クラフトバンク総研

横浜建設業協会

更新日:2025/6/2

【人手不足・高齢化に対応する】

 2024年5月に開催した横浜建設業協会の通常総会にて、新会長に福嶋隆太郎氏(信友建設・代表取締役)が就任した。会長に就いた直後は、「気持ちの大部分を不安が占めている」と話す福嶋会長だったが、現在は「横浜市の公共工事の受注機会確保をベースに、会員企業の技術育成、雇用拡大、市民の安全・安心を守るための活動に全力を尽くしている」と力を込める。この数年で明確に変わったのは、若年層の人手不足と就労者の高齢化が加速化したこと。専門工事業者の事業承継も困難な中、「協会としても若者・未経験者を業界に流入するための施策を打つ必要がある」と課題を挙げる。現代は選択の自由があり、多様性を前提とした時代。2024年4月からは残業上限規制の罰則化も適用され、企業側は決まった時間・単価・労力で生産性を上げる必要に迫られている。団体のトップとして、福嶋会長がどのような舵取りを見せるか注目である。

【東京に次ぐ近代都市として】

 福嶋会長は、「横浜市は東京都に次ぐ近代都市。これからインバウンドも増える状況の中、世界に通用する魅力的な街づくりを始めるには、まず公共事業における構造物の構築と、インフラ機能の保全がポイントになる。当面はこの両軸による展開を見せていきたい」と見立てを語る。現在地は、これらを実現するための土台作りに注力する時期。未経験者だけではなく、性別・国籍を一切問わない受け入れ態勢を整えることで、選ばれる職種になる準備を進める方針を固めている。

発注者である横浜市は、今年から完全週休2日の促進に舵を切った。公共工事がこれだけの決断をしたことに対し、「当然のごとく、業界団体・企業もこれに呼応しなければならない。早期に少人数でも成果が出る仕組みを作り、横浜市の工事を突破口にした流れを民間工事にも繋げたい」と展望を述べる。「時代を憂い嘆くのは容易なこと。私たちは団体として、継続的に若手入職者を増やすため、育て方や迎え入れ方も工夫したい」と話す眼差しは真剣そのものである。

【ビッグイベントを起爆剤に】

 横浜建設業協会では、2024年に「未来創造委員会 EXPO 2027」を立ち上げた。2027年に開催する「GREEN×EXPO 2027(2027年国際園芸博覧会)」をサポートするための組織であり、このイベントを起爆剤に市内の更なる活性化を図るために創設。20年・30年先の社会を担う大学生や若手会社員などを巻き込み、新たなアクションに繋がる契機になるよう積極的な働きかけを見せる。「建設業者が簡単にインフラ整備を実施していると考えている方も多い印象だが、私たちの仕事は状況次第では命を賭けて必要のある重大な責務を担う現実がある。このギャップを少しでも埋めるために、まずはEXPOのような大きなイベントを基軸に、旧来からのイメージ脱却を進めていきたい」と意気込みを語る。右肩上がりが当然の時代から全体のパイは限られ、縮小を止めながら生き残りを目指すかに時代は変容した。その中でも重要な鍵となり得るのは、「DXの活用」と分析。事務作業の簡素化や労働環境の改善にIT化は必須であり、今後は時間という有限資産を最大限に駆使するための過程が明暗を分けそうだ。

【建設業を「持続可能産業」に】

 昨年に発生した能登半島地震後は、協会内で組成する「防災作業隊」の15社が5月末までに合計22回に渡り、現地で水道施設の復旧作業に従事するなど、災害救助に貢献する姿が見られた。「時代がどのように移り変わっても、天変地異から逃れることはできず、緊急時にこそ犠牲を顧みず、現場に駆け付けるのが建設業者。当協会としては、現段階のうちに恒久的にインフラを整備し、事前防災の体制を万全にする必要がある」と覚悟を示す。様々な規模の会員企業が所属する中、「まず全ての情報をヒアリング後に精査し、最後は責任を持って私自身が決断する」という福嶋会長のスタンスは会員からも厚い信頼を寄せられており、協会内には一体感が溢れている。目下の課題は、「これまでの歴史で培った信念・知見を、次世代に引き継ぎ、現場と雇用を守り続ける基盤を形成すること」。不安定な世界情勢により、建設資機材の高騰なども続くが、「建設業は、未来を創造する魅力的な仕事。どのような状況下でも、建設業に携わる喜びを忘れず、難局打破を続けたい」と率直に思いを述べる。横浜の都市機能を未来に継承するためには、後継者育成が急務である。地元横浜から建設業を「持続可能産業」として定着させるため、今後も横浜建設業協会は、あらゆる物事に対して最善を尽くしていく。

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