クラフトバンク総研

地域密着の”電気のプロ”~株式会社キューケンシステム

更新日:2026/1/14

2025年8月3日(日)15:00~15:55

株式会社キューケンシステム 代表取締役・穴井憲一郎さん
熊本県合志市を中心に、大型ビルから一般家庭のコンセント交換まで大小関係なく対応する、地域密着の電気工事会社・株式会社キューケンシステム。「若者が達成感を味わえる建設業の形を見つけたい」と語る穴井代表。建設業に対する思いや、今後の展望などをたっぷりと伺いました。

ビルから一般家庭まで幅広く手掛ける電気工事のスペシャリスト

クラフトバンク中辻(以下、中辻)まずは会社について教えてください。キューケンシステムさんでは、どのようなお仕事をされているのでしょうか。

穴井憲一郎さん(以下、穴井):私たちは中小規模と言われるビルの建設における電気工事の一部を担当しています。それに加えて太陽光パネルのメンテナンス、さらには一般家庭のコンセント増設や移動、テレビの設置といった数万円単位の小さな工事まで幅広く手掛けています。

クラフトバンク田久保(以下、田久保)ホームページを拝見すると、防犯カメラの設置や最近話題のEVコンセントの工事なども掲載されていますね。

穴井:そうですね。電気自動車用のEVコンセントの設置依頼も非常に増えています。母体としてはビル建設の現場に入ることがメインですが、働き方の選択肢を増やすために、同じ電気業界の中でも分野を変えて一般家庭向けの工事も宣伝広告に力を入れて取り組んでいます。

「採用は集客」SNSで見せる、おちゃめな社長の素顔

中辻:ホームページのブログやSNSの発信にも、かなり力を入れていらっしゃいますね。特に採用に対して熱心な印象を受けました。

穴井:採用に関しても、基本的には求人の間口を常に広げておくことがベストだと考えています。最近流行のSNSでの集客も活用していますが、究極的には「採用も集客の一種」だと捉えています。自社がどのような会社なのかをオープンにしていくことが重要です。

田久保:インスタグラムを拝見すると、穴井社長がマリオやトイ・ストーリーの格好をされていたりと、非常にユニークな発信をされていますね。

穴井:あれは私自身も参加していますが、基本的には総務とSNSに詳しい若い社員の計2名が企画してくれています。私が伝えたイメージとは最終的に違う形のものが出来上がることが多いのですが、彼らが楽しくやってくれればそれが一番だと思っています。

異色の経歴を持つ若き創業社長の歩み

中辻:穴井さんはずっと電気業界にいらっしゃったのですか。これまでの経歴を教えてください。

穴井:電気の世界が一番長いのですが、実は大学を中退した後、最初はフルコミッションの営業会社に就職しました。どれだけ売って、いくら稼ぐかという完全歩合制の厳しい世界で、そこで営業の基礎や度胸を叩き込まれました。

田久保:そこからどのようにして建設業界へ進まれたのですか。

穴井:営業の後は議員秘書を経験しました。その後、父が創業した電気工事会社である九州電設株式会社に入社し、そこで10年ほど修行を積みました。もともと起業には興味があり、29歳の時に独立してキューケンシステムを立ち上げました。

60歳で大学生に。「生涯現役」を貫く父の教え

中辻:お父様も経営者とのことですが、穴井さんに与えた影響は大きいのでしょうか。

穴井:父は非常に勉強熱心な人で、今でも私にとって大きな指針です。驚くことに、父は60歳で社長から会長になったタイミングで、福岡大学に入学したんです。ずっと大学に行きたいという思いがあったようで、社会人枠で入学しました。

田久保:還暦で大学生というのは、なかなかできることではありませんね。

穴井:大学では経営学のサークルやベンチャー起業を目指す学生たちのグループに所属していたようです。そこで自分の経験を伝えながら、興味を持ってくれた学生に「うちで働いてみないか」と声をかけて、実際に優秀な学生を採用していました。その中の一人は現在、新しい部署を立ち上げて4億円規模の売り上げを立てるほど活躍しています。

独立を支援し、共に成長する「親子会社」の形

中辻:九州電設から独立された際、お父様との関係はどうだったのでしょうか。

穴井:九州電設には、優秀な人間が独立することを支援するという文化があります。独立したいと言う社員がいれば、そのために必要な勉強を社内でもバックアップするんです。私はその先駆けとして独立させてもらいました。

田久保:独立しても、完全に縁が切れるわけではないのですね。

穴井:はい。明確なホールディングス制ではありませんが、良好な関係を保ちながらお互いに応援し合う体制をとっています。実際、九州電設の役員が当社の株主になってくれていたり、忙しい時はお互いに応援に駆けつけたりと、グループ会社のような感覚で助け合っています。

二人の若者が抱いた「社長になる」という夢

中辻:独立当初は、どのような体制でスタートされたのですか。

穴井:最初は、私と一歳下の松山という社員の二人で始めました。彼とは、私が大学中退後にアルバイトをしていた頃に出会った縁があります。彼も九州電設に入社してくれていたので、「いつか独立して社長になりたいと思っているから、一緒に頑張ってほしい」と話していたんです。

田久保:まさに夢を語り合った仲だったのですね。

穴井:彼がいなければ今の会社はありません。彼は現在、人を育てる役割や利益を出す部分で非常に重要なポジションを任せており、これまで何度も助けられてきました。二人の夢から始まった会社が、今では15名を超える組織にまで成長しました。

現場のノウハウを継承し、大規模工事から家庭用まで

田久保:独立当初から大規模なビルの工事なども手掛けていたのですか。

穴井:九州電設が100名以上の社員を抱え、職人だけでも100名近くいるような会社でしたので、そこで培った大規模工事のノウハウが私の中にもありました。キューケンシステムでもその知識を活かして、大きなビルの一括施工なども受注しています。

中辻:大規模な現場から、一般家庭の小さな相談まで対応できるのが強みですね。

穴井:そうです。私たちが持つ確かな技術を、より身近な一般のお客様にも提供したいと考えています。現在は社員も15名ほどになり、30代を中心とした若い組織で、機動力を活かしながらあらゆるニーズに応えられる体制を整えています。

建設DXの真髄は「適切な受注」と「効率化」の両立

中辻:番組のテーマでもあるDXやデジタル化について、穴井社長のお考えを聞かせてください。

穴井:建設業界でもDXは必須だと言われていますが、私は少し違う視点も持っています。人が足りないからデジタル化して簡素化するというのは一般的ですが、その前に経営者として「適切な量の受注をしているか」を見直すべきだと思うんです。

田久保:デジタルを導入する以前に、無理な受注で現場が疲弊していないか、ということですね。

穴井:その通りです。適切な受注がなされた上で、さらに効率を上げるためにどうデジタルを組み込むかを考えるべきです。例えば、会社に出勤しなくても業務が進む状態を作るためにどんなソフトを導入するか、といった議論が本来のDXの姿ではないでしょうか。

アプリ導入で勤怠管理の壁を乗り越える

田久保:具体的にデジタル化を進めている部分はありますか。

穴井:まずは着手しやすい勤怠管理から始めました。これまでは会社に来て打刻するのが当たり前でしたが、専用アプリを導入して、現場で「到着しました」と打刻できるようにしました。これで出勤簿の作成も非常にスムーズになりました。

中辻:現場直帰が多い建設業にとって、勤怠のデジタル化は大きなメリットですね。

穴井:そうですね。ただ、新しいシステムを導入するには必ず抵抗があります。誰かが旗を振って進めなければ変わらないので、私が率先して導入を進めてきました。今までExcelで個人管理していたものをクラウドで共有し、全員で共同編集できるようにすることで情報の断絶を防いでいます。

教育のために、あえて残す「アナログ」の価値

田久保:すべての業務をデジタル化していく方針なのでしょうか。

穴井:いえ、キューケンシステムではあえてアナログの部分も残しています。例えば、出勤簿や日報は今でも手書きで提出してもらっています。それを後から事務方がシステムに入力していく形です。

中辻:あえて手書きにするのには、何か理由があるのですか。

穴井:「教育」の側面が大きいです。手書きだと、職長が内容を確認してサインをするというプロセスが明確になります。内容がずれていれば、その場ですぐに「これは確認したのか」と話をすることができる。そこに教育のチャンスがあり、コミュニケーションが生まれるんです。すべてを効率化して見えなくするのではなく、あえて「見える化」するためにアナログを使い分けています。

LINEを活用した、非対面見積もりの挑戦

田久保:営業面や顧客対応でのデジタル活用はいかがでしょうか。

穴井:最近は、一般のお客様向けにLINEを活用した見積もり対応を行っています。これまでは「金額を知りたいから見に来てほしい」という依頼があれば必ず現地に伺っていましたが、お互いに時間が取られるのが難点でした。

中辻:わざわざ見に来てもらうのは、お客様にとっても負担になることがありますよね。

穴井:そうなんです。そこで「LINEのビデオ通話で10分ほど現場を映してください」とお願いするようにしました。そうすれば、現地に行かなくても概算とは言えないほど精度の高い見積もりが出せます。これはお互いの時間を有効に使うための、最近の積極的な取り組みの一つです。

建設業は、どんな人材も受け入れる「最強の仕事」

中辻:異業種から建設業界に入られた穴井さんから見て、この業界の魅力はどこにあると感じますか。

穴井:建設業は「すべての人を受け入れる懐の深さ」があります。勉強が苦手だったり、世の中に馴染めなかったりした経験がある人でも、体が丈夫で一生懸命に働けば、人の上に立てるチャンスがある。一方で、理系で緻密な計算が得意な人は、複雑な図面を書く分野で活躍できる。

田久保:確かに、活躍の場が非常に多岐にわたりますね。

穴井:私は建設業を「最強の仕事」だと思っています。元気が取り柄の若者も、パソコンを駆使する職人も、それぞれの強みを活かせる場所が必ずある。力仕事というイメージが強いかもしれませんが、実際には緻密な計算や事務作業、さらにはコミュニケーション能力まで、あらゆる才能が組み合わさって形になる面白い仕事です。

若者のライフステージに寄り添う、柔軟な働き方

田久保:働き方について、若い世代に向けて工夫されていることはありますか。

穴井:建設業界は元請けの工程に合わせる必要があるため、どうしても残業が発生しやすい側面があります。しかし、結婚したばかり、子供が生まれたばかりという社員にとっては、家庭を優先したい時期があるはずです。

中辻:そういった時期に、建設現場のスケジュールに合わせるのは大変ですよね。

穴井:そこで、一般家庭向けの工事部門をうまく活用しています。家庭向けなら9時から17時できっちり終わる。家庭を大事にしたい時期はそちらの仕事を中心に行い、子供が成長したらまた大きな現場に戻る、といった配置転換を可能にしました。ライフステージに合わせて働き方を選択できる環境を作ることが、社長としての私の役割だと思っています。

「怖い」イメージを払拭し、憧れられる業界へ

中辻:建設業、特に土木や電気の現場には、まだ「怖い」「厳しい」というイメージを持つ若者も多いのではないでしょうか。

穴井:そのイメージを払拭したいというのが私の強い願いです。大学生に話を聞くと、未だに「スコップを持って穴を掘っている」というイメージを持っていたりします。実際はもっと高度な技術を使っているのに、正しく伝わっていない。

田久保:業界全体として、発信の仕方を工夫する必要がありますね。

穴井:大人が「仕事を通じて自分が成長できる喜び」をしっかり伝えていかなければ、次の世代はついてきません。仕事は単に稼ぐ手段ではなく、社会に貢献し、自分を豊かにするもの。それを背中で見せられる、カッコいい建設業を目指していきたいですね。

60歳までに「500人の会社」を作るという夢

中辻:穴井さんのこれからの目標や、挑戦したいことを教えてください。

穴井:私は60歳で定年を迎えるまでに、グループ全体で500人規模の会社にしたいと考えています。そして売上高100億円を達成したい。これは単なる数字の目標ではなく、それだけ多くの社員とその家族の人生に関われる人間でありたいという、私なりの覚悟です。

田久保:500人の人生に責任を持つというのは、非常に大きな目標ですね。

穴井:父がそうであったように、私も仕事を通じて世の中にどう貢献できるかを問い続けたい。社員教育の根幹には『7つの習慣』を置いていますが、スキルを教えるだけでなく、人としてどうあるべきかを共に学び、高め合っていける集団でありたいと思っています。穴井の会社で働けて良かった、と言ってもらえるような組織を目指して、これからも走り続けます。

■株式会社キューケンシステム https://kyuken-system.com/
■熊本シティエフエム https://fm791.jp/

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