地域のインフラを創り、未来へつなぐ~株式会社竹花組
更新日:2026/1/10
▼目次
- 1 創業102年の老舗、多角的な事業展開
- 2 7代目社長としての歩みと半蔵門の思い出
- 3 建設業界への入職と父からの呼び戻し
- 4 リーマンショック直後の社長就任
- 5 JAXAパラボラアンテナの基礎工事という難題
- 6 軽井沢の大型別荘と東京の設計者との協働
- 7 従業員170名の体制と採用の課題
- 8 災害復旧と若手時代の思い出
- 9 関東インフラDX大賞を受賞した「無人化施工」
- 10 遠隔操作と通信インフラの試行錯誤
- 11 地域の子どもたちへの技術体験
- 12 社内DXの推進とGoogle Workspaceの活用
- 13 デジタル投資への考え方
- 14 ソイルセメント工法と自動化施工の夢
- 15 次の100年に向けた人材育成
- 16 地域防災の要としての建設業
- 17 社長引退後の夢と福利厚生
2025年2月16日(日)15:00~15:55
ゲスト:株式会社竹花組 代表取締役社長 矢野 健太郎さん
中山道の宿場町として知られる長野県佐久市望月の地で創業し、2022年に創業100周年を迎えた総合建設企業・株式会社竹花組。東信州、北信州を中心に、建設・土木・住宅・建設土木資材/エネルギーの各事業を手がけています。スタジオにお越しいただいたには、7代目社長の矢野 健太郎さん。JAXAのパラボラアンテナ基礎工事のお話や、今後進めていきたいDX化についてなど、たっぷりと聞かせていただきました。
創業102年の老舗、多角的な事業展開
クラフトバンク中辻(以下、中辻):まず、株式会社竹花組について教えてください。どのような事業を展開されているのでしょうか。
矢野健太郎さん(以下、矢野):創業は大正11年で、今年で102年目を迎える新設の会社です。事業内容は建築、土木の元請けを中心に、建設資材やエネルギー事業も手掛けています。具体的には生コン工場、アスファルト工場、採石工場、そしてガソリンスタンドなどを経営しています。
クラフトバンク田久保(以下、田久保):ガソリンスタンドや生コン工場まで自社で持たれているのは、非常に特徴的ですね。
矢野:そうですね。自社で資材を供給できる点は大きな強みです。例えば、10年ほど前の大雪の際、燃料不足で除雪が困難になった地域もありましたが、弊社は自社のガソリンスタンドから重機に給油できたため、滞りなく除雪作業を行うことができました。内製化ができていることは、地域の安全を守る上でも重要だと考えています。
7代目社長としての歩みと半蔵門の思い出
中辻:矢野さんは何代目の社長にあたられるのですか。
矢野:私は7代目になります。創業者は父方の祖母の父、私から見ると曾祖父にあたる竹花善一朗です。私は社長に就任して今年で16年目になります。
中辻:先ほど浪人時代のお話がありましたが、学生時代から家業を継ぐ意識はあったのでしょうか。
矢野:物心ついた頃、祖父が社長で父が土木部長を務めていました。会社の周りで友達と遊んでいた際、多くの重機や機械が置いてあるのを見て、幼いながらに将来を意識していた部分はあったと思います。ただ、中学や高校の反抗期には別の道も考えましたね。浪人時代、半蔵門のアパートで東京の生活に憧れたりもしましたが、最終的には父との約束もあり、家業を継ぐ道を選びました。
建設業界への入職と父からの呼び戻し
田久保:大学卒業後、すぐに竹花組に入られたのですか。
矢野:いえ、大学は東京理科大学の土木工学科に進み、卒業後は愛知県安城市にある先輩の建設会社で2年半ほど修行させていただきました。本当はもっと長くいたかったのですが、父から「帰ってこい」と連絡があったんです。
田久保:お父様から直接の要請があったのですね。
矢野:当時は長野オリンピックを控えた時期で、県内が非常に忙しく、現場監督が足りない状況でした。私はまだ修行中だと言って断ったのですが、父が修行先の社長に直接電話して「息子を返してくれ」と強引に話を付けてしまいまして。結局、半ば強制的に長野へ連れ戻される形になりました。
リーマンショック直後の社長就任
田久保:社長に就任されたのは39歳の時だそうですが、当時の状況はいかがでしたか。
矢野:就任したのはリーマンショックの直後で、会社としては売上も一番落ち込んでいた「どん底」の時期でした。父からは数年前から「代われ」と言われ続けていたのですが、一番大変なタイミングでの引き継ぎとなりました。
中辻:大変な時期でのバトンタッチだったのですね。周囲の支えなどはありましたか。
矢野:周りの建設会社の社長たちも代替わりの時期で若返っていたので、心細さはありませんでした。父からは仕事や経営について何一つ教えられず「自分で考えてやれ」というスタイルでしたが、そのお陰で自分なりに試行錯誤しながら進んでこれたと思っています。
JAXAパラボラアンテナの基礎工事という難題
田久保:竹花組では特殊な物件や難しい工事も多いと伺いました。
矢野:印象深いのはJAXAの仕事ですね。佐久地区に設置された巨大なパラボラアンテナの基礎工事を担当しました。これは私が「どうしてもJAXAの仕事がしたい」と志願して、一般競争入札で勝ち取った案件です。
中辻:JAXAの仕事となると、やはり精度が求められるのでしょうか。
矢野:非常に厳しかったですね。アンテナを載せるための基礎に1000本のアンカーボルトをセットするのですが、許容誤差がわずか2ミリという世界でした。生コンや重機を自社で持っている強みを活かして全力で取り組みましたが、今まで経験したことのないような緊張感のある現場でした。
軽井沢の大型別荘と東京の設計者との協働
矢野:最近では、隣町の軽井沢で大型の別荘建築も手掛けています。東京の設計士さんがデザインされるのですが、寒冷地の気候を考慮した設計になっていないこともあります。
田久保:東京と軽井沢では、気候条件が全く異なりますものね。
矢野:はい。そこで地元の建設会社として、寒冷地の厳しい冬に耐えうる施工方法を提案し、設計の整合性を図りながら進めています。難易度は高いですが、完成した建物がGoogleマップに載ったり、工事中の様子がストリートビューに映っていたりするのを見ると、大きな達成感を感じますね。
従業員170名の体制と採用の課題
中辻:現在、従業員の方は何名ほどいらっしゃるのですか。
矢野:全体で約170名です。若手からベテランまで幅広い層がいますが、特に20代が充実しています。ここ数年、新卒採用に力を入れており、毎年5名ほど入社してくれています。
田久保:新卒が毎年5名というのは、地方の建設会社としては素晴らしい実績ですね。
矢野:ただ、課題もあります。20代と60代のベテランは多いのですが、中堅となる30代が極端に少ないんです。現場を支えるベテランの技術をどう引き継いでいくか、デジタル化も含めて真剣に考えていかなければならない時期に来ています。
災害復旧と若手時代の思い出
中辻:矢野さんがこれまでで最も印象に残っている仕事は何ですか。
矢野:竹花組に戻ってきて最初に担当した、長野県北部の栄村にある秋山郷での地滑り災害復旧工事です。日本有数の豪雪地帯で、非常に過酷な環境でした。
田久保:入社早々に災害復旧の現場を任されたのですね。
矢野:当時はオリンピックの影響で人手が足りず、新人の私が1人で5つもの工区を掛け持ちで担当しました。根固めブロックや押さえ盛土など、無我夢中で取り組みました。まだ二級土木施工管理技士の資格しか持っていませんでしたが、数億円規模の現場をやり遂げたことは、その後の大きな自信に繋がりました。
関東インフラDX大賞を受賞した「無人化施工」
田久保:竹花組のDXやデジタル化の取り組みについて教えてください。
矢野:現在、特に注力しているのが「無人化施工」です。関東地方整備局発注の利根川水系砂防事務所の工事で、昨年「関東インフラDX大賞」を受賞しました。
中辻:無人化施工とは、具体的にどのようなものなのでしょうか。
矢野:浅間山の噴火に伴う大規模な土石流災害に備えるための砂防堰堤工事なのですが、有事の際に人が立ち入るのは危険です。そこで、現場から4キロ離れた事務所からモニター越しに重機を遠隔操作して施工する技術を取り入れました。
遠隔操作と通信インフラの試行錯誤
田久保:4キロ離れた場所から操作するとなると、通信の遅延などは問題になりませんか。
矢野:そこが一番の課題でした。当初はイーロン・マスク氏の「スターリンク」など衛星通信も試しましたが、操作はできても映像データが重すぎて遅延が発生してしまいました。最終的には事務所から光ケーブルを引くことで解決しましたが、今後は通信インフラの整備がさらなる普及の鍵になると感じています。
中辻:まさに最先端の技術への挑戦ですね。
矢野:バックホウやキャリアダンプの性能は向上していますが、それらを遠隔でスムーズに動かすための実証実験を繰り返しています。この技術を自社だけでなく、他の会社の方々とも共有し、地域全体の防災力を高めていきたいと考えています。
地域の子どもたちへの技術体験
矢野:この無人化施工の現場では、地域の方々を招いて現場見学会も行っています。
中辻:小学生なども体験できるのでしょうか。
矢野:はい。遠隔操作は免許が不要なので、小学生も実際に操作体験をしています。学校を休んでまで参加してくれる子もいて、5分や10分程度の体験ですが、非常に喜んでくれますね。
田久保:建設機械をゲーム感覚で操作できるのは、子どもたちにとって大きな刺激になりますね。
矢野:昔の「トミカ」で遊んでいた感覚を、本物の重機で味わってもらえるのは嬉しいです。こうした体験を通じて、建設業を「かっこいい」「面白い」と思ってくれる子どもが増えてくれることを願っています。
社内DXの推進とGoogle Workspaceの活用
田久保:現場だけでなく、社内のデジタル化はいかがでしょうか。
矢野:「情報システム室」という専門部署を以前から設けています。現在はGoogle Workspaceをベースに、Gmailやチャット、共有ドライブで情報を一元化しています。予定表も全員で共有し、誰がどこにいるかすぐに分かるようにしています。
中辻:勤怠管理や経理面でのデジタル化も進んでいるのですか。
矢野:勤怠管理のほか、電子決裁、電子帳簿保存法への対応なども進めています。最近では請求書の電子化も始めました。弊社は月に約700社の協力会社から請求書が届き、工区分けをすると2100件ほどの処理が発生します。この膨大な事務作業をいかに効率化するかが現在の課題です。
デジタル投資への考え方
田久保:DXを進めるにあたって、コスト面や社員の抵抗感などはありませんでしたか。
矢野:正直、お金はかかりますし、失敗することもあります。でも、やってみないことには始まりません。「DXの波は止められない」と考えていますので、多少の無駄が出ても、まずは使ってみて、ダメなら別の方法を考えるという姿勢で臨んでいます。
中辻:社長が率先して「失敗を恐れず挑戦しよう」という空気を作っているのですね。
矢野:現場の人間が「このソフトが良い」と言えば、まずは任せてみます。私がトップダウンで決めるよりも、実際に使う社員の判断を尊重した方が定着しますから。私は他社の成功事例などの情報を投げかける役割に徹しています。
ソイルセメント工法と自動化施工の夢
矢野:今後挑戦したいのは、さらなる「自動化施工」です。
田久保:無人化の先にある、完全自動化ですね。
矢野:はい。設計データを入力すれば、機械が自動で動いて施工する形です。弊社が取り組んでいる「ソイルセメント工法」は、現場の土とセメントを混ぜて堰堤を築くのですが、これは3Dプリンターのように材料を積み上げていく作業に近く、自動化施工と非常に相性が良いと考えています。
中辻:環境負荷も低く、効率的な工法なのですね。
矢野:現場の土を有効活用できるため、資材運搬のコストも削減できます。こうした新技術とデジタルを組み合わせることで、建設業の生産性を飛躍的に向上させたいと考えています。
次の100年に向けた人材育成
中辻:創業100年を超え、これからの竹花組が目指す姿を教えてください。
矢野:まずは「次の100年」を支える経営体制を作ることです。そのためには人材の確保と教育が何より重要です。建設業はチームワークなしには成立しません。技術や技能はもちろん大切ですが、根底にあるのは「みんなで一つのものを作る」という高い倫理観と道徳心だと考えています。
田久保:新入社員教育にも力を入れているそうですね。
矢野:新卒採用者には2週間程度の研修を行い、その後は現場でのOJTを通じてじっくり育てます。単に作業を教えるだけでなく、建設業が地域のインフラを守り、人々の命を救う誇り高い仕事であることを伝えていきたいですね。
地域防災の要としての建設業
矢野:建設業は災害時に真っ先に現場へ駆けつける「地域の守り神」だと思っています。
中辻:昨年の防災ハンドブック配布もその一環でしょうか。
矢野:はい。佐久建設業協会で防災ハンドブックを作成し、市内の小学生全員に配布しました。災害時に自分の身をどう守るか、そして建設業がどのように地域を支えているかを知ってもらうためです。道路やインフラがなければ、救急車も消防車も通れません。
田久保:建設業の重要性を子どもたちに伝えるのは、業界の未来にとって非常に大切なことですね。
矢野:昔のような「怖い」「きつい」というイメージを払拭し、ICTなどの先端技術を駆使して地域を守る、クリエイティブな仕事であることをアピールし続けたいと思います。
社長引退後の夢と福利厚生
中辻:最後に、矢野さんご自身のプライベートな夢などはありますか。
矢野:あと10年ほど社長を続けたら、引退して沖縄に移住したいなと思っています。
田久保:沖縄ですか。それはまた大胆な計画ですね。
矢野:長野には海がないので、海が見える場所に竹花組の保養所を兼ねた施設を作って、私はそこの「管理人」として余生を過ごしたいんです(笑)。社員やその家族が遊びに来た時に、アロハシャツを着て出迎え、一緒にゴルフをしたりして。
中辻:社員の皆さんも、沖縄に保養所ができれば大喜びでしょうね。
矢野:そのためにも、まずは竹花組をしっかりと次世代へ引き継ぎ、社員が誇りを持って働ける環境を整えていきたい。私の予定表が真っ白になる日を夢見て、今は全力で走り続けます。
株式会社竹花組 https://www.takehanagumi.co.jp/
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