「すべては友人のために。」株式会社コラボハウスの家づくり
更新日:2026/1/14
▼目次
- 1 2008年創業、設計と施工のプロが作った住宅会社
- 2 打ち合わせに集中できる「スタジオ」と保育士の存在
- 3 住宅営業マンが一人もいない理由
- 4 「バトンリレー」が生む情報の乖離を防ぐ
- 5 宇宙工学から鉄鋼メーカーのエンジニアへ
- 6 バックパッカー時代の経験が仕事の原動力に
- 7 戦略コンサルタントへの転身とデータサイエンス
- 8 「データの限界」と人間による意思決定の価値
- 9 突然の社長就任と組織の現在地
- 10 注文住宅の減少という逆風下でのマーケティング成功
- 11 SNSを主軸としたデジタル集客戦略
- 12 生成AIを活用したコンテンツ制作の効率化
- 13 遠隔カメラとタブレットによる施工管理のDX
- 14 「全ては友人のために」という行動指針
- 15 ミッション「あらゆる場所にファンを」に込めた意味
- 16 「ネクストローカル、ニューライフ」で地方を彩る
- 17 瀬戸内コモンズ構想と関係人口の創出
- 18 愛媛大学との産学連携と未来の建築家育成
2025年10月5日(日)15:00~15:55
株式会社コラボハウス 代表取締役・松坂 直樹さん
2008年に愛媛県松山市で創業した建築設計・施工会社、株式会社コラボハウス。「設計士とつくるデザイナーズ住宅」をコンセプトに、完全自由設計の注文住宅を手がけています。一般的な住宅メーカーのようにモデルハウスや営業担当を置かず、設計士が最初の打合せから設計・現場まで一貫してお客様に寄り添う体制を整えている点が大きな特徴です。異業種から転職し、住宅業界での経験はなかったという松坂社長。様々な経験を積んできたからこそ見えてきた課題、そして今後の目標などを語っていただきました。
2008年創業、設計と施工のプロが作った住宅会社
クラフトバンク田久保(以下、田久保):まずは、コラボハウスがどのようなお仕事をされているのか、お聞かせいただけますでしょうか。
松坂直樹さん(以下、松坂):コラボハウスは愛媛県松山市で2008年に創業しました。創業者は元々設計畑の方と施工管理側の方で、お二人で共同創業された会社です。今期で17期目に突入しました。
クラフトバンク津吉(以下、津吉):業種としては、どのような形態になるのでしょうか。
松坂:新築の注文住宅を手がける会社です。拠点は今、6府県で13のスタジオを展開しています。今年はさらに4店舗の出店を決めており、それが進むと9府県17スタジオを展開する会社になっていきます。
打ち合わせに集中できる「スタジオ」と保育士の存在
田久保:「スタジオ」というのは、具体的にどのような場所なのですか。
松坂:お客様をお迎えして、一緒に家づくりをする打ち合わせの場所を、私たちはスタジオと呼んでいます。メンバーとしては設計士のほかに、保育士も正社員として在籍しています。
津吉:保育士さんが全スタジオにいらっしゃるのですか。
松坂:全スタジオにいます。家づくりの打ち合わせに集中していただくために、小さなお子様連れのお客様に対しては、保育士がお子様をお預かりして一緒に遊ぶということを全店で行っています。
住宅営業マンが一人もいない理由
田久保:コラボハウスのコンセプトとして「設計士とつくるデザイナーズ住宅」というものがありますが、営業の方は一目もいらっしゃらないと伺いました。
松坂:私たちは住宅営業がおらず、設計士が営業の役割も全て一貫して行う仕組みにしています。これは業界やお客様の情報収集のあり方が変化していることが大きな理由です。
田久保:通常、ハウスメーカーさんだと立派なモデルハウスがあって、そこに住宅営業の方がいらっしゃいますよね。
松坂:それが完成されたビジネスモデルではありますが、一方で課題もあります。今のお客様はSNSやYouTubeでルームツアーや施工写真を事前に見て、良いところも悪いところも全て情報を集めてから来られます。そうなると、これまでの住宅営業に求められていた役割が少しずつ変わってきていると感じるのです。
「バトンリレー」が生む情報の乖離を防ぐ
津吉:「建てたい家を建てる」という本質に立ち返った時に、営業マンがいないメリットは何でしょうか。
松坂:通常、住宅営業の方がお客様と接して、その後ろに控えている設計士に情報を渡すという「バトンリレー」が発生します。しかし、このリレーの過程でどうしても必要な情報が漏れてしまうんです。
田久保:設計士さんが直接お客様の顔を見ていないからですね。
松坂:設計士はお客様がどういう思いでその間取りを希望されたのか、十分には理解できません。そのまま図面を起こして引き渡しになった時に、「営業さんに言っていたことと少し違う」ということが起きてしまう。だったら最初から設計士が最後まで担当した方がいい、という思いでこの形になりました。
宇宙工学から鉄鋼メーカーのエンジニアへ
津吉:松坂さんは建設業界の中ではかなり珍しい経歴をお持ちだそうですが。
松坂:大学は工学部の機械航空工学科で、航空や宇宙関係、機械工学を専攻していました。九州大学で学んだ後、JFEスチールという鉄鋼メーカーにエンジニアとして入社しました。
田久保:そこではどのようなお仕事をされていたのですか。
松坂:福山や倉敷にある製鉄所で製造技術開発をやっていました。その後、インドに新しい工場を立ち上げるプロジェクトがあり、スーパーバイザーとして工場の立ち上げ支援のために現地へ行きました。
バックパッカー時代の経験が仕事の原動力に
津吉:なぜ航空宇宙から「鉄」の世界に進もうと思われたのでしょうか。
松坂:学生時代にバックパッカーをしていて、エジプトに行った時の経験が大きいです。5歳や6歳くらいの子供たちが観光客からお金を奪おうとしているのを目の当たりにしました。
田久保:その光景を見て、何を感じられたのですか。
松坂:彼らにお金をあげるのではなく、国がしっかり発展していくことに日本のエンジニアとして貢献できないかと考えました。社会インフラを支える仕事、それなら鉄鋼メーカーだと考えたのがきっかけです。
戦略コンサルタントへの転身とデータサイエンス
田久保:インドでのプロジェクトを終えた後は、どのようなキャリアを歩まれたのですか。
松坂:帰国後に「やりたいことをやり切った」という燃え尽き症候群のようになりまして。その時に出会ったのが、当時バズり始めていたデータサイエンスの世界でした。
津吉:そこから戦略コンサルタントになられたのですね。
松坂:外資系コンサルティング会社のアクセンチュアに入社しました。統計解析や機械学習を学び直し、人生で一番勉強した時期かもしれません。あらゆる問題解決にデータを使いたいと考え、コンサルティング業界に身を投じました。
「データの限界」と人間による意思決定の価値
田久保:データサイエンスの知見を活かして活躍されていた中で、なぜ建設業、それもコラボハウスだったのでしょうか。
松坂:一言で言えば「データの限界」を知ったからです。数ヶ月かけて分析して出した結論が、「10分考えれば分かること」だったり、結局は意思決定の「安心材料」として使われるケースが多いと感じたんです。
津吉:データは過去の蓄積でしかなく、新しいものは生み出せないと。
松坂:データで最適化はできても、クリエイティビティや新しいことは生み出せません。人間がやるべき仕事は、これまでにない新しいことへの意思決定や創造性にある。そう確信したタイミングで、コラボハウスへの入社を決めました。
突然の社長就任と組織の現在地
田久保:コラボハウスに入社されたのは2024年の10月だそうですが、入社とほぼ同時に代表取締役に就任されたのはなぜですか。
松坂:元々は創業者の二人が代表を続ける前提でしたが、お一人が辞められることになり、新しく来た私に任せてみようということになりました。インドの時もそうでしたが、抜擢されるタイミングがいつも急なんです。
津吉:現在、組織としてはどのような規模になっているのでしょうか。
松坂:グループ全体で約140名のスタッフがいます。私が今目指しているのは、従業員全員が「コラボハウスで働いている」と周囲に胸を張って言える会社にすることです。
田久保:地方の会社として、知名度や環境面での課題もまだあるということですね。
松坂:四国の会社として全国的な知名度はまだこれからですし、労働環境や福利厚生も含めて改善すべき点は多いです。家族や親戚から「いい会社に入ったね」と応援してもらえるような会社にしていきたいと考えています。
注文住宅の減少という逆風下でのマーケティング成功
津吉:社長に就任されて1年弱。現在、経営面で直面している悩みなどはありますか。
松坂:悩みしかありませんが、1年前は特に集客が課題でした。地方では新築の注文住宅を建てるお客様自体が減っています。これまでと同じアプローチでは来場数も減っていく一方でした。
田久保:その課題に対して、どのような対策を打たれたのですか。
松坂:私はコンサル時代にマーケティングもやっていたので、基本に立ち返って一つずつ施策を打っていきました。その結果、今期は集客が前年比で30%増加しました。
津吉:30%増はすごい数字ですね。集客が解決すると、次はどのような課題が出てくるのでしょうか。
松坂:次は受け皿となる従業員の問題です。集客が増えても対応しきれない、あるいは業界全体の課題でもありますが、長期的に働いてもらうための採用と定着が今の大きな課題です。
SNSを主軸としたデジタル集客戦略
田久保:集客の要となっているのは、やはりデジタル活用なのでしょうか。
松坂:今、集客の最大の軸はSNSです。Instagram、TikTok、YouTubeなどで発信しており、お問い合わせもSNS経由が最も多いです。
津吉:コンテンツを継続的に配信するのは大変な作業だと思いますが。
松坂:めちゃくちゃ大変です。専門の撮影部隊や制作・配信チームを置いています。更新頻度が落ちるとユーザーは離脱してしまいますし、再投稿ばかりでもダメです。常に新しい情報を週3回ほどの頻度でお届けし続けています。
生成AIを活用したコンテンツ制作の効率化
田久保:SNSのコンテンツ制作において、AIなどの最新技術も活用されていると伺いました。
松坂:ルームツアー動画を撮る際の台本作成などに生成AIを使っています。情報を渡すとベースの台本を作ってくれるので効率的です。また、広告のキャッチコピーのアイデア出しもAIと壁打ちしながら決めています。
津吉:制作の全工程をAIで行う試みもされているのですか。
松坂:ランディングページ(LP)の制作をAIで完結できないかチャレンジしています。ターゲット選定から構成、コーディングまでをAIで行うことで、通常2ヶ月かかる工程を1週間程度に短縮できる可能性があります。
松坂:まだ技術的な限界はありますが、技術が成熟してくればより本質的なクリエイティビティに人間が集中できるようになると考えています。
遠隔カメラとタブレットによる施工管理のDX
田久保:施工現場のデジタル化についても教えてください。
松坂:大きく二つあります。一つは遠隔カメラの設置です。各現場にカメラを置き、現場監督がわざわざ行かなくても進捗状況をリアルタイムで確認できるようにしています。
津吉:現場監督さんは複数の現場を掛け持ちされるので、移動時間の短縮になりますね。
松坂:もう一つは、案件管理の完全システム化です。現場の進捗状況を全てタブレットで入力し、デジタル上で一元管理しています。これにより、情報の抜け漏れを防ぎ、効率的な管理が可能になっています。
「全ては友人のために」という行動指針
田久保:社内の仕組み作りだけでなく、定着のための人事制度も刷新されたそうですね。
松坂:長く働いてもらうためのキャリアパスを明確にしました。等級制度や報酬制度を整え、透明性のある評価ができるようにしました。まだ道半ばですが、日々アップデートしています。
津吉:そうした制度の根底にある、コラボハウスのカルチャーとはどのようなものですか。
松坂:私たちの行動指針は「全ては友人のために」です。目の前のお客様が本当に大切な友人だったとしたら、どのような行動を取るか。それを全社員が常に考えています。
田久保:無理な契約を迫ったり、後から高額なオプションを積んだりすることは、友人相手にはしないはずだということですね。
松坂:そうです。本当にお勧めできるものは勧め、やめた方がいいものははっきりとそう言う。引き渡し前に一緒に家具を選びに行ったり、似顔絵をプレゼントしたり。これらは制度ではなく、社員がお客様を友人だと思っているからこそ生まれる行動なんです。
ミッション「あらゆる場所にファンを」に込めた意味
津吉:コラボハウスが掲げるミッションについて詳しく教えていただけますか。
松坂:「あらゆる場所にファンを」というミッションを掲げています。この「ファン」には二つの意味があります。一つは「FUN(楽しい・喜び)」、もう一つは「FAN(応援してくれる人)」です。
田久保:お客様に喜んでいただき、かつ応援してもらえる存在になりたいということですね。
松坂:注文住宅は一生に一度の買い物です。その中で、お客様に心から「コラボハウスで建てて良かった」と言っていただける、愛されるファンを増やしていきたい。それを全国に広げていきたいと考えています。
「ネクストローカル、ニューライフ」で地方を彩る
田久保:ビジョンの「ネクストローカル、ニューライフ」についても伺えますか。
松坂:地方での注文住宅は減少傾向にあります。そこで起きているのが、値引き合戦や性能合戦による業界の疲弊です。私たちはデザインの力で街の魅力を高め、地方の暮らしに一石を投じたいと考えています。
津吉:「地方だから」というネガティブなイメージを払拭したいと。
松坂:はい。「ローカル」という言葉に寂しい印象を持つのではなく、私たちが新しい地方の暮らしのあり方を定義し、発信していく。「ここに住みたい」と思える人を増やし、街全体を盛り上げていくのが私たちのビジョンです。
瀬戸内コモンズ構想と関係人口の創出
田久保:街を盛り上げるために、具体的に検討されている構想はありますか。
松坂:「瀬戸内コモンズ」という構想があります。しまなみ海道などの豊かな観光資源がある場所に、宿泊施設(ビラ)などを作り、新しい人の流れを作りたいと考えています。
津吉:移住だけでなく、期間を限定した滞在などの新しい形ですね。
松坂:そうです。今の移住のイメージは「自給自足」などの極端なものが多いですが、もっと多様なあり方があるはずです。ただ、これを一社でやるのは不可能なので、自治体や地域の会社を巻き込み、NFTなどを活用した共同所有の仕組みなども検討しています。
田久保:建築という技術を使って、地域のインフラや人の動きそのものをデザインしていくのですね。
愛媛大学との産学連携と未来の建築家育成
津吉:最後に、愛媛大学との産学連携についても伺いたいのですが、ネーミングライツを取得されたそうですね。
松坂:はい。2025年4月から愛媛大学の「グリーンホール」が「コラボハウスホール」になります。実はこれまで愛媛県には、建築士資格を取得できる国立大学の学部がなかったんです。
田久保:地元で建築家が生まれにくい環境だったのですね。
松坂:それが来年から建築学コースが新設され、一級建築士を目指す学生が愛媛から輩出されるようになります。地元で育った建築家たちの受け皿となり、彼らと一緒にこの街を彩っていく。そんな未来を今から楽しみにしています。
津吉:学生さんたちと実習や共同研究を通じて、新しい未来を創っていく素晴らしい取り組みですね。
■株式会社コラボハウス https://collabohouse.info/
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