全国マスチック事業協同組合連合会
更新日:2025/3/24

【3期目の当選と50周年を迎えて】
2024年10月25日に開催した全国マスチック事業協同組合連合会の「第41回通常総会」で、實松幹次郎会長(松美化建工業・代表取締役社長)が再選を果たした。同連合会は、マスチック塗材ローラ工法(マスチック工法)を用いた責任施工を行う全国唯一の団体。北海道、東北、関東、中部、近畿、中国・四国、九州の7地域事業協同組合で組織しており、同工法を活用した工事の普及に努めている。マスチック工法は、建物の内外壁を多孔質のハンドローラにより、1段塗りで厚膜に仕上がる長期耐久性に優れた技術。施工は各組合員が責任を持って実施しており、材料の飛散公害がない工事を居住空間である団地などを中心に提供している。實松会長は、「会長として3期目を迎えられた現実に身が引き締まる思いだ。昨年度は、協会の発足50周年を迎えることができた。当会の主要事業である『長期性能保証事業』と『工事完成保証事業』を更に浸透できるよう、積極的な活動を続けていきたい」と意気込みを述べる。建設専門工事業界の中では、特異な立場として存在する連合会に興味が尽きない。


【長期性能保証事業と工事完成保証事業】
全国マスチック事業協同組合連合会では、1990年に国土交通大臣認可の下で「長期性能保証事業」を、2007年に「工事完成保証事業」をスタートした。長期性能保証事業は、塗装・防水施工などを手掛けることで、竣工後の性能を最長10年間に渡り保証できる制度。保証は、マスチック塗材を用いなくても、組合員が行う工事であれば全て対象になるため、戸建ての塗り替えから大規模修繕工事まで幅広く活用されている。實松会長は「業者だけの保証では不安という声に対し、組合としての対応で安心感をお客様に供給できている。長い期間をかけて工事の結果を見守り、万が一の事態にも団体として責任を負えることがポイントだ」と見立てを話す。着工時から引き渡しまでの間に、担当の施工業者が完遂できない状況に陥っても、組合員が残りの施工を実施する工事完成保証も安定的に稼働。「長期性能」と「工事完成」、双方の保証を組み合わせることで、顧客は着工から保証期間の満了時まで一貫した担保を得られている。「今期の講習会では、新たにマスチック仕上げ士9人、マスチック仕上げ性能管理士24人が合格した。資格者が増加したことで、両保証事業の多くを確保できることを期待している。これまで長い期間で残してきた実績を活かし、引き続き『手軽に・素早く・安価な施工』をお届けしていきたい」と見据える姿が印象的である。

【止まっていた各委員会を動かす】
会長就任から5年目を迎えているが、實松会長は「1期目は、全体の流れ・動きを把握するだけで終わってしまった」と振り返る。既存の技術施工委員会では、メンバーを2024年11月に4人から12人に増加した。定期的なオンラインによる打ち合わせにより、マスチック工法の研究や新工法の技術開発、講習会の開催などを吟味するように変えることができた。この他、「組合員の加入を促進する会員増強委員会や、PR・意見交換などを担当する広報需要委員会は、2つの保証制度が建設会社や設計事務所に知られていない現実にも着目し、今年度からは積極的なアプローチを見せていきたい」と展望を述べる。連合会が、プライベートブランド(PB)であるローラ仕上げ塗材「マスチックストーン」や、次世代型外装用塗料「マスチックNANO」、SDGsに沿う「マスチッククール」なども所有する長所も活かし、ようやく再始動に入る準備が整ったという。
「私が近畿の組合の理事に就任した時はいちばん若手だった。しかし今では最年長になり、全国7組合においても若手の理事が多く誕生している。若い理事たちの意見も積極的に汲み取りながら、連合会のテーマ『保証で信頼と実績のマスチック』を追求していきたい」と先を見据えている。

【会員増加に全力を尽くす】
現在、全国マスチック事業協同組合連合会では280社近くの組合員が所属しているが、實松会長は「当会とも関連性のある日本塗装工業会の会員数・約2300社と比較すると、まだ足元にも及ばない現実がある。これを伸び代と捉え保証制度の普及と共に、地道に会員を増加するための活動も並行していく」と意欲を見せる。勧誘の手法は、組合員から紹介があった企業と対面での会話を主体に、コミュニケーションを重視するというアナログ的なもの。しかし、確かな技術を身に付けることで、安定的な仕事を獲得できるようになること。また、会員が保持するPBを有効利用することで、加入の付加価値を丁寧に説明するなど、着実に会員数を増やせている。昨今では、関東と中部地域での増員が顕著な動きを見せている。賛助会員には、賛助会メーカー5社・販売店46社が揃う環境を整備。この良い循環を確かなものに築くために、連合会がどのような施策を打つかも注目である。

【マスチックブランドを確立する】
實松会長は、完全週休2日制など職人の処遇改善に直結する潮流が建設業界に出ていると評価する一方、「土日が休みになり、更に雨や雪の日も休まなければならない場合、生活に支障が出る方も増えるのではないかと不安になる」と懸念点を示す。実際に現場からは働き方改革の推進により所得が上がった人もいれば下がった人もおり、この絶妙な舵取りを連合会のトップとして担えるかも関心が集まる。「マスチックの保証制度は、他の保証制度と比べ最も優れたものだと確信している。今年度も、新たに33人の仕上げ士・仕上げ性能管理士を誕生できたことも、追い風になっている。このチャンスを、多くの保証事業の確保に繋げられるよう全力を尽くす」と先を見通す。實松会長の理想は、「マスチックブランドの確立が進むことで、自然と会員が増える状況を作ること」。実現までの道のりは、まだ遠い状況にある。しかし全国マスチック事業協同組合連合会の長期性能保証事業は他にはない34年の実績がある。そして新たなPBの開発に取り組むなど、ポジティブな要素も多い。マスチック製品の普及促進が、業界全体の責任施工体制を発展に導くと信じ、實松会長は今日も堅実な団体運営を手掛けている。
全国マスチック事業協同組合連合会のホームページ:https://www.mastic.or.jp/
この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。