日本塗装工業会・愛知県支部
更新日:2025/4/9
【設立70周年を前に】
日本塗装工業会・愛知県支部が、今年5月に設立70周年を迎える。現在の会員数は115社。創設から長い時間を掛けて、建設塗装に関わる技術と経営の改善を手掛け、業界全体の健全な発展を目指してきた。支部長を務める一宮久朗氏(小澤塗工店・代表取締役)は、「団体として重要な節目に支部長を務められていることを嬉しく思う。徐々にではあるが、会員も若返りを果たしている。この良い流れを会員各社の飛躍に繋げられるよう全力を尽くす」と意気込みを述べる。一宮支部長の前職は、ウエディングプランナー。結婚を機に義理の父親が創業した小澤塗工店に参画し、ゼロから経験を積み重ねてきた過去がある。長い期間、青年部に所属した後、昨年6月に支部長に就任。次世代のトップリーダーを育成するために団体が開催する経営委員会に関わるなど、積極的な活動に携わっている。

【会員以外も参加可能な青年部】
愛知県支部・青年部には、日本塗装工業会の会員でなくても参加できるという、他団体ではあまり例の少ない方式を採用している。一時は青年部に所属するメンバーも10数人まで落ち込み、青年部を畳むことも検討したこともあった。しかし、「青年部のみ、会員でなくても加盟できる仕組みを作れば、そのメンバーがいずれ支部の会員に向く導線となる」との提案を受け導入を決断。重鎮からは「誰でも入れる形にすると、秩序が崩壊するのでは?」との危惧もあったが、特に問題もなく所属企業を50社近くにまで増やすことに成功し、間口を広げる契機となった。一宮支部長も「まず同業者同士でコミュニケーションの取れる機会を設けること。新たな入口に立ち、お互いの持つ情報・価値観を共有できたことが重要な一歩だった」と打ち明ける。年代の近い業者が1度関わりを持てれば、共通の悩み・課題を抱えていることもあり、その後は物事がスムーズに進むことが圧倒的に多かったという。青年部では、行く先々で未加盟の企業に定期的な声掛けをするなど、地道かつアナログな手法で会員増加を手掛ける様子も印象的である。

【建災防との連携の先にあるもの】
日本塗装工業会は、2024年から建設業労働災害防止協会(建災防)の指定業種となり、綿密な連携を開始している。労働者の安全・衛生に関する措置の支援・指導を目的に、共同で安全パトロールの実施や安全大会を開催するようになった。一宮支部長は「建災防との提携することで、現場で起こり得る労働災害の事前予防を徹底したい。安全面での準備にやりすぎという概念はない。他団体とも日常的に関わることで、これまでにない流れを生み出したい」と展望を述べる。昨今では歯止めの利かない天変地異が猛威を振るっており、復旧・復興工事、国土強靭化に向けた継続的な仕組みを作れるかが今後の鍵になりそうだ。


【新たな原動力の構築を】
定期的に支部長会議や支部内での定例会などを実施しているが、頻繁に議題として挙がる項目が「女性役員の推薦と働き方改革の進捗状況だ」と一宮支部長は語る。働き方改革の浸透は徐々に浸透を見せる中、支部内での女性経営者は数社程度と伸び悩む状況は続いている。「若手が増加傾向にある中、女性役員も連動することで支部内を活性化させ、新たな原動力を構築したい。女性・外国人の人材など、様々な面から労働マーケットに手を伸ばさなければ、担い手不足は加速するのは明白。現場の環境改善や再雇用、子育てしやすい制度作りも進める必要がある」と見立てを話す。建設技能人材機構(JAC)の認定団体となっていることもあり、外国人の雇用を目的にした新規会員も増える側面もある中、更に広い視野を併せ持った活動も心掛けている。

【全国に支部を持つ塗装団体として】
一宮支部長は「現在、会員が115社在籍する状況だが、残念ながら支部内のイベントに1度も参加しないメンバーも少なからず存在する。直近では、この参加率を上げることを目指す」と直近の目標を語る。「支部の会員として参加する最大のメリットは、最前線の情報を共有し、切磋琢磨する関係性を構築できること。塗装業の中では全国で最も規模の大きい組織に所属する強みを提供していきたい」と率直な思いを語る。若手の経営者の間では、「もう少し支部内でもDX化を進めなければ、取り残されてしまう危険性もある」など改善に前向きな話題も出て始めており、今後の舵取りには更なる配慮が必要になりそうだ。「日本塗装工業会は、約2300社の建設塗装工事業者で構成し、47都道府県に支部を持つ唯一の全国団体。愛知県支部では、建設産業の一翼を担う専門工事業者として、引き続き継続的な発展を目指していく」と先を見据える。処遇改善を目的にした不当廉売の排除や、適正受注価格の設定、休日の確保など団体としての課題も多い。これまで以上に、一宮支部長が全国組織としての強さと柔軟さを両立できるのか。就任1期目を迎えている一宮支部長の組織運営から目が離せない。


この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。