クラフトバンク総研

新しいモノやコトに挑戦し、次の100年に~株式会社荒木組

更新日:2026/1/14

2025年7月13日(日)15:00~15:55

株式会社荒木組 常務取締役・荒木洸太郎さん

大正10年創業、104年目を迎えた株式会社荒木組。蓮台寺本堂(倉敷市)など宗教・伝統建築も多く手掛け、地元・岡山を中心に様々な建築・土木を担ってきました。「新しモノ好きの社員が多い」と言う若き常務・荒木洸太郎さん。新しいモノやコトにどんどんチャレンジし、社員が自主的にプロジェクトを進めているとのことで、デジタル化にも積極的。昨今課題となっている現場の熱中症対策についても、ユニークなアイデアを聞かせていただきました。(岡山県岡山市 レディオモモにて収録)

創業104年、岡山を拠点とする総合建設業

クラフトバンク金村(以下、金村)まず荒木さんに、株式会社荒木組について、どのようなお仕事をされているのか、どういったご事業をされている会社様であるのかからお伺いできますでしょうか。

荒木洸太郎さん(以下、荒木):荒木組は、創業が大正10年になります。今ちょうど創業104年目というところになっております。事業としては総合建設業ということで、建築と土木の両方をやるゼネコンという形になります。

金村:事前に荒木組のホームページを拝見させていただきましたが、総合建設業として本当に多種多様なご実績をお持ちですよね。

荒木:そうですね。元々は民間建築からスタートした会社ですので、建築関係は病院や福祉施設、こども園なども手掛けますし、最近ですと物流倉庫や工場、オフィス、学校、さらには神社やお寺といったことも色々とさせていただいております。まさに多種多様な実績があるかと思います。

5年の歳月をかけた「蓮台寺」本堂の建立

金村:ホームページを拝見して非常に印象的だったのが、社寺仏閣の手掛けられている数です。神社なども結構手掛けていらっしゃいますよね。

荒木:そうですね。なんだかんだで毎年、何かしら伝統建築の物件は、大小はありますが手掛けさせていただいております。ちょうど100周年くらいのタイミングで大きなプロジェクトがありまして、蓮台寺さんというところの本堂をやらせていただきました。これは5年がかりのプロジェクトで、非常に力を入れて取り組ませていただいたものの一つです。

金村:お寺の建築という特化した分野において、得意な会社さんであったり、評判というところは業界内でも非常に大きいのではないですか。荒木組さんをご指名でお仕事を受けられることもあるのでしょうか。

荒木:おかげさまでご紹介をいただくことは非常に多い方だと思います。弊社としても評判というものは非常に大切にしておりますし、よく見ていただいているお客様からご縁をいただくことは多々ありますね。

山から木を切り出すプロセスを記録したDVD制作

金村:特にこれまでの実績の中で、会社として歴史に残る自慢の物件や、荒木さんの一押し物件を一つ挙げるとすれば何でしょうか。

荒木:やはり先ほど申し上げた蓮台寺の御堂は、年数もかけておりますし、非常に力の入ったプロジェクトでした。実は、その製作過程をすべて記録したDVDも作っております。近畿の山から木を切り出すところから収録しているんです。ブランディングというわけではありませんが、営業的にも「こうやって作っています」というのをお見せするために制作しました。

金村:お寺の建築を山から木を切り出すところから見られるというのは、なかなかない経験ですよね。実際に着工して完成するまでではなく、プロジェクトの全行程で5年かかったということですか。

荒木:前段階を含めての5年になります。木を切りに行くタイミングも、実は年間でごくわずかな時期に限られているんです。乾燥した時期に切らないと、水分が抜けて変形してしまうので。切った木をまた専用の倉庫で1年ほど寝かして乾かします。そういった意味も含めて、それだけの年数がかかっています。

職長のマネジメント能力を高める「荒木アカデミー」

金村:荒木組さんの取り組みで非常に関心を持ったのが、「荒木アカデミー」です。これは協力会社さんの職長さんなどの能力向上を目的とした、学校のようなイメージの制度なのでしょうか。

荒木:技術というよりはマネジメントを重視したアカデミーになります。職長さんのマネジメント能力が高まれば、現場の効率も良くなりますし、結果として現場に関わる全員が「Win-Win」になる。そういった目的で運営している制度です。

金村:自社の従業員の方への教育だけでなく、協力会社の方への教育というのは、他の会社さんではあまり聞かないユニークな取り組みですよね。どういった経緯で始められたのですか。

荒木:始まったのは8年から9年ほど前になります。私が会社に戻るよりもずっと前から、弊社の社長の肝いりでスタートしました。きっかけとしては、やはり人手不足という問題が根底にあります。その中でいかに効率よくやっていくかという点と、協力業者の皆さんと本当の「ワンチーム」になりたいという思いを形にしたものです。

15兆円の未消化案件と「ワンチーム」の意識

金村:建設業界全体で、人手不足は顕著ですよね。ニュースでも、受注はしたけれど完成していない案件が全国で15兆円分もあるという話が出ていました。荒木組さんのような元請けだけでなく、専門工事会社の職人さん不足も深刻です。

荒木:まさにそうですね。元請けとして、そういった課題に対しても協力会社さんと一緒に取り組んでいかなければならないと考えています。

金村:協力会社さんにもそういった場を提供されているのは、品質を大切にしたいという思いもあるのでしょうか。

荒木:おっしゃる通りです。良い物を作るには、良い物を作ろうという理念を共有できる仲間を作らなければいけません。そのためのプラットフォームのような形になっていればいいなと考えております。

評価を可視化する「ヘルメットの色」による表彰

金村:荒木アカデミーでは、情報発信や学びの場を作るだけでなく、ヘルメットの色を変えるといったユニークな取り組みもされていますよね。

荒木:ヘルメットについては、1年間で弊社の現場に協力いただいた職長さんを評価させていただいております。非常に優秀な職長さんには「最優秀」「優秀」といった評価をつけ、それに応じたヘルメットを贈呈しています。弊社の現場で働く際にはそれを被っていただくので、一目で「あの人は能力の高い職長さんなんだな」と分かるようになっています。

金村:評価を可視化してフィードバックする仕組みがあるというのは、ご本人にとっても誇りになりますよね。

荒木:そう思っていただけると嬉しいですね。情報提供だけでなく、しっかりとフィードバックを行う形をとっております。

職人の「粋」を伝えるポスター制作

金村:あと、ポスターがめちゃくちゃ格好いいですよね。荒木組の現場に協力してくださる職人さんの、渋い表情やにこやかな顔が映っていて。

荒木:ポスターは毎年更新で作っております。下の方には、ご本人の直筆で座右の銘や思いを一筆書いていただいています。皆さん非常に良い顔で写ってくださっています。

金村:自分の顔がポスターになるというのは少し気恥ずかしいかもしれませんが、誰かに、あるいは仕事でちゃんと見てもらえているというのは、やはり嬉しいものでしょうね。

荒木:確かに恥ずかしいという方もいらっしゃるかもしれませんが、嫌な気持ちはしないはずです。もう数年続けているので、協力会社の皆さんも「あって当たり前」の制度として理解してくださっています。非常にユニークで素敵な取り組みだと言っていただけることも多いですね。

法学部出身、異業種からのキャリアスタート

金村:荒木さんご自身が、荒木組にご入社されたきっかけについても伺えますでしょうか。

荒木:元々、家業ですので、後継者としてあとを継ぐということは決めていました。ただ、すぐに自社に入るのではなく、まずは同業他社さんで勉強をさせていただいて、自分なりにタイミングを見計らって戻ってきました。

金村:学生時代から、建築や土木といった物作りの分野を学ばれていたのですか。

荒木:それが全くの畑違いでして、私は文系なんです。大学も法学部でした。

金村:法学部から建設業界へというのは、かなりギャップがあったのではないですか。

荒木:そうですね。他社に入った当初は現場監督をさせていただいたのですが、土木現場でした。最初は道具の名前すら分からない状態で入りました。しかも、入った瞬間に西日本豪雨災害が起きたんです。肌が焦げるほど黒くなりながら、交通誘導の代わりなども含めて色々なことを経験しました。

社長である父からの「早く決めろ」という言葉

金村:就職活動の時には、いずれは家業を継ぐということを意識されていたのですね。

荒木:大学時代にはその気持ちが出てきていました。社長である父からは「ああしろこうしろ」とは一切言われたことはなかったんです。「継いでも継がなくてもどっちでもいいけど、早く決めてくれ。こっちも準備があるから」とだけ言われまして。それで大学時代にこの道に行こうと決めて、同じ業界の会社にお世話になることにしました。

金村:社長さんも、将来の荒木組を見据えて、荒木さんの意思を確認されたのですね。ご自身で決断された中でのスタートだったのですね。

荒木:そうですね、自分で決めなければダメだと思っていました。「早く決めろ、どっちでもいいから」という言葉が、逆に自分を見つめ直すきっかけになりました。

5年の節目を経て、家業への復帰を決断

金村:前職で経験を積まれて、どのタイミングで荒木組に戻る決断をされたのでしょうか。

荒木:入社した段階で、社長からは「先々のことを考えろ、いつ辞めるか意識してやりなさい」と言われていました。目安としては5年くらいが一つの区切りかなと思っていました。ちょうど現場代理人をやらせていただいて、一つの現場が終わったタイミングが良かったので、そこで区切りをつけて戻ることにしました。

金村:戻られてからは、どのようなお仕事をされているのですか。

荒木:社長室というところに入りました。と言っても、一般的な社長室長のようにスケジュール管理をするような仕事ではありません。お互いに好きなように動いている感じですね。

金村:経営に関わる領域など、多くの分野でお仕事をされていると思いますが、戻られてから感じた難しさなどはありますか。

荒木:やはり管理といいますか、組織ややり方を変えるというのは非常に大変だなと感じています。自分としては「これが正しい、こう進めたほうがいい」と思っても、全員にしっかりと理解してもらい、共感を得るのはなかなか難しいものです。その動かし方には難しさと同時にやりがいも感じています。

現場のDX:**

金村:ここからは建設業におけるデジタルやDXの取り組みについて伺いたいと思います。荒木組さんでは、かなり全方位的にデジタルの技術を取り入れていらっしゃいますよね。

荒木:うちの社員はみんな新しいもの好きなんです。とりあえずやってみたいという声が多いので、出てきたものはとりあえず試す精神で色々と導入しています。

金村:現場のDXとしては、どのようなことをされていますか。

荒木:ドローンでの測量や出来形計測、3Dスキャナーを使って現場をモデル化するといったことは、現場を効率よく管理するために行っています。ICT建機についても、公共工事ではスタンダードになってきていますので取り入れていますし、民間工事でも費用対効果を含めて検証しながら活用しています。

金村:ドローンやICT建機が現場に入ると、管理の精度もスピードも格段に上がりそうですね。

荒木:おっしゃる通りです。社員が「新しい技術を積極的に取り入れたい」という意欲を持っているので、そこは非常に助かっています。

Office 365導入による情報共有の効率化

金村:バックオフィスや業務プロセスの効率化についてはいかがでしょうか。

荒木:Office 365を導入して、情報の共有化や事務仕事の効率化に取り組んでいます。これまではデータが個人のパソコン内に留まってしまい、誰が最新データを持っているのか分からなかったり、共同編集ができなかったりといった課題がありました。

金村:現場から会社に戻らなくてもデータが触れる環境というのは、直行直帰が多い建設業では重要ですよね。

荒木:はい。どこからでもアクセスできるクラウド環境を整えることで、仕事の効率は格段に上がります。サテライト事務所として現場にいながら書類仕事ができる環境も作っています。ペーパーレス化も含めて、情報の可視化を進めているところです。

金村:導入にあたって、社員の方々からの抵抗はありませんでしたか。

荒木:やはり「変える」ことへの抵抗はゼロではありません。私が旗を振って、クラウドでの共同編集のメリットを伝えながら進めてきました。今ではみんな思い思いに活用して、効率化に努めてくれています。

ウェアラブルデバイスによる熱中症対策

金村:熱中症対策にもデジタルを活用されていると伺いました。手首につけるウェアラブルデバイスを導入されたそうですね。

荒木:はい。社員の体調をリアルタイムで計測して、危なくなったら通知するようなデバイスを試験的に導入し始めています。熱中症は個人差がありますし、昨今の猛暑の中で社員が倒れてしまうことを防ぎたいという、現場の社員からの提案で始まりました。

金村:これも社員の方からのアイデアなのですね。素晴らしいです。

荒木:良いものであれば、協力会社の皆さんにも「これを使うといいですよ」と情報発信できるかもしれません。今年から熱中症予防に関する法令も厳しくなりましたし、より一歩踏み込んだ取り組みが必要だと考えています。

金村:元請けとして現場全体の安全を守るために、新しいテクノロジーを積極的に試していく姿勢は、業界全体にとっても良い刺激になりますね。

荒木:会社としてそういったスタンスを示すことで、社員も自由に発案し、プロジェクトを組んで動くような風土が育っていると感じます。

生成AIによる議事録作成と最新デバイスの導入

金村:生成AIについても活用されているそうですね。どのような使い方をされていますか。

荒木:まずは一般的な使い方ですが、会議の議事録作成ですね。録音して文字起こしをして、要約までをAIでやっています。まだ変換ミスや漢字の間違いはありますが、社内書類であれば8割合っていれば十分というスタンスで、まずは「AIを使う」ことに慣れるのを重視しています。

金村:社長からも「どんどん使っていこう」という声があるのですか。

荒木:はい。今私が持っているこのデバイスも、AIボイスレコーダーなんです。スマホに付けるようなタイプのもので、録音して要約まで1分くらいで終わります。

金村:打ち合わせのあとの議事録作成の手間がゼロになるのは、大きな効率化ですね。

荒木:そうなんです。営業部でも何台か導入することにしています。その空いた時間で、プラスアルファの付加価値を生み出す活動に時間を当てていこうという考え方です。新しいものを使いこなすことで、会社をどんどん変えていきたいですね。

現場の安全をAIカメラで守る実証実験

金村:AIカメラを使って現場の安全を守る取り組みもされているとか。

荒木:「不安全行動」を検知するAIですね。開発中ではありますが、現場での危険な動きをカメラで捉え、AIが検知して報告してくれる仕組みです。

金村:具体的にはどのような行動を検知するのですか。

荒木:特に「立ち馬」作業などでの危険行動です。それをAIで捉えて報告書を作成し、翌朝の朝礼で「昨日はこういう危ないことがあったので気をつけましょう」と職人の皆さんに共有することを目指して開発を進めています。

金村:データに基づいて具体的に注意喚起ができるのは、説得力がありますね。

荒木:そうですね。なかなか検知が難しい部分もあるのですが、開発会社さんと打ち合わせを重ねて進めています。これも社員が自分たちで考えて企画し、動かしているプロジェクトの一つです。

金村:産官学連携のような形で、地元の学校などと一緒に研究されているのも、地域に根ざした荒木組さんらしいですね。

施工ロボットの導入と未来への展望

金村:ロボットの導入についても取り組まれているのですか。

荒木:鉄筋の結束を自動でやってくれる施工ロボットを試験的に導入したりしています。まだまだ至らないところもありますが、これからの時代、いかにテクノロジーを使いこなしていくかが鍵になると思っています。

金村:荒木組さんには、新しいことに挑戦することを許容する風土がしっかりありますよね。

荒木:特定の人が決めるのではなく、220人の社員それぞれにアイデアがあります。それを活かしていきたい。知らない間にプロジェクトが組まれて動いていることも多々あります。昨年の夏には現場で「かき氷イベント」をやっていたのですが、私は新聞でそのことを知りました(笑)。

金村:常務が知らないところでプロジェクトが進んでいるというのは、最高の社風ですね。

荒木:若手社員が熱中症対策やコミュニケーションのために自発的に始めたことでした。そういう自律的な動きは、これからの建設業界において非常に大切だと思っています。

時代に適合し、やりがいを持てる会社づくり

金村:荒木組の未来について、これからの展望を教えてください。

荒木:やはり一番大切にしたいのは、時代の変化にすぐに対応し続けられる会社であることです。そして、社員一人ひとりがやりがいを持って働ける会社であり続けたいと思っています。

金村:今の時代、転職が当たり前になっていますが、荒木組さんとしては長く働いてほしいという思いもありますか。

荒木:社会の変化は承知していますが、私としてはやはり、ずっと一緒に頑張っていきたいという思いがあります。荒木組くらいの規模だと一人ひとりの顔も名前も分かりますし、本当に仲間だという感覚が強いんです。そこは私個人として大事にしたいところですね。

金村:実際、荒木組さんでは親子で働いている方もいらっしゃるそうですね。

荒木:そうなんです。お父さんと娘さんという組み合わせが、今ちょうど3組います。お父さんが「この会社はいいよ」と伝えて、娘さんが入ってきてくれるというのは、会社として本当にありがたいことです。中にはお父さんに内緒で応募してきた子もいて、お父さんが一番驚いていました。

建設業の「怖い」イメージを払拭したい

金村:最後に、建設業界全体を盛り上げていくために、荒木さんが感じていることを教えてください。

荒木:建設業はどうしても「硬い」「怖い」というイメージを持たれがちです。大学生に聞いても、未だに「つるはしを振り上げているイメージ」と言われることがありますが、実際にはそんなことはありません。

金村:そういったイメージを変えていくことが、若い方に興味を持ってもらうために必要ですよね。

荒木:はい。DXの取り組みもそうですし、社員が明るく発信していくことで、建設業を魅力的な業界にしていきたい。一歩先を見て、自分がやりたいと思うことを実現していく。そういう種をたくさん蒔いて、今後どうなるか想像しながら取り組んでいけば、きっと面白い未来が作れると信じています。

金村:荒木組さんの柔軟な姿勢と新しいことへの挑戦が、業界のスタンダードになっていくことを期待しています。

■株式会社荒木組 https://www.arakigumi.com/
■レディオモモ http://www.fm790.co.jp/

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アーカイブ配信:https://audee.jp/program/show/300006512

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