クラフトバンク総研

日本左官業組合連合会・青年部

更新日:2025/12/2

【青年部・設立60周年記念式典を開催】

日本左官業組合連合会・青年部は今年6月、新高輪プリンスホテルでの「第60回通常総会」の中で、設立60周年記念式典を開催した。本部長を務めるのは原田宗亮氏(原田左官工業所・代表取締役社長)。会場には過去最大規模の約400人が参加し、これまで継続してきた活動を労い、来場者全員が今後に向けた躍進を誓い合った。昨年6月に本部長に就任した原田氏は、「青年部の本部長に就いた時から『繋がる』をテーマに掲げてきた。当日は、これまで数えきれない人々に支えられたことを再確認でき、新たに知り合えた方とも貴重な情報交換ができた。今後は組合に入るメリットを、若手経営者などにも理解されるよう、責任ある立場で団体を牽引していきたい」と展望を述べた。

【左官業の継承が使命】

青年部では、数十年後も左官業を継承可能にすることを使命に、「若手の採用」「育成」「左官のPR」という大きなテーマに正面から取り組んでいる。どれもが1社だけでは解決し得ない深刻な課題。団体としては、青年部の会員同士で強い結び付きを持ち、これまでにないアイデアを出し合うことで、業界の改善・改良の糸口を模索する。年間の活動としては、定期総会、サミットと呼ばれる研修会、年末に開く幹事会が存在しており、各都道府県の部長だけでなく、全ての会員が参加できる機会を設置。全国の左官職人は減少する状況だが、青年部は近年大きな盛り上がりを見せ、加入する支部・会員の増加を手掛けている。原田本部長は、「今までは『背中を見て覚えろ』『仕事は盗むもの』という暗黙の了解があったが、既に具体的なメリット・意義などを自らの言葉で説明しなければ、早々に若者は見切りを付ける時代に突入したと痛感している。難局を迎えているがこの点を留意し、青年部内で積極的に知恵を出していきたい」と明確な意志を示している。

【DX導入を突破口に】

原田本部長は、業界改善を推進するための突破口を「DXの駆使にある」と見立てている。自身が社長を務める原田左官工業所では、経営の安定化を進めるため、2013年と早期に経営管理システムを導入。自社でカスタマイズできた点も功を奏し、全ての請求が終わらなければ、利益が見えない状態からの脱却を図ることに成功した。「DXの取り組み着手以降、材料の発注なども現場から可能になり、会社に戻る必要性が激減するなど、明らかに無駄な業務の削減ができた。この事例を基に、未着手の会員には生産性向上の具体策として、情報共有を進めていきたい」と意欲を見せる。特に同社では、大小含め月間100件近くの案件をこなす必要があり、全体の管理が特に骨の折れる作業だった。現在は発注のデータベースなども短時間で管理できるようになり、「今後も専門工事会社の生き残りを賭けて、あらゆる手段を尽くしていきたい」との強い気持ちを全面に出している。

【固定観念に縛られない団体運営を】

原田本部長は、「業界内での競争は必要だが、単価の安値争いに突入することだけは全力で避けたい」と本音を話す。単価を上げる目的は「若者が入職する間口を広げるため」と断言。現場に寄り添った団体運営を手掛け続けたことで、「少しずつだが今までにない良い流れを作れてきた」と実感を込める。各地では、独自の手法で毎年10人近くの採用を実現するなど、目覚ましい飛躍を遂げる会員企業も出始めている。「飛鳥時代から脈々と続いている左官業を後世にも繋げていく」。団塊世代の引退が始まった今、若手職人の育成は急務であり、他の専門工事業と比較しても高齢化は進んでいる。特効薬は存在し得ない。しかし、原田本部長は、「左官という伝統ある工種を未来あるものにするため、固定観念に縛られない青年部らしい活発な動きを続けていく」と未来を最優先に考えた活動を誓い、今日も全力を尽くしている。

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