クラフトバンク総研

全国防水工事業協会・近畿支部

更新日:2025/6/2

【新支部長に的場眞司氏が就任】

 2024年5月13日に開催した全国防水工事業協会・近畿支部の通常総会で、的場眞司氏(マトバ・代表取締役)が新支部長に就任した。同協会は、建設産業に携わる専門工事業の1つである防水工事業の団体として、顧客の様々なニーズに応えるため技術・工法の開発や、技能者の育成などに尽力する。近畿支部では、大阪府や兵庫、京都、滋賀、奈良、和歌山県をエリアに、支部事業の案内や報告・技能検定受検の情報提供、建築関係の制度改定などを手掛けている。的場支部長は、これまで蓄積した技術・発想を結集し、防水に課された社会的使命を果たすことを責務とする。就任に当たり、「昨今では担い手不足が続き、職人の高齢化が顕著だ。原油価格の高騰の影響で、屋根防水に使用するアスファルト材の価格も値上がりの一途を辿っている。支部としては現状と向き合い、今できる最善策を実行していきたい」と意気込みを見せている。

【「安さ」優先の単価設定と保証制度】

 的場支部長は、「防水工事の保証に対するリスク・責任は、元請けであるゼネコンが担うにも関わらず、そのゼネコンが専門工事業者に単価を値切る構造が納得できない」と慣習として続く矛盾を指摘する。ゼネコン各社は、本来であれば施工後のアクシデントは避けたいはず。しかし、防水工事の選定基準を「安さ」のみに設定するケースが圧倒的に多い。予算次第では、もちろんワングレード上の工事もでき、その選択をすれば規定の保証期間である10年どころか、30年近くも施工状態を維持し、結果的にランニングコストを大幅に抑えられるはず。この現実で起きている齟齬を的場支部長は歯痒く感じ、何とか良き方向への改善を目論む。防水メーカーも半世紀以上も前から存在する「防水保証10年」という条件をクリアするため、「価格」の制約がある中でも、死に物狂いの技術・研究開発を続けてきた。的場支部長は「防水工事は保証があるからこそ、技術革新が進んできた側面もある。しかし、直近の問題として習得した技術に価格に反映し、この負の流れを変える決断をしなければ、廃業を選ぶ防水工事企業も増えていくだろう」と警鐘を鳴らしている。

【増加する近畿支部の会員数】

 この3年間で近畿支部の会員企業は、70社以上も増加する結果を残している。現在の正会員は215社・賛助会員は約50社となり、関東エリアの数とも肩を並べられるように変化してきた。この短期間での飛躍は、「業界全体を動かすには、協会が結束していることに加え、数の説得力が必須だと感じたから」という的場支部長の思いが基にある。「人手不足を解消するには賃金アップが1番早い解決策」。監事を務めていた頃から、その点にいち早く気付き、「まずは自社と関わりがあった企業から声を掛けは始めた」と振り返る。同業者で争う状態を続けていれば、それは結果的に元請けから買い叩かれる状況に繋がる。自分たちの技術に見合う売り上げを実現するには、まず同じメンバーを増やして目標に向かって団結する組織を示そう。自身が見積もりを提出した際、「何もしなくても皆さんが勝手に値段を下げてくれるので助かる」と、暗に単価の下落は業者同士の忖度で発生していると指摘された現実も糧に、勧誘では端的に本質だけを伝えることに注力。間もなく、「全体で底上げを目指さなければ所得は上がらない」「これからは仲間として助け合わなければ、この難局は乗り切れない」と賛同者が急増する形を作れたという。会員は入会後、若手経営者会や講習会などを通した綿密な情報共有なども定期的に受けるメリットもあり、同業者同士で手を取り合う環境を整備した。的場支部長など理事は、国土交通省近畿地方整備局との意見交換会にも出席し、防水工事業者の付加価値を上げるための行動を定期的に継続。「行政との折衝では、『その議題は本省の方に提言してほしい』などの回答が続くことも多い。しかし、このような一貫した主張を続けていくことが、現状打破に繋がると信じている」と意欲を見せている。

【メーカー・商社との意見交換会】

 近畿支部では、2024年7月29日に防水メーカーを集めた意見交換会を始めて開催した。支部からは役員の代表6名も出席し、メーカーの立場から考える防水業界の現状や問題点をヒアリング。的場支部長からは、防水工事業者として実施すべき仕事をメーカーやディーラーに肩代わりさせる業者が増えている点の反省。また、多忙を理由に防水工法の選定や材料積算、技能者の手配まで手伝わせ、何か問題が起きるとその責任を業者に押し付ける一部のメーカーに対する指導教育を求める一幕も見られた。昨年9月9日には、商社を集めた意見交換会も実施。的場社長は、「一昔前までは、『専門工事業者の価値を下げたのはメーカーや商社』との疑念もあったが、もはや私たちは共に協力して生き残り策を模索すべき存在。受注価格を上げることは、メーカー・商社にとっても重要事項だという事実を定着させていきたい」と方針を話す。支部内では、入会3年未満の正会員と役員の交流会も実施しており、業界特有の仕組みや講習、防水工事保証契約に関する考え方などの解説も定期的に行っている。最近では、10数年以上も前から仲違いをした企業同士の間に支部が入り、仲を取り持つことで「これからは一緒に頑張っていこう!」と会員の士気を更に高め合ったケースもあるようだ。

【防水業界の健全な発展と地位向上】

 的場社長は「防水工事は、左官や内装工事と違い、天候や季節の影響を極端に受ける業種である」と前提を話す。昨今の気候変動の影響もあり、夏は猛暑・冬は極寒という状態で強いられる施工。この状況下の業務で給与が他業種と同列となると、若手入職者が現れるはずはなく、「信用ある防水工事業者として、3~5%でも上乗せした配分を実現する必要があると痛感した」と経緯を話す。自社であるマトバ(大阪市淀川区)を創業したのは40年以上前。この期間、的場支部長は業界改善のために奔走を続け、最近では「この信念を次世代の若い会員にも引き継いでほしい」と考える時間も増えているという。全国防水工事業協会の理念は、「防水業界の健全な発展と、会員の社会的な地位向上」。近畿支部では、防水工事業者とメーカー、商社が共存し、価格競争から脱却した適正価格での受注を今後も目指していく。

全国防水工事業協会・近畿支部のホームページ:https://www.jrca-kinki.jp/

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