神奈川県型枠工事業協同組合
更新日:2026/1/14
【創立60周年を迎えて】
神奈川県型枠工事業協同組合は、昨年10月16日に「創立60周年記念式典・祝賀会」を開催した。当日は、組合員や関連団体の役員など約100人が出席。吉田和彦理事長(吉田工務店・代表取締役社長)は、「皆さまのサポートによって、組合が現在も在り続けられていると確信している。課題は山積みの状態だが、今後も型枠工事業者としてのプライドを堅持し、全力を尽くすので力を貸してほしい」と呼び掛けた。吉田氏はコロナ禍である2022年5月に理事長に就任。4期・8年の任期を全うした前任者の小泉義明氏(小泉建業)からの指名を受ける形で大役を引き受けた。「新型コロナウイルス拡大の影響で長い期間、組合員同士の交流が途絶えていたので、就任直後から2ヶ月に1度の頻度で情報交換会を開くなど、顔を合わせる機会の創設を心掛けた」と振り返る。若手人材の確保や時間外労働規制、週休2日制など、業界の抱える課題を共有・克服するための場を設けたことで、組合員同士の関係強化にも繋げている。


【職人の単価を上げるために】
今期で3期目を迎える吉田氏は、組合として注力する分野を「職人が正当に稼げるよう、単価を上げること」と明言する。就任当初は「『組合員全体で常用単価を上げよう!』と声を掛けても半分程度の共感しか得られなかったが、今では大部分の組合員から賛同されるようになった」と近況の変化を話す。時として安く買い叩く意図が見え隠れするゼネコンも現れることもある。しかし、現在は「そのような企業は団体として遠慮する意志を示す姿勢が浸透している」と近況を分析。もはや需要と供給だけでは単価が決まることはなく、各社から「これからは専門工事会社がゼネコンを選ぶ時代。企業・団体として自分の身は自分たちで守れる体制を構築しよう」というスタンスが組合内に溢れているという。「型枠工事は、現場の条件や建物の構造によって施工方法が大きく変わる、一朝一夕には身に付かない技術。この難解だが奥深い技巧を後世に伝承できるよう、今から万全の準備を整えたい」と常に先を見据えたスタンスを保つ。


【蓄積した全ての知見を伝承】
吉田理事長は、日本電信電話公社の職員として5年ほど勤務した後、父が創業した「吉田工務店」に参画した経緯がある。同社の社長に就任したのはリーマンショック真っ只中の2009年。薄利多売でその場凌ぎを続け、「もう限界だ」と全ての匙を投げようとした正にその時、「突如、景気の悪化が底をつき、単価上昇の兆しが見えるという神風が吹いた」と当時を語る。紆余曲折を経ながらも、バブル崩壊の際に1次下請けとなり、今なお第一線を走り続けているが、生き残り続けられている要因を「社員が一心不乱に最善を尽くした証」と端的に表す。現在は、長男と次男が入社を果たし側近として脇を固める。自身の中では65歳で社長の座を次の世代に譲ろうと考えているようで、「残りの時間は、これまで蓄積してきた全ての知見を後進に伝承する」と確固たる意志を示す姿が特徴的である。


【今できる最善策に取り組む】
神奈川県型枠工事業協同組合のトップとしての最優先事項を、吉田理事長は「現場で汗水を流す型枠職人の地位向上」に設定した。これを実現するための一丁目一番地を「型枠単価を徐々にでも上げていくこと」と断言。特に型枠・解体を担当する職人のワンランクアップは急務で、「既に実施する環境は整いつつあり、あとは私たちが団体として、どのように振舞うかに掛かっていると自覚している」と意欲を見せる。型枠技術を身に付けるには時間がかかる。しかし、「だからこそ充実感が得られる仕事だ」と醍醐味を語る表情は常に柔和である。理想とする世界は「現場で働く職人たちが『型枠工事ほど興味深い世界はないから入りなよ』と、若い人や仲間たちなどに対して、率先して入職を薦めること」。為すべきことは山積みの状態だが、吉田理事長はその日が到来することを夢見て、今できる最善策に向けた取り組みを続けている。

この記事を書いた人
クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。








