静岡市造園緑化協会
更新日:2025/7/9
【新たな打開策を見出す】
昨年5月に開催した静岡市造園緑化協会の定例総会で、森康博会長(森造園・代表取締役)が再選を果たした。会員からの総意により、来年5月までの任期を全うすることになった責務。森会長は、「今なお大きなプレッシャーの中で模索を繰り返しているが、新たな打開策が見出せるよう積極的な変化を心掛けたい」と意欲を示している。
協会としては、安全・技術向上を目的にした安全パトロールや街路樹管理技術研修会の他、日本平動物園の花苗植栽作業、あさはた遊水地クリーン作戦、園芸市への参加などのボランティア活動を主体に活動している。森会長は「現在、公園街路樹等の年間管理など、行政に対する要望を重視しているが、引き続きスムーズな連携を実現していきたい」と意気込みを語る。近年では、一般社団法人グリーンパークあさはたの構成団体として、あさはた緑地公園を管理する際も、会員内で役割分担をして芝刈りや樹木剪定に取り組むなど、これまでにない経験も蓄積できているようだ。また、静岡市内、全小中学校の樹木健全度調査業務も協会で実施している。


【最優先事項は後進の育成】
森会長は、喫緊の課題を「若手が極端に少ない人手不足」と即答する。「現状では、協会のメンバー同士の助け合いで成り立っている部分が大きいが、この状態もいずれは行き詰まりを見せ始めるはずだ。長期的な視点も必要になるので、業界全体を見渡した対策を取りたい」と見立てを語る。造園工事の醍醐味を、森会長は「アートにも匹敵する完成後の見栄えの良さと、それを感じ取ったお客さまから頂く感謝の言葉」と即答する。この経験だけは何物にも替えられないようで、同じような体験・感動を次世代に継承していくためにも「後進の育成を最優先にした組織運営に重点を置く」と先を見据える。会員同士は、同業者でライバルとしての側面も持つが、協会として活動する際は、即座に会員36社が一致団結する様子を見せる。常日頃から「共に造園業界を良くしていこう!」という共通認識を基に行動できている点が、何よりのアドバンテージとなっている。


【「空き家のお庭点検」を基軸に】
静岡市と提携する「空き家のお庭点検」では、市内にある長期で手入れの出来でいない空き家の庭の管理を、持ち主に替わり適切にサポートするサービスを実施している。同事業は好評で、1年目は2回ほど無料点検できることからも、常に一定以上の応募者数を獲得。森会長が「地道だがこのような地域貢献に繋がる交流が、次の展開に続く突破口になるはず」と語る通り、緑豊かな住み良い街づくりを手掛けるには、気の遠くなる程の作業が必要だが、それを経た達成感は唯一無二の体験に変換可能だと想像できる。


【現状維持と認知度向上を】
森会長は今後の目標を「現状維持と言わざるを得ない」と明言する。「何か特別なアクセントを付けなければ、生き残れないことは理解している。しかし、客観的に分析すると今の状態を保つだけでも大変な作業になることも紛れもない事実。この現況を理解した上で、協会として会員企業の仕事を増やす努力を続けていく」と冷静に状況判断する姿も印象的だ。筆者が森会長に、今回の取材を受けて頂いた理由を聞くと、「これからの時代、若手に入職して貰うには、ウェブ媒体での露出が重要な鍵になると肌感覚で理解しているから。協会としての活動を周知していくため、引き続き積極的な認知度の浸透を図っていく」と決意を新たに述べる。この10年で会員企業である経営陣も顕著な若返りを見せており、協会内は常に活気に満ち溢れている。森会長が率いる静岡市造園緑化協会は、少しずつだが良き方向に変化を始めている。

この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。