クラフトバンク総研

石新会

更新日:2025/5/14

【石新会としての成り立ち】

 2024年5月に石澤工業(東京都江東区)が、会社設立から50周年を迎えた。石澤拓哉社長が、創業者である石澤柘磨氏から会社経営を引き継いだ時期が2009年。リーマンショックやコロナ禍など、多くの荒波に揉まれながらも組織を盤石化させ、2019年5月からは鹿島建設(東京都港区)・東京事業協同組合の理事長に就いている。同社が組織する協力会社会の名称が「石新会」。旧名である「石栄会」を経て、現在は35社の専門工事会社で組成されており、これまで数多の建築工事を下支えしてきた。現在、石新会の会長を務めているのは、知名裕之氏(知名興業・代表取締役)。石澤社長とは、常に2人3脚で安全と品質を最優先にした舵取りを担っている。

石澤拓哉氏(左側) 知名裕之氏(右側)

【定期的な親睦会】

 8期目の会長職となる状況を知名氏は、「プレッシャーは常にあるが、石澤社長との綿密な意思疎通により、チームの取りまとめが順調に出来ている」と語る。石新会では、2~4ヶ月に1度の頻度で親睦会となるゴルフ競技会を開催。単純な飲み会ではなく、スポーツを通したコミュニケーションの中には「マナーやルールを通じて、周囲に気配りや調和が取れるのか、業務に取り組む上での参考にしている」と本音を述べる。少し問題を抱えていそうな雰囲気のあるメンバーには、敢えて石澤社長とのラウンドを薦める。最初は、気を張りながら様子を伺うが、共に汗を流しながら回るうちに徐々に打ち解け、終盤を迎える頃には悩みの共有を経て解決に向かうシーンが多いという。知名会長は「過去は、宴会のみの実施だったので、アルコールの勢いで熱くなり喧嘩に発展したことも少なくなかった。時代の背景もあるが現在のスタイルに変えて以降、より合理的なチーム編成が実現できた」と分析する。ゴルフで回るグループも日頃の仕事では関わらない人々と組むことを心掛けており、俗に言う派閥が生まれないよう配慮していることも、円滑な協力会たる所以となっている。

【石澤工業の名に恥をかかせない】

 知名会長は、「石新会のメンバーには、『石澤工業の名に恥じをかかせない』という共通認識がある」と実態を話す。これは歴代の会長・職員から引き継がれてきたDNAのようなもので、年長者は真っ先に「若手が先輩を立てるのは当然のこと」との真理を暗に伝承する。この概念が自然な作法として身に付くが故に、メンバーは現場で他社の作業者からの振る舞いを褒められ、重宝されることが多い。石澤社長は「当会では、常に『売り上げも大事だが、組織としての基盤をきちんと整備しなければ、結果的に全てを失うことになる』と大前提を教えている。決して大それた目標ではないが、信頼を積み上げ、安全・品質を保てるようになることが、何よりの営業に繋がると繰り返し伝えている」とポイントを打ち明ける。一時の儲けで我を忘れ、散財する可能性のある若者を戒めるためと思いきや、知名会長は「当会に限って言えば、何か注意・指摘をすると即座に軌道修正や、行動に移すのは若手が多い印象だ」と率直に語る。「バブルの名残を知っている中には、まだ『有り金は全て使い切りたい』と考えるメンバーも少なからず居る。様々なタイプ・年代が混在する中、会全体のバランスを保つことは困難だが、『重要なことは何度も言うこと』を徹底し、更なる改善を目指したい」と現状を語る。あらゆる物事に対して、このような過程を踏みながら進めていくため、現場では施工技術のノウハウも積極的に伝授する様子も頻繁に見受けられ、発注会社からは「どうすれば、あのような理想的な関係性が築ける?」と質問される機会も多いようだ。

【国境を越えた相互補完の関係性】

 石澤工業では、会社と現場を繋ぐ技術系事務スタッフとして、ベトナムやミャンマーなどの女性数名からなるチームが躍動している特徴がある。この良い影響は石新会にも与えており、近年では多くの実習生が活躍する姿が目立つようになった。石澤社長は「急速に進む少子高齢化により、日本人だけでは現場対応できない現実はある。当社だけでなく石新会でも本件を真剣に考慮し、外国人を積極的に迎え入れているようになって久しい。現制度のままでは、せっかく優秀な人材が定着しても、帰国せざるを得ない苦しい状況にも直面しているが、現場の安全・安心を確保するため最善を尽くす」と心境を語る。石新会では、ルール化されている訳ではないが、「メンバーの現場が行き詰まれば、余力のある誰かが助けに行く」という関係性が浸透している。もちろん、その対象は実習生も同様で、良好な時間を経て築き上げた繋がりは、国境を越えても強化されることが証明されている。

【「共に」を重視するプロセスを】

 石澤工業の社訓は「英知による品質施工を行い、共に信頼と繁栄を継続する」。品質施工を合言葉に、ものづくりの奥深さを学び、信頼と安全作業を積み重ね、努力を継続することで、共同で成長に繋げるとの思いが込められている。ここでのポイントは「共に」という言葉。「これは、元請け企業と弊社・石澤工業、また弊社と協力会社が一体となり、共同で発展し続けるべきとの意味があり、強い願いでもある」と実感を込めて話す。現在、石新会の現況は非常に良い状態を保てている。しかし、石澤社長は「更なる飛躍を遂げるには、元請け・当社・協力会社の関係をより強固にしていく必要がある」と断言する。仕事においての最重要事項は、「安全・安心な施工を安定的に続けること」。極めて地味な道のりとなるが、「この地道さが石新会の神髄であり、何よりの近道に通じる」と胸を張る。安全と品質にゴールは無い。しかし、この状況下で仕事に誇りとやり甲斐を持ち、いかに日々継続できるかを重視する。石新会では、一連のプロセスを完遂しているため、昨今での重大な事故は無い。石澤社長・知名会長は今日も肩を並べ、石新会の改善・改良・充実化に全力を注いでいる。

関連記事:業界リーダーに迫る 『円熟期に入る石澤工業。若手とベテランの融合で更なる躍進へ』

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