クラフトバンク総研

ジャバラユニット協会

更新日:2025/5/23

【協会の設立】

 ジャバラユニット協会は、2024年1月30日に福岡市内のホテルで設立式典を開催した。理事長に就任したのは、柳井扶美代氏(有限会社 柳井通商・代表取締役)。創業者かつ夫でもある柳井泰三氏(以下・泰三氏)が、鉄筋会社で勤務していた際に、鉄筋工事の生産性向上実現のため考案した鉄筋ジャバラユニット工法。現在は、同工法を全国に普及促進することや、協会員を増強するための活動を手掛けている。協会発足から約1年の段階で、既に4社の新規メンバーが参画を決める順調な立ち上がりを見せている。協会では理事会の下に、事務局とエンジニアリング事業部の他、北海道・東日本・西日本・九州の4つの組織を組成。2025年から30社(2025年1月現在)の協会員企業と共に新たな船出を迎えることになった。

田中馨子監事(左側)と柳井扶美代理事長(右側)

【鉄筋ジャバラユニット工法】

 鉄筋ジャバラユニット工法は、有限会社柳井通商(福岡市中央区)が特許を保有する鉄筋工事工法である。工場にて鉄筋工事で使用する柱・梁・壁・スラブなどの各部を、独自開発した特殊なゴム付き結束線(Jワイヤー)で先組み(ユニット化)し、折り畳んだ状態で運搬。輸送先の現場にて、元の形状に復元し取り付ける手法を取る。1回あたりの積載量を増やし、施工現場での省力化や、危険な高所作業を減らすることで安全性の向上などを実現。工期の短縮と同時に、品質のバラつきを減少させ、運搬コストの削減を可能にしている。開発当初から特約店制度として、各地区協会員(原則・各都道府県1社)と共に地道な取り組みを続けてきた。しかし、泰三氏の逝去や「他にない優れた技術なら幅広く活用されたほうが建設業界に貢献できるのではないか」との提案も受け、全国展開する方向に舵を切った。柳井理事長は、「2022年に福岡県の経営革新計画に承認されたことも追い風となり、協会の創設を決断した。鉄筋ジャバラユニット工法は、創業者・柳井泰三が魂を込めて生み出した画期的な技術。工法が協会員の生産性向上に貢献し、鉄筋業界の発展に役立つと信じて全力を尽くす」と意気込みを述べる。発足直前には、特約店時代から全体を取りまとめていた重鎮が急逝するアクシデントも起き、心が折れそうな瞬間もあった。しかし、協会員からの「何かあったら私たちがフォローする。このピンチを皆で乗り切ろう!」という激励にも支えられ続け、設立式を迎えることが出来た。

【田中監事の存在と活動内容】

 ジャバラユニット協会を設立するに当たり、柳井理事長は監事に田中馨子氏を任命した。田中氏は、税理士・行政書士の資格を持ち、柳井通商の相談役を務めてきた。特に工法の知財関係面を保護するため、福岡県中小企業振興センターとの相談を経て、商標権など大枠から囲う形で、様々な認定の取得に成功。税制など技術的な面だけでなく、精神的なケアまで自然と行える人間性を持ち合わせていたこともあり、柳井理事長は「真っ先に『協会でも私たちをサポートしてほしい』と依頼した」と振り返る。田中氏も生前の泰三氏から何度も「この工法は、絶対に将来的には必要になる技術だ」と長年聞かされており、「素人ながら初めて現場で目の当たりにした時の感動は、今でも鮮明に覚えている」と述懐する。「これがあれば、鉄筋工事の負荷は間違いなく減らせられる。そのお手伝いが出来るなら携わるべき」とその場で理事長からの提案を受諾したという。

 協会事務局では、定期的に協会員の近況報告や事例紹介などを行う定例会を実施。特殊な工法が故に技術指導が必要であり、協会員が直接普及する機会を意図的に増やしている。事務局は、「新規で身に付けようと志す方でも、序盤はうまく行かないのが鉄筋ジャバラユニット工法の特徴。新規協会員になって頂いた方々の期待に応えるためにも、協会側が徹底的なフォローを継続することで、現場の効率化を早期に実現できるようにしたい」と業務を語る。2025年5月時点での実績数は712件。現場作業者の負担を大幅に軽減する工法が、どのような形を経て広がりを見せていくかも興味深い。

【鉄筋工事の工業化を】

 ゼネコンからも重宝される鉄筋ジャバラユニット工法だが、柳井理事長は最優先事項を、「工場生産の比率を高め、鉄筋工事の工業化を実現すること」と断言する。体得するまでは骨の折れる作業になるが、一度身に付ければ、「万国共通で活用できる技術のはず」と想定する。品質の向上・工期短縮・コスト削減だけでなく、業界全体で喫緊の課題となっている人手不足の具体策としても適応可能というメリットも大きい。直近の目標は、協会員の増加と工法の普及促進だ。しかし、目線は既にその次のステージをも見据えることが出来ている。柳井理事長の周囲には信頼を寄せる家族、スタッフ、協会員が常に寄り添っている。鉄筋ジャバラユニット工法が、鉄筋工事業者の救世主として定着する日は遠い未来ではないはずだ。

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