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土木・建築・お菓子!?異業種継承で小金井市をハッピーに~金澤建設株式会社

更新日:2025/12/28

2025年3月16日(日)15:00~15:55

ゲスト:金澤建設株式会社 取代表取締役社長・金澤貴史さん

創業80年、東京・小金井市に本社を構える金澤建設株式会社は、地元を愛し愛される地域密着型の建設会社。同社の特徴と言えば、何といっても洋菓子店の異業種継承!後継者不在により閉店することとなった町の洋菓子店を「地元の味を絶やしたくない」という思いで継承し、「土木・建築・お菓子」という異色の3本柱で経営を続けています。当初は賛否両論があったものの「洋菓子部門があることで、社に興味を持ってくれる方も増えた」と語る金澤社長。ポジティブな社長のお人柄と、アットホームな社風が垣間見れる収録となりました。(東京都立川市・FMたちかわにて収録)

創業80周年を迎える「地場ゼネコン」

中辻:まず、金澤建設について、どのような事業をされている会社なのか教えていただけますか。

金澤:いわゆる総合建設業、ゼネコンと言われる分野です。ゼネコンというとスーパーゼネコンを想像されるかもしれませんが、私たちは地域に根ざした「地場ゼネコン」という立ち位置で活動しています。

田久保:地域密着型の総合建設業ということですね。

金澤:そうです。建築と土木を軸にしていますが、そこに弊社ならではのトッピングとして「お菓子事業」があります。この3本立てを主軸に展開している会社です。2025年の4月1日で創業80周年を迎えます。

戦後復興と関東のインフラを支えた土木の歩み

中辻:80周年というのは非常に歴史がありますね。もともとはどのような始まりだったのでしょうか。

金澤:1945年に私の祖父が土木業の請負として始めたのが金澤組、現在の弊社のルーツです。当時の写真を見ると駅のホームを作っていたり、戦後復興や高度経済成長の真っ只中で関東圏のインフラを多岐にわたって作ってきました。

田久保:まさに日本の土台を築いてこられたのですね。

金澤:そうですね。当時は土木産業が非常に盛り上がっていた時代でした。その後、私の父が2代目として継ぎましたが、父も最初は建築を学んでいたそうです。しかし、当時は土木が忙しすぎて、建築の道に進んで半年足らずで呼び戻され、それからは土木一本でやってきたという経緯があります。

建築への憧れから始まった3代目の挑戦

中辻:金澤さんご自身は、最初から会社を継ぐつもりだったのですか。

金澤:漠然と建設業かなとは思っていました。ただ、私はビルや建物を作りたいという思いがあり、専門学校で建築を学びました。ところが、いざ家業に戻ってみると、うちは完全に「土木屋」だったことに気づいたんです。

田久保:戻ってから気づかれたのですか。

金澤:名前は「建設」ですが、小学校の頃の手伝いを思い返せば、ヘルメットを被って道路工事や下水道工事の現場にいました。建築の教育を受けて戻ってきたものの、最初は土木をしばらく経験しました。日本の土木技術はミリ単位でトンネルや大きなものを作る素晴らしい世界で、やってみると非常に面白かったです。

公共の土木、民間の建築という独自の棲み分け

中辻:現在は建築部門もしっかりと確立されていますが、どのように広げていったのでしょうか。

金澤:2000年頃から、ご縁があって少しずつ建築の仕事をいただくようになりました。改修工事やリフォームから始まり、前社長である父も「やってみろ」と背中を押してくれました。そこから人が集まり、建築部として形になっていったのが今のストーリーです。

田久保:土木と建築で、顧客層などの違いはあるのでしょうか。

金澤:大きな特徴として、土木はほぼ9割以上が公共工事です。一方で、建築はほぼ9割以上が民間の仕事という棲み分けになっています。建築は木造住宅ではなく、マンションや商業ビルといったRC造や鉄骨造の非木造建築に特化しているのも弊社の特徴です。

地元の味を守るために始まった「お菓子事業」

中辻:さて、気になる「お菓子事業」についてですが、建設会社がなぜお菓子なのでしょうか。

金澤:きっかけは10年ほど前、2014年の暮れでした。地元小金井に、店主が一人で営む小さな洋菓子店がありました。そこの「カスタードパフ」というお菓子が絶品で、私も子供の頃から大好きで、仕事の手土産にもよく使っていたんです。

田久保:地元で愛されていたお店だったのですね。

金澤:はい。ところがその店主から、バター不足や後継者不在、自身の年齢を理由に店を畳むという話を聞きました。地元で27年も続く美味しい味がなくなってしまうのは寂しいと思い、なんとか残せないかと相談したのが始まりです。

異業種への参入と「金澤建設」の名で売る覚悟

中辻:そこからどのように事業化していったのですか。

金澤:最初は私がやるつもりはなかったのですが、紆余曲折あって、私の妻が経営する広告宣伝の会社と一緒にベンチャー的な感覚でスタートすることになりました。

田久保:別会社ではなく、金澤建設の事業部としてスタートしたのがユニークですね。

金澤:そうなんです。妻には「この原価じゃ無理だよ」と事業計画の厳しさを指摘されましたが、とにかく始めてしまいました。今では弊社の取締役である妻がプロジェクトリーダーとして、金澤建設の一つの事業部として運営しています。

「素人集団」が直面した洋菓子業界の壁

中辻:建設業とは勝手が違うことも多かったのではないですか。

金澤:毎日が壁にぶつかる連続でした。バイヤーさんからは「保存料を入れて賞味期限を延ばさないと売れない」と怒鳴られたり、洋菓子業界を舐めるなと厳しい言葉をいただいたりもしました。

田久保:職人の世界ですから、厳しそうですね。

金澤:私たちは建設の人間ですから、お菓子に関しては「最強の素人集団」です。でも、型にはまらず多面的に物事を見られたことが、自分たちの進む道を見つける要素になったのかもしれません。この10年間、諦めずに少しずつ進んできた結果が今に繋がっています。

お菓子事業がもたらした採用面での相乗効果

中辻:お菓子事業を始めたことで、本業の建設業にも変化はありましたか。

金澤:実は採用面で素晴らしい効果が出ています。建設業界はどこも人手不足ですが、弊社には昨年3名、今年も2名の新卒が入社しました。全員が女性で、文系出身です。

田久保:建設業に興味がなかった層に届いたということでしょうか。

金澤:そうです。「建設会社なのにお菓子をやっている」というアンバランスさと柔軟性に興味を持ってくれたのがきっかけです。もともと建設に興味がなかった子たちが、弊社の人間性に惹かれて入ってきてくれる。これはお菓子事業をやっていなければなかった出会いです。

信用金庫との連携と「多摩ブルー・グリーン賞」受賞

中辻:地域との繋がりも深まったようですね。

金澤:地元の多摩信用金庫さんが主催する「多摩ブルー・グリーン賞」というものがあります。そこで弊社の「異業種による事業承継」というビジネスモデルが評価され、経営モデル部門で最優秀賞をいただきました。

田久保:金融機関からもそのモデルが認められたのですね。

金澤:この受賞をきっかけに、多摩地域の素晴らしい経営者の方々と繋がることができました。地域を一緒に盛り上げようという取り組みの中で、大学生のインターンシップを受け入れる体制も整いました。地元の学生が地元企業を知る機会が少ないという課題に対し、このネットワークが大きな役割を果たしています。

「現金手渡し」から脱却したデジタル化の第一歩

中辻:ここからはDXやデジタル化の取り組みについて伺います。かなり最近になって大きな変化があったそうですね。

金澤:実は2024年の1月まで、給料は「現金手渡し」だったんです。

田久保:この令和の時代にですか。

金澤:創業以来の伝統として、給料は感謝を込めて手渡しするものだという文化がありました。しかし、数日前から現金を準備し、数え、ダブルチェックする労力は相当なものでした。断腸の思いで振込に切り替えたのが、弊社のデジタル化の大きな一歩目です。

タイムカードの廃止と勤怠管理のシステム化

中辻:給与振込以外にはどのようなことを変えたのでしょうか。

金澤:次に着手したのがタイムカードの廃止です。以前はガチャンと打刻したカードの内容を、すべて手入力でExcelに転記していました。これをクラウド型の勤怠管理システムに切り替えました。

田久保:社内での抵抗感はなかったのですか。

金澤:もちろんありました。今まで慣れていたやり方を変えるのは大変ですから。私はあえて並行期間を短くして、一気に切り替えました。やってみればどうにかなるもので、数ヶ月で定着しました。これにより、経理総務の残業はほぼゼロになりました。

施工管理ツールの導入と現場の効率化

中辻:現場のデジタル化はいかがでしょうか。

金澤:施工管理ツールも導入しました。これは私がトップダウンで決めるのではなく、社員たちと一緒に展示会に行き、自分たちが使いやすいものを選んでもらいました。

田久保:現場の納得感が重要ということですね。

金澤:そうです。最近では、オプションの拡張機能を使いたいという要望が現場から上がってくるようになりました。費用対効果を自分たちで検証し、真剣に取り組んでくれている姿を見ると、導入して良かったと感じます。無駄なものを入れるのではなく、実体験に基づいた改善が進んでいます。

「安全と美味しい」から「安全と笑顔」へ

中辻:お菓子事業と建設事業の間で、文化的な交流などはありますか。

金澤:お菓子事業のスローガンに「We Build Safety and Tasty(安全と美味しいをお届けする)」というのがあります。これを建設部門が「パクらせてくれ」と言ってきまして。

田久保:素敵なエピソードですね。

金澤:建設の方は「We Build Safety and Smile(安全と笑顔を築く)」に変えて、看板やポップを作っています。もっと明るくポップな発信をしたいという意識が、お菓子事業の刺激を受けて建設側にも芽生えてきました。部署の垣根を超えたワンチームの意識が、ようやく形になってきたと感じます。

「2024年問題」への対応と発注側への働きかけ

中辻:建設業界共通の課題である「働き方改革」や「2024年問題」にはどう向き合っていますか。

金澤:弊社では、土日を完全休業とする週休2日制を会社として強く打ち出しました。これは自社だけの問題ではなく、発注者側や協力業者さんにも理解していただかなければ進みません。

田久保:現場の工期との兼ね合いが難しいところですね。

金澤:はい。工期や単価の問題も含め、総合的な理解が必要です。ただ、会社が「このスタイルでやる」と発信することで、現場監督も自信を持って周囲に説明できるようになります。少しずつですが、無理のないローテーションや休暇の取得が浸透してきています。

緊急出動と働き方改革のジレンマ

中辻:土木のお仕事だと、緊急時の対応も求められますよね。

金澤:そこが一番の課題です。弊社は東京都や小金井市と協定を結び、24時間体制で道路の陥没などの緊急出動に対応しています。働き方改革とは逆行する部分もありますが、地元のインフラを守るためには不可欠な役割です。

田久保:まさに地域になくてはならない存在ですね。

金澤:だからこそ、官公庁にもこの実態をしっかり理解してほしいと伝えています。少ない人数でも、お互いにコミュニケーションを取りながら、振替休日を確実に取るなどの工夫を続けています。

お菓子部門から学ぶ「残業ゼロ」の組織作り

中辻:お菓子部門の働き方はいかがですか。

金澤:お菓子部門は、ほぼ残業がありません。決められた時間内でどれだけのクオリティの仕事ができるかという教育を、最初から徹底してきました。

田久保:パティシエの世界は長時間労働のイメージがありますが、意外ですね。

金澤:「パティシエとして」ではなく「社会人として」育てるという方針なんです。会社に属するとはどういうことか、ルールを守りつつ休みはしっかり休もうという文化を、ゼロから作り上げました。これが建設部門にとっても、良いモデルケースになっています。

地元の「異業種承継」を広げていきたい

中辻:今後の金澤建設の展望について教えてください。

金澤:地元の飲食店などで、素晴らしい味や技術を持ちながら後継者がいなくて消えようとしているお店がまだあります。お菓子事業で培った経験を活かして、こうした地元の資源を残していくような「異業種承継」の取り組みを広げていけたら面白いなと考えています。

田久保:街づくりとしての建設業の新しい形ですね。

金澤:大変なことなので気軽には言えませんが、地元の街が活性化し、みんながワクワクするような場を作りたいという思いがあります。建設会社だからこそできる、街の守り方があるはずです。

次世代へ「建設業の魅力」を伝える役割

中辻:若手社員への技術継承についてはどうお考えですか。

金澤:今、40代の中堅社員たちが「自分たちの技術を次の世代に伝えたい」と強く言ってくれています。新卒採用に力を入れているのも、その思いを受け止めるためです。

田久保:現場の熱意が採用を支えているのですね。

金澤:地場ゼネコンの役割は、災害時や有事に地元のインフラを誰が守るのかという点にあります。この誇り高き仕事を絶やしてはいけません。デジタル化も、若い子たちが「聞きやすい」「学びやすい」環境を作るためのツールだと捉えています。

建設業は「人の人生を作る仕事」

中辻:金澤さんにとって、建設業のやりがいとは何でしょうか。

金澤:私たちは単に道やビルを作っているのではなく、そこで過ごす「人の人生」を作っているのだと考えています。誰かが泣いたり笑ったり、恋をしたりする舞台を、私たちが作った土台の上に築いている。そう思うと、これほど素敵な仕事はありません。

田久保:お菓子も建設も、人の笑顔に直結していますね。

金澤:はい。AI化が進んでも、この「想い」の部分は決してなくならないと信じています。金澤建設という名前のまま、これからも地元で地道に、そして新しいことにも挑戦し続けていきたいです。

■金澤建設株式会社 https://www.kanakk.com/index.html
■菓子工房ビルドルセ https://builddulce.com/
■FMたちかわ http://fm844.co.jp/

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アーカイブ配信:https://audee.jp/voice/show/100917

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