長崎県鉄筋工事業協同組合
更新日:2026/2/16
【慣例・伝統を刷新】
長崎県鉄筋工事業協同組合の平本大介理事長(みつひら産業・代表取締役常務)には、就任直後から組織形態や定款、理事の人数などの刷新を断行した実績がある。大胆な変革を決行した動機は「慣例や伝統という言葉が存在するが、その大半が現代に合っていないと感じ続けていたから」。41歳での着任後から「親の七光りは、使いこなしてこそ意味がある」と、あらゆる物事に対して割り切るスタンスを見せ、長崎県内で三分割されていたエリアの統合も果たした。「極端な改革を実行したとも言われるが、価値観と判断基準が近い人々と対話し、小さなネットワークを形成しながら流れを作れたので、想定よりもスムーズに物事を進められた」と経緯を語る。4期目となる今期も精力的な活動を見せ、合理的な組織運営を心掛けている。


【信頼と実績で変化をもたらす】
長崎県の鉄筋業はリーマンショック後、全国の中で最も早く単価の回復を実現したと言われている。発生直後、受注価格が日に日に減少する現実を前に、平本理事長は「このままではお客さんに食い殺される形になる」と痛感し、打開策を必死に模索。「組合の総意として、県内の鉄筋業者の団結を示せたことで、生き残りを果たすことができた」と当時の様子を振り返る。このように30代の頃から長崎県全体を主軸にした体制づくりを手掛けてきたこと。また、マーケットを吟味した上での対策で結果を残し続けてきた功績が、組合員からの厚い信頼に繋がっている。平本理事長の就任以降、定例会の出席率は従来の4割程度から約9割に改善されるなど、現在も団体内に顕著なプラスの変化をもたらしている。

【標準見積書を土台にする】
昨年12月12日に改正建設業法が全面施行された。平本理事長は、この実態を見据え1年半ほど前から組合員に「2025年末には新たなルールが運用されるので、今から準備を始めよう」と周知。全国鉄筋工事業協会が推薦する、人工から単価を算出しその合計を頭数で割る形で単価を積算できる「鉄筋工事標準見積書」に微修正を加えた独自の用紙を作り、九州全体に浸透するよう他県の団体にも細かなレクチャーを行った。「従来の標準見積書も非常に優れたものだったが、60代のパソコンが苦手な人でも使えなければ意味がないと考えた。数量や歩掛りを入力するだけで対応できるように改良したことで、徐々にだが九州にも活用する意義が定着し始めている」と現況を語る。2025年8月より運用を開始し、前年度と価格差が出る根拠も論理的に説明したことで、起こり得たハレーションも最小限に抑制できたという。「単価の安定化を図る上で、標準見積書の活用は土台になる。専門工事業者の買い叩きを防ぐよう、引き続き理解と普及の促進を図っていく」と強い意志を示している。

【年間120日の休日を保証する】
高齢化が進み、若手入職者が減少の一途を辿る現状に対し、平本理事長は「今後は、企業と業界の再編を見据えた人材育成が必須事項になる」と見立てている。このままでは、おそらく7年以内に半分近くの専門工事業者が後継者不在で廃業に陥る。現段階では、企業・団体の双方で人を育てるための最適解が共有されていないため、「早期に若手入職と教育の手法を確立すべきだ」と警鐘を鳴らす。若者を迎え入れる上で徹底すべきポイントは「年間で120日の休日を保証すること」。全ての祝日を休暇日に充てることは難しいため、「コアタイムなしのフレックス制を採用することで、補える労働条件を根付かせる必要がある」との見解を示す。自身が経営の舵を取るみつひら産業(長崎県佐世保市)では、2020年から完全週休2日の完備を達成できた。今後、建設業界の衰退に歯止めをかける具体策として有益な一手となるはずである。「1社・1人では何もできないことは明白。今後も組合員・非組合員の垣根を超えた協力体制を構築し、鉄筋工事業界が良き方に向かえるよう全力を尽くす」と強い覚悟を見せる。平本理事長の確固たる理念が、どのような形で全国に行き渡るのか。鉄筋業界の未来は、この浸透度合いに依拠すると断定しても過言ではないはずである。

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この記事を書いた人
クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。







