クラフトバンク総研

アスリートのために「感動のフィールド」を創る~長谷川体育施設株式会社

更新日:2026/1/14

2025年11月16日(日)15:00~15:55
長谷川体育施設株式会社 執行役員企画部長 佐々木春年さん

スポーツ施設の建設を専門とする、東京都世田谷区の長谷川体育施設株式会社。陸上競技場、野球場、サッカー・ラグビー場、テニスコート、そして近年人気が高まっているスケートボード場まで、多彩なアスリートたちのフィールドを支え続け、昨年、創業75周年を迎えました。番組では、競技場建設の裏話や、9月に開催された「東京世界陸上」のエピソード、さらに運動場における猛暑対策など、たっぷりとお話を伺いました。

■長谷川体育施設株式会社 https://hasetai.com

屋外スポーツ施設建設に特化した事業展開

クラフトバンク金村剛(以下、金村):まず初めに、長谷川体育施設株式会社がどのようなお仕事をされている会社なのか教えていただけますでしょうか。

佐々木春年さん(以下、佐々木):主に屋外のスポーツ施設の建設を手掛けております。学校のグラウンド、陸上競技場、野球場、サッカー場、テニスコートなどのほか、最近ではアーバンスポーツと言われるスケートボードパークなども手掛けています。

金村:野球場やサッカー場だけでなく、学校のグラウンドも手掛けていらっしゃるのですね。都内の学校だと土のグラウンドもあれば、芝生が張ってあるところもありますが、そういったものも長谷川体育施設さんで手掛けておられるのでしょうか。

佐々木:そうですね。天然芝か人工芝かは場所によりますが、どちらも手掛けております。

職人技が光るスケートボードパークの施工

金村:最近はスケートボードパークも手掛けていらっしゃるとのことですが、施工が非常に難しそうです。あのコンクリートの曲線、いわゆる「R」の部分はどのように作っているのですか。

佐々木:Rの部分は型枠を組んでいるわけではないのです。コンクリートを吹き付けたりして、それを手作業で、左官の技術で慣らしていくのが基本的なやり方になります。

金村:あの広いパークの曲線を、すべて人の手で仕上げているのですね。建設に近いお仕事をさせていただいている身からしても、どうやって作っているのか不思議でしたが、やはり高い技術が必要なのだと感じます。

佐々木:そうですね。Rの部分については、まさに左官職人の技術で仕上げていく形になります。

天然芝の育成と工期に合わせた施工方法

金村:芝生についても伺いたいのですが、天然芝を張る際はどのような手順で行うのでしょうか。

佐々木:色々とやり方はありますが、種からまいて育てる方法と、どこかで育てた芝を切り取って持ってくる「貼り芝」という方法があります。

金村:種からまいて育てることもあるのですね。芝生が育つまでにはどれくらいの期間がかかるものなのですか。

佐々木:種からだと1年くらいはかかるかと思います。ですので、工期が短い場合は貼り芝という形を取ることが多いですね。お客様のニーズや工期に合わせて、最適な方法を選んでいます。

サッカー場の芝生に見える「縞模様」の秘密

金村:サッカー場の芝生で、色が濃い部分と薄い部分が段々になっているのをよく見かけますが、あれはどうしてあのような色に見えるのでしょうか。芝の種類が違うのですか。

佐々木:いえ、種類が違うわけではありません。芝を刈る方向によって、そのように見えているのです。

金村:刈る方向だけであんなに綺麗に色が変わるのですね。まるで定規で引いたように色が違って見えますが、これはデザイン的な意味合いなのでしょうか。

佐々木:デザイン性もありますが、競技をする人や審判にとってメリットがあります。副審がオフサイドなどを判断する際の目安になり、サッカーがしやすくなるという実用的な側面があるのです。

陸上競技場における全天候型ウレタン舗装の特性

金村:陸上競技場のトラックについても教えてください。あの赤茶色のような、レンガ色の舗装にはどのような素材が使われているのでしょうか。

佐々木:一般的に見られるのはウレタン舗装ですね。弊社では全天候型のウレタン舗装を扱っております。

金村:全天候型ということは、雨が降っても競技ができるということですね。雨の日でも選手が滑らずに走っているのを見て不思議に思っていたのですが、素材に秘密があるのでしょうか。

佐々木:表面を「エンボス仕上げ」といって少しツブツブの状態にしています。これによって雨の日でも滑りにくくなっているのです。また、クッション性が高まるという効果もあります。

トラックの色が選手に与える心理的効果

金村:陸上トラックといえば赤色のイメージが強いですが、最近は青色のトラックも見かけます。色によって違いはあるのでしょうか。

佐々木:レンガ色、いわゆる赤色は気持ちを高揚させると言われています。一方で、ブルーのトラックは心を落ち着かせる効果があると言われています。

金村:心理的なモチベーションの部分で色を選んでいるのですね。テニスコートなどでも色の違いを見かけますが、そちらはどうでしょうか。

佐々木:テニスコートの場合は、ボールを視認しやすくするためにブルーを採用することが多いですね。黄色や緑色のテニスボールと対照的な色にすることで、ボールが見やすくなるという利点があります。

地域ごとに異なる色彩の選択とニーズ

金村:トラックやコートの色は、お客様の好みで選ばれることが多いのでしょうか。

佐々木:そうですね。視認性の向上といった実用的な理由のほかに、その地域にあまりない色にしたいというご要望もあります。「レンガ色が多いから、この地域ではブルーにしよう」といった形で選ばれるお客様もいらっしゃいます。

金村:地域性や周囲の環境との兼ね合いもあるのですね。建設だけでなく、そうした色彩による環境づくりも重要なお仕事なのだと感じます。

佐々木:はい。競技のしやすさとデザイン性の両面から、最適なご提案をさせていただいております。

自社製品「レジンエース」による国内トップシェアの確立

金村:ホームページを拝見すると、施工だけでなく自社で素材や製品も手掛けていらっしゃいますね。

佐々木:陸上競技場の舗装材として「レジンエース」という自社製品を持っております。これは弊社のメインの商品で、全国の陸上競技場のトラックにおいて約40パーセントのシェアを占めております。

金村:40パーセントという数字は驚異的ですね。日本中の陸上競技場で、長谷川体育施設さんの製品が使われているということになります。

佐々木:おかげさまで、日本でトップクラスのシェアをいただいております。創業から75周年を迎えましたが、製品開発と施工の両輪で成長を続けてきました。

自治体や民間企業への柔軟な提案体制

金村:設計や施工についても、長谷川体育施設さんで一貫して手掛けていらっしゃるのでしょうか。

佐々木:自治体さんの仕事が多いので、基本的には弊社から「このような施設はいかがでしょうか」という提案をさせていただく形になります。一方で民間企業さんの場合は、設計から施工まで一括でお引き受けすることも増えています。

金村:自治体の案件と民間の案件で、関わり方が少し異なるのですね。

佐々木:そうですね。どちらの場合でも、長年培ってきたノウハウを活かして、最適なスポーツ環境をご提案しています。

35年にわたるキャリアと設計・営業の経験

金村:佐々木さんご自身は、入社されてからどのようなキャリアを歩まれてきたのでしょうか。

佐々木:入社してから今年で35年ほどになります。最初は設計部門に配属され、約19年間設計に携わりました。その後、営業を15年ほど経験し、今年から企画部という形で働いております。

金村:設計から営業、そして企画へと、現場からフロントまで幅広く経験されているのですね。ご自身が設計に携わったものが形になるのは、やはり嬉しいものですか。

佐々木:自分が書いた図面が実際の現場として形作られるのは、非常に感慨深いものがありますね。

施工後の施設が地域に親しまれる喜び

金村:ご自身が関わられた現場を、完成後に見に行かれることもあるのでしょうか。

佐々木:仕事柄、散歩をしていて公園があれば目につきますし、学校のグラウンドや競技場があれば気になって見に行ってしまいますね。完成した施設を市民の方やお客様がどのように使われているかを見るのは、やはり楽しみの一つです。

金村:ご自宅の近くにも、関わられた施設があるのですか。

佐々木:世田谷公園などは弊社で手掛けさせていただいたので、サッカー場やテニスコートをどのように利用されているか、散歩がてら見に行くことがあります。

今後の長谷川体育施設が目指す方向性

金村:今年から企画部を率いていらっしゃるとのことですが、どのような役割を担っている部署なのでしょうか。

佐々木:厳しい経済状況の中で、長谷川体育施設が今後どのような方向に進んでいくべきかを模索し、方向性を決めていく部署になります。

金村:野球やサッカーといったメジャースポーツだけでなく、時代のニーズに合わせた新しいスポーツ施設への挑戦も必要になってくるのですね。

佐々木:はい。創業以来の強みであるスポーツ施設づくりを軸にしながら、より使いやすく、より時代に求められる施設や工法を考えていかなければならないと思っています。

15年前から導入しているICT技術と自動追尾システム

金村:ここからは「デジタル建設ジャーナル」らしく、デジタルの取り組みについて伺います。ICTやDXについては、どのような取り組みをされていますか。

佐々木:弊社では15年ほど前から、トータルステーションによる自動追尾や、3Dのマシンコントロールを現場に導入しています。

金村:15年も前から導入されているとは、業界内でもかなり早い方ではないでしょうか。具体的にはどのように活用されているのですか。

佐々木:ブルドーザーなどの重機に取り付けて活用しています。これまではオペレーターが手動で高さを調整していましたが、自動で高さを変えながら土を慣らしていくことができるシステムです。

新技術導入における苦労と社内教育の徹底

金村:15年前だと、新しい技術を導入する際に現場や協力会社さんからの抵抗もあったのではないでしょうか。

佐々木:そうですね。最初は協力会社さんからの反発もあり、非常に苦労しました。これまでのやり方を変えることへの抵抗感はやはり大きかったです。

金村:その状況をどのように打破していったのですか。

佐々木:まずは自社の監督を40名ほど集めて、集中して研修を行いました。現場で協力会社さんと一緒にものづくりをする前に、まずは自社の人間がしっかりと使いこなせるように教育を徹底したのです。

現場管理ソフト「デキスパート」の活用と効率化

金村:現場の管理業務については、どのようなツールを使われていますか。

佐々木:主に「デキスパート」というソフトを使用しています。これも15年ほど前から取り入れています。

金村:かなり早い時期からソフトによる管理を推進されていたのですね。導入のきっかけは何だったのでしょうか。

佐々木:やはり残業時間を減らしたいという思いが強かったです。建設業界は残業が多くなりがちですが、特に若い人たちが離職してしまう原因の一つだと考えていました。業務を効率化して、負担を軽減することが大きな目的でした。

マイクロソフト「Teams」を活用した社内コミュニケーション

金村:社内のコミュニケーションや情報共有については、どのようなデジタルツールを使われていますか。

佐々木:マイクロソフトの「Teams」を導入しています。最近ではアンケートを取る際などにも活用しています。

金村:どのようなアンケートを実施されているのですか。

佐々木:就業状況についてのアンケートなどを匿名で実施しています。「残業が多い」「仕事量が多い」といった現場の本音を拾い上げるために活用しています。

金村:匿名であれば、よりリアルな声が集まりそうですね。

佐々木:はい。収集した結果を我々が分析して、今後の改善に反映させていく。働きやすい環境づくりのための重要なツールになっています。

デジタル化がもたらした採用活動への好影響

金村:働き方改革やデジタル化の取り組みによって、採用面での変化はありましたか。

佐々木:ここ数年、若手の採用に力を入れていますが、大きな効果が出ていると感じます。毎年10名前後の新卒採用を行ってきましたが、来年度は倍の約20名が入社してくれる予定です。

金村:20名の新卒採用は素晴らしいですね。学生さんにとっても、デジタル化が進んでいて働きやすい環境があることは魅力に映っているのでしょう。

佐々木:そう思います。若い世代は最初からデジタルに慣れ親しんでいますから、会社としてそうした環境を整えることは必須だと考えています。

AI技術を活用した技術継承とマニュアル化への期待

金村:将来的に期待しているデジタル技術などはありますか。

佐々木:AIには非常に注目しています。例えば「AIマニュアル」のようなものがあれば、若い社員が分からないことを質問した際に、施工の仕方をすぐに答えてくれるような仕組みが作れるのではないかと考えています。

金村:「背中を見て覚えろ」という従来の教育方法から、デジタルの力でスムーズに技術を継承していくということですね。

佐々木:はい。現場を理解した40代の中堅社員が、「ここにこれを使えるのではないか」といった提案をしてくれることも増えています。そうした現場の知恵をAIに蓄積させていければ面白いですね。

花王株式会社と共同開発した新製品「ルナクレイ」

金村:今月、新しい製品を販売されたと伺いました。どのような製品なのでしょうか。

佐々木:花王株式会社さんと協力して開発した「ルナクレイ」という製品を11月に発売しました。これは学校のグラウンドなどの土に混ぜることで、ぬかるみを抑制するものです。

金村:学校のグラウンドのぬかるみ対策ですね。私も子供の頃、雨上がりにスポンジで水を吸い取った記憶がありますが、あのような作業が減るということでしょうか。

佐々木:まさにそうです。水はけが非常に良くなるので、雨が上がった後にすぐにグラウンドが使えるようになります。後輩たちのために、ぜひ全国の学校に広めていきたい製品です。

人工芝の温度上昇を抑える「BEWシステム」

金村:地球温暖化の影響もあり、夏場のスポーツ環境は厳しくなっています。何か対策はされていますか。

佐々木:暑さ対策として「BEWシステム」というものを提供しています。人工芝の表面温度を抑制するためのシステムです。

金村:人工芝は夏場、かなり熱くなりますよね。

佐々木:はい。夏場は60度から70度まで上がることがありますが、このシステムで打ち水のような効果を与えることで、表面温度を半分近くまで下げることができます。

金村:半分まで下がるのはすごいですね。選手が安全にスポーツを楽しめる環境づくりには欠かせない技術です。

学校部活動の地域移行への支援と社会貢献

佐々木:これからの目標として、スポーツができる環境を維持していくことも大事だと考えています。今、中学校の部活動が地域移行するなど、環境が大きく変わろうとしています。

金村:先生方の働き方改革もあり、部活動のあり方が議論されていますね。

佐々木:そこで弊社として、アスリートの派遣などの支援ができないかと考えています。例えば弊社陸上部の選手が、シーズンオフに学校へ教えに行くといった形です。

金村:世界陸上に出場した中島ひとみ選手なども所属されていますよね。トップアスリートに直接指導してもらえるのは、子供たちにとって大きな喜びになりそうです。

スポーツを通じた「感動のフィールド」づくり

金村:最後に、佐々木さんや長谷川体育施設さんが目指す未来についてお聞かせください。

佐々木:弊社のスローガンである「感動のフィールドを」という言葉の通り、選手や観客の皆さんが感動できる舞台を作り続けていきたいです。

金村:ハードウェアとしての施設づくりだけでなく、そこで生まれる感動というソフトの部分も大切にされているのですね。

佐々木:はい。ものを作るだけでなく、スポーツを楽しみ続けられる環境を、デジタルや新しい技術も活用しながら支えていきたい。八代をはじめ、全国の皆さんに「ここを使いたい」と思ってもらえるような施設を提供し続けたいと思っています。

番組を聴くには・・・
・全国のコミュニティFM局(98局)でお聴きいただけます。
・一部の局ではインターネットでもお聴きいただくことが可能です。
詳しくはコチラ(放送局一覧・2025年4月現在)

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