愛知県塗装工業協同組合
更新日:2025/4/30
【新理事長への就任を決意】
2024年5月に開催した愛知県塗装工業協同組合の通常総会にて、荒井隆亨氏(TOM創屋・代表取締役)が新理事長に就任した。同組合は、愛知県内の約80社の塗装工事業者が加盟する、愛知県知事認可の専門団体。前任の平田晃監事(平田塗装店・代表取締役)が4期・8年を務めた後、バトンを引き継ぐ形となった。荒井理事長は就任に当たり、「これまで組合活動への参加者が、理事や監事など限られた組合員だった現実に直面していた。今期以降は、事務局からの声掛けも実施することで、多くのメンバーを巻き込める体制を構築していきたい」と意気込みを述べる。組合内には、需要開発・事業・技能訓練・安全・広報・検定と6つの委員会が存在しているが、これまで各組織を兼務する委員長が続出するなど、参加者の偏りが激しいという課題があった。このような現状に対し、新理事長がどのような対策を選択するか注目である。


【新たな資格を創設へ】
就任直後から荒井理事長は「組合内で、一級塗装技能士を超える最上級の資格を創設すること」を打ち出した。理由は「現在ある一級塗装技能士の資格は、個人的には運転免許証と差異のない印象があり、所持者が1流の技術を保持しているかを考慮すると疑問を抱かざるを得ないから」と明確に語る。組合で発行するため国家試験にはできないが、「信用度の高い特有の資格として定着を目指す」と見立てを話す。既に試験の策定も進めており、登録基幹技能者や防水などの資格保有者、組合で開催する作品展の入賞者には、それぞれの手法で加点するなどを計画。日本塗装工業会・愛知県支部とも連携することで可能性の拡張を試みるなど、間口の広げた戦略を練っている。「現実問題として、今の国家試験は顧客目線で見ると、機能していない状況が多いため、学科試験でも実用的な内容が作り上げられるよう、組合全体で工夫していきたい」とこだわりも見せる。新資格を設立する構想は5年以上も前から温めており、理事長就任の打診を受けた直後から「新たな試みとしては、これに以外ない」と確信。それまで何となく頭の中だけで模索していた道筋が、鮮明に拓けた瞬間になったという。


【バランスの取れた組織運営を】
荒井理事長が、自社であるTOM創屋を会社設立してから、今年で20周年を迎える。法人化して間もなく、大南拓哉理事(大南工業・代表取締役)からの声掛けにより、TOM創屋は組合への加入を決意。徐々に組合内で開催する作品展や全国大会で入賞するなど実績を積むことで、「会社の規模を問わず塗装業界を良くするために、同じ志を持った仲間たちと協力し合う重要性に気付いた」と振り返る。ゼロから会社を立ち上げた立場からすると、近年の組織内には「現場ではなく、経営方面に重きを置くメンバーが多い」と感じるケースも増えた。しかし、現場重視で現在地まで辿り着いた立場から考えると、帝王学など経営面を学べる貴重な機会も得られている。理事長に就任してからは、双方のバランスに配慮しつつ、どちらかに偏ることはないよう意識するようになり、現在は様々な企業が1つの団体としてスムーズに活動できる体制を心掛けているようだ。


【奥深い塗装の追求を続ける】
30年近く塗装業に携わる荒井理事長だが、「10年前の資料などを見返すと、『当時の技術は未熟だった』と痛感する機会が多く、今なお『塗装はアップデートが必要で奥深い世界』と再確認する日々を送っている」と感慨を込めて述べる。技術の改善・改良は、1人より集団で実施した方が効率は良く長続きもする。それ故に「団体としてこれまでにない仕組み化が必要で、新たな試験制度を設けたいとの思いに至った」と何事も理論的に考えられる点も強みの1つだ。自身の中では、「2期目を終える頃までを目処に、正式な資格のリリースを開始したい」という気持ちが強い。会員増強など様々な課題を同時に抱える状況は続くが、不思議とストレスはない。その理由を「周囲には、常に同じ目標を持った仲間が寄り添ってくれているから」と率直に答えられる姿が印象的だ。「塗装工業全体の質的向上を図るため、多岐に渡る事業活動に全力を尽くす」。組合の理念は少しずつだが確実に愛知県内に浸透し始めており、この継続こそが業界変革の芽としてプラスの要素に変わっていくはずだ。

この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。