静岡県型枠工事業協会
更新日:2025/5/28
【一般社団法人静岡県型枠工事業協会に名称変更】
今年4月に「一般社団法人静岡県型枠工事業協会」が法人化し名称を変更した。2023年に静岡県型枠工事業協会との融合を果たし、日本型枠工事業協会・静岡支部として大幅に会員を増やし活動をしてきたが、更なる組織拡大と成熟を見据えた船出となる。小口桂太郎理事長は、「法人化を実現するための準備に半年近く時間を要したが、様々な収益事業の確立に繋がる展開を目指していく。2025年は、本部である日本型枠工事業協会が設立50周年を迎える節目の年。団体として可能性・選択肢の幅を広げていきたい」と意気込みを語る。現在の会員数は31社。静岡県には50社近くの型枠工事会社が存在しており、どのような展開を見せられる注目である。


【団体を超えた交流を志向】
2023年8月には、県内の専門工事業団体10業種の団体が協力し、静岡県建設産業専門団体連合会を設立した。これにより他県に先行する形で、地方建設業の課題解決に向けた情報共有や業界のあるべき姿を熟慮し、適正かつ安定した請負金額の確立や、技能労働者の処遇改善を提案できるようになった。活動の一環として、県や市との定期的な意見交換を実施しており、現場で起きている声を届けている。協会内では、一級型枠施工技能士の資格を取得するために事前講習会を開くなどのサポートも徹底。会員企業だけでなく、協力会社や非会員も受け入れていることが好評を博し、回を重ねるごとに有意義な意見交換を実現しているという。「近年では、試験内容も変化しており、試験突破には早期からの対策が不可欠となっている。一昔前までは鉄筋コンクリートが多かったが、昨今では鉄骨工事が主流を占めるなど変化が起きている。会員企業には、型枠の醍醐味を知ってほしいので、この部分は引き続き注力していきたい」と思いを述べる。会員同士では親睦を深めるため、年に2回のゴルフコンペも開催。近年では、神奈川・山梨・東海など近県の支部からの参加も増えており、団体を超えた交流も志向している。

【標準見積書の駆使を目指す】
「同じ型枠業界でも県内には、東・中・西部の地域で経営スタンスに違いもあるので、団体として調和の取れた舵取りを心掛けたい」と小口理事長は見立てを語る。特に社員として職人を雇用する形か、受注後に協力会社に依頼するスタイルかで分かれる傾向が強く、「正直、バランスある組織運営に苦心している」と本音も漏らす。当面の目標は、「静岡県鉄筋業協同組合のように、当会員も法定福利費を明示した標準見積書を駆使できるようになること」。静岡県鉄筋業協同組合では、國井均理事長を中心に組織内で何度も勉強会を開催し、徐々に知識の習得・定着を進めた経緯がある。見積書の活用により、元請け企業に対して論理的な説明を可能にし、利益を重視した事業展開に挑戦したい。しかし、会員全体で取り組まなければ、単価の安定化に繋げることは難しい。トップとして目指すべき先と客観的な現実とのギャップで悩む時間も増えたが、「今できる最善策に取り組むのが私の役割」と常に前だけを見る姿勢が印象的である。


【過去の経験を協会に活かす】
小口理事長は、自身が社長を務める小口工務店(静岡県藤枝市)で、経営者として社内の職人を7~8人から18人に増員するなど、会社の規模を拡大した経歴を持つ。創業者である父は、社内外の全てを自身が把握しなければ気が済まないタイプだった。新卒で入社以降、手堅い経営手法を学ぶ反面、「信頼できる職長を育成し、ある程度は任せるスタンスに変えなければ、今以上の成長は見込めない」と気付き、早期に決行できたことが現在に繋がっているという。「全ての職人が図面を読み解き、加工図を書ける状態まで、社員の水準を上げてみせる」。従来からの「職人は見て覚えろ」という体制からの脱却を果たし、現場では若手社員も生き生きと働ける環境を提供できている。この貴重な経験を団体発展のために、どのように反映できるかも興味深い点である。

【専門工事会社としての団結を強みに】
今年度は、「静岡県建設産業専門団体連合会が請け負った業務を、当協会が率先してサポートできる仕組みを作り、県全体の専門工事業者を底上げすることに繋げたい」と展望を述べる。他県では職業訓練や対外的なコンテストにも積極的に出場する団体もあり、同様の機会にも参加し組織内を活性化する意向も強い。「まずは、当協会および型枠工事の存在を知って頂くことを最優先事項に、型枠の魅力・醍醐味などを伝承する準備を整えたい」と先を見据える。県内では、各団体との繋がりを通して多くの専門工事会社が、最先端の情報を共有し合う状況を作ることができた。「主役は現場で汗を流す私たち専門工事業者」。静岡からの変革が全国に波及し始めれば、建設業界に新たな選択肢が生まれる可能性は高まるはずだ。


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この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。