縁側があるおうちに住みたいんです。
堀口:あ、ぜひ、作らせてください。縁側で猫抱いてっていう。
堀口:でも、それって実は国の方向性とちょっとずれてるところがあって。今、国は高気密・高断熱住宅にどんどん舵を切ってて、そうすると、昔のあのガラガラガラって開ける引き戸だと、断熱取れないし、気密も取れないし、作れなくなっちゃうんですよ。
でも僕なんかは、隙間風もあっていい人なんで。僕はそれでいいんで、そういう家造りたいんですけど、国が認めてくれないと、それを作れなくなっちゃうと、できなくなっちゃうんですよ。
「面白い建築」をやる仲間を増やしたい
八木橋:一般の戸建てとかも?
堀口:あ、もちろんです、もちろん。ぜひ、私に連絡もらえれば。
エリアは、伊豆半島全域と、藤沢の営業所は神奈川全域とは言ってるんですけど、まあ1時間半ぐらいでいける距離、横浜ぐらいまで。
この先、営業所を増やして拡大とかも?
堀口:そういう夢もありますね。大同工業をデカくしたいっていう意識よりも、一緒にこういう面白い建築をやる仲間を増やしたい。
建築家と創る「一点モノ」の価値を広めたい
堀口:同業者で、建築家の仕事面白いなって思ってくれる人がいるんであれば、そういう人たちに、僕らが持ってるノウハウが使えるんであれば教えてあげて。
建築家の仕事する時って大変なんです。で、何も知らずに取り組んじゃうと怪我すること多いんですよ。それで、もうやんないってなっちゃうんですけど、ちょっとしたコツなんです。僕らも別にそんなすごい優秀な人間いっぱいいるわけじゃなくて、ちょっとした気遣いだったりとか、ちょっとした先読みをするとか、そういうところだけなんですよ。
そういうコツどころが分かれば、それこそ誰でもできるはずなんです。で、日本中にこういう素敵な建築がどんどん増えるといいなって。
大同工業株式会社 https://www.daido-kogyo.co.jp/
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