クラフトバンク総研

日本一の花火のまち・秋田県大仙市で創業50年~興栄建設株式会社

更新日:2026/1/14

2025年6月29日(日)15:00~15:55

ゲスト:興栄建設株式会社 代表取締役・齋藤 靖さん

日本最高峰の花火大会「大曲の花火」で有名な秋田県大仙市で創業50年を迎えた興栄建設株式会社。「品質こそ我等が未来 コストは下げるためにある」の社是の下、秋田県内だけでなく、東京の衆議院会館、高輪ゲートウェイ駅なども手掛けてきました。番組では、大曲の花火実行委員長も務める齋藤社長に、鉄骨工事現場での作業ロボットなどDXの取り組み、そして地元への思いなどを語っていただきました。

地元の野球指導者・解説者としての顔

クラフトバンク中辻(以下、中辻)齋藤さんは地元では中学生や高校生の野球指導者をされていて、解説も務めていらっしゃるとか。

齋藤靖さん(以下、齋藤):中学と高校野球ですね。中学は地元の秋田県中学校総合体育大会の決勝戦などで解説をしています。高校野球はベスト8くらいになると、秋田朝日放送で放送されるので、地元の高校が出る地方球場での解説を担当しています。

クラフトバンク金村(以下、金村)放送には慣れていらっしゃるのですね。

齋藤:小学生の指導もしているので、教え子たちが高校生になって成長した姿を地方球場で見守るのは非常に楽しいです。親御さんや知人、友人からも反響があり、終わった後に「うちの子供を褒めてくれてありがとう」と言われることもあります。

鉄骨製作と建方を行う「ファブリケーター」

中辻:早速ですが、興栄建設さんについて、どのようなお仕事をされている会社なのか教えてください。

齋藤:メインは鋼構造物工事です。建築の鉄骨を製作し、現場に運んで組み立てる建方を行うのが主な仕事です。エリアは秋田県内だけでなく、仙台を中心とした東北地方、遠いところでは関東まで展開しています。

中辻:関東でもお仕事をされているのですね。

齋藤:地元を中心に、建築、土木、解体工事を行う総合建設業としても活動しています。従業員は現在140名ほどですが、そのうちの約半分、70名ほどが鉄骨製作に関わっています。残りの人員が総合工事や総務を担当しています。

東京のランドマークを支える実績

中辻:関東での実績として、東京の有名な建物を多く手掛けていると伺いました。

齋藤:衆議院議員会館や議員宿舎、最近では高輪ゲートウェイ駅、新宿バスタなども弊社の鉄骨で製作しました。大きな建物ばかりですね。

金村:高輪ゲートウェイ駅などは非常に複雑なデザインですよね。

齋藤:駅舎は非常に手間のかかる建物です。デザインが複雑で、作るのも大変でした。さらに駅の工事は建てる時間が決まっており、鉄道が止まっている夜中の3、4時間が勝負になります。

中辻:東京だと作業時間が本当に短いですね。

齋藤:新宿バスタも交通量の非常に多い場所での作業でしたので、制約が多かったです。超高層ビルも手掛けていますが、東京の建物はどれも簡単ではありません。

地域に根ざした戦略と運搬の課題

金村:地元の建物はデザイン的にシンプルなものが多いのでしょうか。

齋藤:そうですね。本当は地元中心でやりたいのですが、今は2024年問題などで運送も厳しくなっています。近場の建物をやるのが理想ですが、関東の建物のほうが規模が大きい。そのため、年に数件は関東や仙台の仕事を請け負わざるを得ない状況です。

中辻:メリットとデメリットの両方があるのですね。

齋藤:神奈川県の鶴見に関東営業所を置いて、所長を一人配置して営業活動をさせています。

金村:鉄骨を加工する会社を業界では「ファブリケーター」と呼ぶそうですね。

齋藤:建築鉄骨を加工している会社のことです。業界では「ファブ」と略して呼んでいます。

自社工場を持つ強みとコスト・工期管理

金村:高輪ゲートウェイ駅やバスタのような公共性の高い建物は、鉄骨のデザインを交えた構造も多いですよね。御社はその分野に強みをお持ちなのでしょうか。

齋藤:地元で展開している総合工事に関しても、鉄骨が絡む建物は弊社が強いと考えています。自社で工場を持っているので、コスト面でも工期面でも頑張ることができます。

中辻:やはり自社工場があるのは大きいですね。

齋藤:地元の工事が増えればいいと思っています。弊社は工場や倉庫といった建物のほうが得意ですが、実は大工、つまり木造工事の職人も社員として抱えています。

鉄骨屋が手掛ける住宅とリフォーム

金村:大工さんも正社員としていらっしゃるのですか。

齋藤:現在は7名います。そのため住宅も手掛けています。地元でもあまり知られていなくて、「鉄骨の大きな建物しか建てないのだろう」と思われがちですが、ホームページを見ていただければわかる通り、一般住宅やリフォームもやっています。

金村:総合建設業の中で、鉄骨だけでなく木造、RC、S造まで対応し、さらに職人まで抱えているのは全国的にも珍しいですね。

齋藤:大工さんまで抱えている地方のゼネコンは少ないかもしれません。そこは弊社の特徴の一つです。

橋梁やダム工事への新たな挑戦

金村:これから取り組んでいきたい分野などはありますか。

齋藤:今後は橋梁の仕事や、ダム関係の水門の機械保守、水門工事などにも力を入れていきたいと考えています。少しずつやり始めてはいるのですが。

中辻:なぜその分野なのですか。

齋藤:競争が少ないからです。建築も土木も、今は競争相手が非常に多い。建築コストが急激に上がり、この1、2年は物件数が動いていません。数年前と比べてコストが上がった分、建てるのを様子見したり規模を小さくしたりする物件が増えています。

金村:物件数が少ない割に競合が多いと、受注が厳しくなりますね。

齋藤:実績重視の、あまり競争のない分野に力を入れていくべきだと考えています。

実績を積み、競争のない市場へ

中辻:競争相手が少ないということは、それなりの技術や経験が必要な分野だということでしょうか。

齋藤:必ず実績を問われます。ここ数年で多くはありませんが、着実に少しずつ受注を重ねてきました。この部分をもっと強化したいです。

金村:未来に向けた種まきをされているのですね。

齋藤:人材の確保も重要です。建設業界全体で若い人が入りにくい業種になってきていますが、いかに人を集めて仕事を請けるかが大事になります。これからは外国人実習生の活用ももっと考えていかなければなりません。

女性社員の登用と現場環境の改善

中辻:人材確保については、女性の活躍も重要になりますね。

齋藤:女性社員を管理者として増やしていくことが非常に大事になると考えています。最近は新卒でも、若い男性より女性のほうが反応が良いこともあります。弊社にも最近、女性の管理者が数名入ってきました。

中辻:女性が入ることで、現場の雰囲気は変わりますか。

齋藤:非常に良くなりますね。現場の環境が改善されます。例えば、ピンク色のトイレを設置しなければならないといった配慮も必要になりますが、現場事務所が綺麗になったり、男性社員も気を遣うようになったりします。

金村:現場の雰囲気が変わるのは良いことですね。

齋藤:建設業は資格社会なので、段階を踏んで資格を取っていくことが大切です。その意味では女性に向いている部分もあると思っています。

齋藤さんのルーツとバブル時代の東京

中辻:齋藤さんが社長に就任されるまでの経緯を教えてください。

齋藤:弊社は昭和49年に創業し、昨年50周年を迎えました。父がもともと「興栄鉄工」という、鉄骨を中心とした会社を始めたのがきっかけです。私は高校、大学と工業系に進み、将来は後を継ぐのだろうと考えて、学生時代から建築の勉強をしていました。

中辻:大学卒業後はすぐに秋田に戻られたのですか。

齋藤:東京の構造設計事務所に5年いました。デザインではなく計算をする仕事で、この建物にどれくらいの地震が来たらどの部材を使えば耐えられるか、という構造計算設計をしていました。

金村:当時はどのような時代でしたか。

齋藤:ちょうどバブルの時代で、父から「早く戻ってこい」と言われ、5年勉強して今の会社に入りました。

鉄工から建設へ、両輪での歩み

中辻:お父様が作られた会社を引き継がれたのですね。

齋藤:私が入ったあたりから建設業にも力を入れ始め、社名を「興栄鉄工建設」に変え、今は両輪でいくということで「興栄建設」になりました。

金村:幼い頃からお父様の仕事を見て、自然と継ぐ意識が芽生えたのでしょうか。

齋藤:小さい頃から父親が関わっている建物を見て、自分も関わりたいという気持ちがあったのだと思います。建築の楽しさは、街のランドマークやシンボルになれることです。

中辻:自分が関わった建物がずっと残るのは嬉しいですね。

齋藤:テレビで高輪ゲートウェイ駅が出ると、社員には「俺が関わった建物だぞ」と子供たちに自慢しろと言っています。それが建設屋としての楽しさだと思います。

浅草の「金色のビル」を手掛けた過去

齋藤:実は私が東京で構造設計をしていた頃に関わった建物も結構あるのです。浅草にある、あの金色の雲のようなオブジェがあるビール会社のビルも、実は私が担当でした。

中辻:あの有名なビルを担当されていたのですか。

齋藤:いまだにあの建物がテレビに出ると、「俺が設計した建物だ」と言いたくなってしまいます。世界中の人があの前で写真を撮るような建物ですから。建築に関わっている喜びを感じる瞬間です。

金村:自分の実績が目に見える形であり続けるのは、素晴らしい仕事ですね。

出勤管理のデジタル化と指紋認証

中辻:ここからはデジタル化やDXについて伺いたいと思います。御社での取り組みはいかがでしょうか。

齋藤:まずは工数管理、日報関係のデジタル化を考えています。どうしても日報は手書きになりがちですが、ここを何とかしたいです。

金村:勤怠管理については何かされていますか。

齋藤:3、4年前から指紋認証を導入しました。以前はカードで打刻していましたが、本人の確認を確実にするために変えました。

金村:代わりの人が押すようなことを防ぐためですね。

齋藤:誰かに「押しといてくれ」と頼んだり、まとめて押したりすることがあったので、これではまずいと考えました。本人が来ていることを確実に把握できるようにしています。

CADの進化と一連のシステム化

金村:設計や製作の面でのデジタル化はどうですか。

齋藤:CAD化はかなり進んでいます。今はゼネコンさんから一連のCADデータをもらい、現場管理や出来高管理まで行えるよう、BIMやCIMといったシステムを導入して進めています。

中辻:最初から最後まで一貫して管理するのですね。

齋藤:ただ、最初から最後まで一つのシステムで流れているかというと、まだそこまではいっていません。いずれはそうなっていくと思いますが、時間がかかるでしょう。

金村:鉄骨製作の工程も自動化されているのでしょうか。

齋藤:CADデータからプログラムを流して、切断、穴あけ、溶接まで一連で流れるようにしています。部門ごとにはデジタル化されていますが、全体の連携をさらに強めたいです。

溶接ロボットの導入と職人の技

中辻:溶接についてはロボットを導入されていると伺いました。

齋藤:業界内でも進んでいますが、弊社は細かい部品まで溶接できるロボットも導入しており、業界の中でも先端をいっている自負があります。

金村:すべてロボットでできるのでしょうか。

齋藤:主要な部分、厚いところを何層も盛るような溶接はロボットで十分にできます。しかし、形が複雑なものや、細かい部品の取り付けは、どうしても人の手が必要になります。

中辻:ロボットが得意なところと、人がやるべきところがあるのですね。

齋藤:大きいところはロボット、細かいところは職人というグラデーションになっています。弊社は梁の溶接ロボットなども早い時期から導入してきました。働き方改革の影響もあり、夜間に人がいなくてもロボットが動いてくれるのは非常に効率的です。

建設DXの課題とソフトの互換性

金村:建築物は土木と違って、数センチのズレも許されない厳しさがありますよね。その中でのロボット活用には苦労もあるのではないでしょうか。

齋藤:ロボットで対応できない複雑な部分は、やはり溶接工という職人が永遠に必要になります。そこは人の手で続けていかなければなりません。

中辻:ソフトの互換性についてはどうお考えですか。

齋藤:一つのソフトで全員が共通して使えればいいのですが、今は各社バラバラです。業種も多岐にわたるため、電気屋、設備屋など、それぞれで決めていかなければならないことが多く、なかなか統一された流れになりにくいのが現状です。

金村:現場管理の面でも、決め事がなかなか進まないという悩みを聞きます。

齋藤:最近はどの物件も工期がずれ込んだり、決め事が遅かったりすることが増えています。図面にキャドのデータを反映してスムーズに進めたいのですが、業界全体の課題でもあります。

挑戦する姿勢と否定しない文化

中辻:新しいことへの挑戦について、齋藤さんはどのようにお考えですか。

齋藤:何事も挑戦してみることが大事だと思っています。挑戦してみなければ、良いか悪いかもわかりません。最初から否定してしまっては何も取り組めなくなります。

金村:とりあえずやってみる、ということですね。

齋藤:やってみてダメならやり方を変えればいい。何もやらないよりはずっといいです。それはすべての仕事に言えることではないでしょうか。

中辻:そのポジティブな姿勢が、会社の新しい挑戦を支えているのですね。

秋田・大曲の花火を世界へ

中辻:今後の目標について教えてください。

齋藤:冒頭でもお話ししましたが、地元の大曲の花火についてです。私は現在、実行委員長を務めています。3年後に100回大会を迎えるので、それを国際化させていきたいと考えています。

金村:大曲の花火は日本一、世界一とも言われますよね。

齋藤:昨年、カナダのモントリオールで開催された国際大会に初めて参加しました。優勝を狙って行きましたが、結果は銅メダルでした。100回大会に向けて、もう一度国際花火シンポジウムを開催したいと思っています。

中辻:世界中から花火関係者が集まるのですね。

齋藤:花火師さんや研究者が集まるサミットのようなものです。今年は中国で開催され、来年はスペイン、その次に大曲で開催できるよう動いています。大曲の花火をさらに世界へアピールしていきたいです。

日本の花火技術を次世代へ

金村:日本の花火と海外の花火では、やはり違いがあるのでしょうか。

齋藤:日本の花火は形や色、技術面で世界一です。ただ、海外の大会は曲に合わせてショーのように打ち上げる構成力が評価されます。そこを学びつつ、次は世界一を狙いたいです。

中辻:100回大会が本当に楽しみですね。

齋藤:大曲の花火は全国トップの28社が集まる大会ですし、内閣総理大臣賞がかかっているのは大曲と土浦だけです。日本最高峰の花火大会を、次の50年、100年に向けて盛り上げていきたいです。

金村:齋藤さんの情熱が、鉄骨の仕事にも花火にも注がれているのがよくわかりました。

興栄建設株式会社 https://www.koei-con.com/

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アーカイブ配信:https://audee.jp/program/show/300006512

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