関東鉄筋工事業団体連合会・青年部会
更新日:2025/10/7
【3期目の就任を迎えて】
関東鉄筋工事業団体連合会・青年部会は、今年7月に開催した総会にて、小林正人部会長(小林興業・代表取締役)の再任を決定した。3期目の就任を迎え、小林部会長は「技術・技能に対する評価を、価格に繋げる仕組み作りの必要性を痛感している。若年層の入職が少ない中、外国人労働者が増える状況が続き、社員のキャリアパスを構築することは困難な業務になる。国・ゼネコンに説明できる付加価値を付けられるよう、青年部が一致団結した活動を続けよう」と力を込めて呼び掛けた。4年間の東京都鉄筋業協同組合・青年部長を務めた後に、就くことを決めた現職。100社以上の会員企業との意思疎通を図り、対応策を共有・周知することは骨の折れる作業になるが、「今できる最善策を取ることが私の責務」と常に邁進する姿勢を見せている。

【小さな積み重ねを重視する】
青年部会では、2ヶ月に1度の頻度で定例会を開催している。ここでは、鉄筋工事業界を活性化するに当たっての具体策が話し合われており、今年は高校生を対象とした出前授業を合計17回ほど出席するなど、年間を通した動きの活性化を目指している。今年8月には、日本大学・理工学部建築学科で3日間、夏期集中講義「コンストラクションワークショップ」に参加。学生が鉄筋図面を作成し、実際に鉄筋・型枠などを組み立てることで、学生が現場を体験できる機会が設けられた。施工管理の立場から実習補助として鹿島建設・大成建設・清水建設・前田建設・フジタの5社の社員も技術サポートとして参画。当日は、ゼネコン・専門工事業者の双方からの講義を実施したことで、学生たちは現場理解を深めることができたという。小林青年部長は、「団体としては、若手採用に繋がるきっかけ作ることで、建設業界全体の入職者増加に繋がってほしいという願いが強い。このような小さな積み重ねが、いずれ花開く時が来ると信じ、今後も全力を尽くしたい」と熱い気持ちを全面に出している。

【代表取締役に就任】
小林青年部長は、今年6月30日に小林興業(埼玉県戸田市)の代表取締役に就任した。学生時代から長期の休みに入ると、友達を引き連れてアルバイトとして精を出した思い入れのある仕事。赤坂Bizタワーの工事に携わる中、「完成は卒業後になってしまうけど、最後まで担当したいな」という思いが沸き上がったことから、父・英明氏が創業した同社への入社を決意した。社長に就いてからは、自身が2歳の頃から先代の右腕として働くベテランの知識・経験を、どのような形で継承すべきかを熟慮。現在は、「定年まで働きたい」との申し出を受けている、特定技能2号を取得するベトナム人の社員らとも、更なる発展に向けた発展を試みている。「現状では、当社は幅広い年代の社員が所属するが、企業永続を見据えると、20代の若手職人の採用を常に続ける必要がある。組織の盤石化と発展。常に双方を意識した経営を心掛けていきたい」と基本スタンスを述べる。会社では、実習生の面接において、初期段階から「継続雇用」の強い意志を通達。日本人社員と同等の処遇を徹底し、全員が長期的に働き続けている現実が、顧客からの信頼と実績に繋がっているようだ。

【付加価値を加える取り組みを】
鉄筋工事業界が抱える課題としては、「仕事に空きが生まれる状況に入ると、無理してでも仕事を取るために、契約単価を自ら下げる企業が出始めること」と明言する。他県では、鉄筋工事標準見積書が定着する地域も存在するが、「関東圏では会員企業数も多く、なかなか団体全体が団結した交渉ができない難局に直面している」と実態を語る。働き方改革などで出勤日数の制限される中、賃上げの必要性にも迫られている。様々な克服すべき難点が山積する状況下だが、小林青年部長は最優先事項を「自分たちの仕事に付加価値を見出し、それをブランド力に転換していくこと」に設定した。現状維持のままでは、単価の安い企業が優遇される状態が続き、「技術力は関係ない」という動きが加速することが予想される。このような流れの継続を「長期的な視点に立てばゼネコンにとってもデメリットになる」と指摘した上で、「お客さまのニーズに応え、+αが提供できる団体を提示していきたい」と意気込みを見せる姿勢は何よりも勇ましい。「私たちが手掛ける仕事は、それだけに値するはずだ」と宣言する小林青年部長。青年部を主軸に国内の鉄筋工事業界がどのような変遷を見せていくか注目である。
この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。