三島建設業協会
更新日:2025/12/9
【新会長に就任】
昨年5月に開催した三島建設業協会の定時総会にて、新会長に佐野茂樹氏(青木建設・代表取締役)が就任した。20年近く団体を牽引してきた小野徹前会長から引き継いだ重責。運営方針である「社会情勢を踏まえ、機敏に変化に対応できる組織づくり」を踏襲し、これまでの理念や目的をベースに事業を進めている。佐野会長自身は、日本港湾空港建設協会・静岡支部や静岡県漁港建設協会で支部長も務めていることから、協会運営はそれらの活動も加味した要望活動を展開する。上下水道・電話・電気など身近な生活インフラと、道路や河川、港湾などの社会インフラを結び付け、建設業が果たす任務の周知にも注力している。


【若手主体の「みらい創造特別委員会」】
協会では、若手が主体となり構成する「みらい創造特別委員会」を設置し、世代間の架け橋となる役割を果たしている。数年前からは高校生に対して出前講座を開き、施工関連業務を体験できる機会を提供するなど、建設業の魅力を積極的に周知。「特別委員会では、各社の20~30代の若手社員が交流し、時には日々の悩みを共有することで離職の防止にも繋げている。学生との触れ合えることで新たな可能性も醸成されるはず。委員会活動を更に発展させ、これまで以上に『若者の発想を重視する組織』としてのステップアップを実現できた」と経緯を述べる。協会として、地域に住む住民に対しても「社会のエッセンシャルワーカー」として、幅広い年齢層から支持を得られるよう、特別委員会を全面にバックアップできるよう心掛けているようだ。

【万が一に備えた「事前防災」を】
2024年1月には能登半島地震が発生した。この状況を勘案し、佐野会長は「能登と伊豆は半島として地形が似ており、同規模の災害が起これば、状況次第では伊豆の方が甚大な被害を受けるという分析もある。協会の役割には『救助に向かえないエリアを絶対に作らないこと』が存在する。建設業は『地域の守り手』という認識を堅持し、非常時でも最善を尽せる仕組みを構築したい」との認識を強める。熱海市では、2021年7月に伊豆山土石流災害が発生し、その後は協会も積極的に関与できるよう変わったことで、既に多くの知見・教訓を蓄積している。被害や犠牲者を最小限に抑えるため、平時からソフト・ハード面であらゆる想定をした対策を講じることで、災害が起きた後に動くことのない「事前防災」を最優先にしている。

【限界工事量を確保する重要性】
佐野会長は、災害時にいつでも迅速な復旧に向えるようにするには、「バックホーやダンプを所持する地域建設企業に、日頃から一定以上の仕事を与えることで基礎体力を維持する『限界工事量』の確保が不可欠」との考えを提示する。協会では、国・県・市など各自治体と様々な協定を締結している。しかし、非常事態でも即座に現場へと向かう作業者が揃わなければ、救援そのものが不可能になる。この状態を保てるよう、「日常的に山間部などでの仕事を作ることで、地域と建設会社との共存・共栄を果たす概念を浸透させる必要がある」と強調する。実現に至るまでの過程には数多くの課題はあるが、「官公庁を始め各方面と認識を共有し、発注機関に対してはケースに応じた要望を続けていく」と明確な意志を見せている。

【持続可能な発展を目指す】
多様な人材が建設業を志望し、活躍できる職場に変えるには、「測量の解析や労務・安全管理などの一部を、現場から離れた場所でも応対できるよう工夫する必要がある」と佐野支部長は実感を込める。技術者が「ものづくり」に集中できる環境を再構築する。会員の大部分が中小企業で占める中、対応可能なDX化の領域には限界はあるが、まだ新たなイマジネーションが生まれる余地は残されている。「これからの建築業では、技術者・技能者だけでなく、管理部門や現場を側面から支える人々への配慮も必須になる。協会では、工事ごとに建設に携わった全ての人の名前をパソコン上で見られる「デジタル工事銘板」の導入を進めるなど、既に独自の動きも見せている。今後も三島建設業協会では、時代の流れも考慮した、持続可能な発展に向けた活動を強化していく方針である。
この記事を書いた人
クラフトバンク総研 記者 松本雄一
新卒で建通新聞社に入社し、沼津支局に7年間勤務。
在籍時は各自治体や建設関連団体、地場ゼネコンなどを担当し、多くのインタビュー取材を実施。
その後、教育ベンチャーや自動車業界のメディアで広告営業・記者を経験。
2025年にクラフトバンクに参画し、記者として全国の建設会社を取材する。







