軽井沢で60年以上!別荘地ならではの家づくり~大井建設工業株式会社
更新日:2026/1/14
▼目次
- 1 創業62年、土木と建築の二本柱で歩む歴史
- 2 別荘開発の先駆けとなった三井不動産との縁
- 3 御代田町から始まった三井不動産の別荘地1号
- 4 夏の人口が30倍に膨れ上がる軽井沢の特殊性
- 5 「日常」の住宅と「非日常」の別荘、見せ方の違い
- 6 日本全国を8つに分ける地域区分と断熱性能
- 7 軽井沢の寒さは札幌と同じ「2地域」
- 8 UA値による断熱性能の数値化と義務化
- 9 東京への憧れと、父親による「進路変更」の裏側
- 10 授業料払込最終日に父親が失踪
- 11 信州大学との共同研究、モデルハウスに200本のセンサー
- 12 「床下エアコン」の効果を数値で証明
- 13 米国の論文で採用された研究成果
- 14 土木現場でのドローン活用と進捗管理
- 15 警察よりも早く現場へ、災害復旧の最前線
- 16 無人化施工による安全確保
- 17 長野県建設業協会による災害情報共有システム
- 18 人手不足をデジタルの力で補う
- 19 建築現場でのタブレット活用と最新データの共有
- 20 空き家を高品質・低価格な住宅へ再生する挑戦
- 21 不動産業と建築業の融合による伴走支援
2025年6月8日(日)15:00~15:55
ゲスト:大井建設工業株式会社 代表取締役社長・大井康史さん
昭和38年、ゴルフクラブの建設をきっかけに誕生した長野県北佐久郡の大井建設工業株式会社。軽井沢地域で別荘地やゴルフ場の土木・建築工事など幅広く展開しています。「建設業界はデジタル化に関してはまだまだ遅れている」と言う大井社長。避暑地や観光で人気の軽井沢ならではの仕事の楽しさや課題、そして信州大学との共同研究のお話など、たっぷりと聞かせていただきました。
創業62年、土木と建築の二本柱で歩む歴史
クラフトバンク中辻(以下、中辻):まずは大井建設工業さんについて、どのようなお仕事をされている会社なのか概要を教えていただけますか。
大井康史さん(以下、大井):先代である私の父親が創業しました。大井建設という名前になったのが昭和38年ですので、今年で62年目を迎えます。事業としては、一般的に土木と呼ばれる事業と建築という大きな二つの柱があります。
中辻:建築の中にはどのようなカテゴリーがあるのでしょうか。
大井:建築の中には別荘、一般住宅、そしてリフォームという三つのイメージがあります。その他に公共工事もさせていただいています。現在は住宅建築がメインとなっており、それがどんどん増えてきて今の柱になっています。
別荘開発の先駆けとなった三井不動産との縁
中辻:元々は現在のような住宅メインの形態ではなかったのでしょうか。
大井:元々は土木部門と建築部門で始まりました。土木部門は公共工事と、軽井沢地域ということもあり別荘開発が中心でした。あとゴルフ場の造成などですね。
クラフトバンク金村(以下、金村):別荘開発は昔から盛んだったのですか。
大井:地域的に、私どもの会社が三井不動産の江戸さんという非常にすごい方とご縁がありまして、一緒に会社を作るような形で始まりました。三井不動産がゴルフ場や造成、別荘を手がける際に、私たちが大手ゼネコンさんの下で工事をさせていただいたのが成り立ちです。そこから公共工事もできるようになり、土木と建築の売上が伸びてきました。
御代田町から始まった三井不動産の別荘地1号
金村:軽井沢といえば避暑地や別荘地として全国的に有名ですが、先代が手がけられた開発はその走りだったのでしょうか。
大井:走りの少し前くらいだと思います。実は三井不動産の別荘地第1号は、この御代田町なんです。
中辻:ええ、そうなんですか。意外です。
大井:先代の話では、成功するか分からなかったので最初は10区画という非常に小さな区画から始めたそうです。今でも御代田町には「三井不動産西軽井沢別荘地」という看板が立っていますが、そこが1号地だと聞いています。そこから北軽井沢などで1000区画、500区画と広がっていきました。
夏の人口が30倍に膨れ上がる軽井沢の特殊性
大井:余談ですが、軽井沢町は人口がだいたい2万2千人くらいで、世帯数は8千から9千世帯ほどです。それに対して別荘は2万軒以上あり、世帯数の倍以上なんです。
中辻:人口よりも別荘の数の方が多いのですね。
大井:夏になると人口が30倍になると言われています。そのため夏場はどうしても大渋滞が起きてしまいます。町自体がそれほど大きいわけではなく、道もすごく広いわけではないですからね。
「日常」の住宅と「非日常」の別荘、見せ方の違い
金村:別荘を建てることと、現在メインとされている一般住宅を建てることでは、かなり違いがあるのでしょうか。使う材料は同じ木造で似ている気がしますが。
大井:材料は一緒ですね。基礎にコンクリートを使い、木造なら柱に木を使い、サッシを使うといった点は共通しています。ただ「見せ方」が全く違います。
中辻:具体的にどのように違うのですか。
大井:住宅は家に入ってのんびりできる、居心地が良い、快適であるといった温度や断熱などの性能を求められます。対して別荘は、普段と違うものを選ばれる方が多いです。特別な空間、非日常を求められます。例えば玄関を入って窓を開けると目の前がガラス張りで借景がどんと広がる、天井がものすごく高いといった、今住んでいる生活とは違う空間作りが重要になります。
日本全国を8つに分ける地域区分と断熱性能
金村:住宅建築においては、地域ごとの気候に合わせた設備や建て方の工夫があると思います。軽井沢や御代田のエリアはどういった気候特性があるのでしょうか。
大井:14、5年前に国が「地域によってこのくらいの断熱性能が必要です」という地図を作りました。日本地図を1から8の地域に色分けしているんです。
中辻:数字によってどのように分かれているのですか。
大井:1地域が北海道の網走や旭川、2地域が札幌、3地域が東北といった具合に、数字が大きくなるほど暖かくなります。8地域が沖縄ですね。この地域区分によって必要な断熱性能の数値が定められています。
軽井沢の寒さは札幌と同じ「2地域」
中辻:軽井沢は何地域に該当するのでしょうか。
大井:軽井沢町は、実は札幌と同じ「2地域」なんです。
金村:札幌と同じですか。それは相当寒いですね。
大井:一方、隣接する私の住む御代田町は「3地域」で、東北と同じ区分です。隣り合っている自治体でも区分が違うんです。最初は御代田も佐久も軽井沢も一緒の区分で公表されたのですが、感覚的に2度くらい温度が違うのでおかしいなと思っていました。国道にある温度計を見ても、冬は御代田の方が2度ほど暖かい。その後修正されて、軽井沢町だけが2地域になりました。
UA値による断熱性能の数値化と義務化
金村:2地域の方が3地域よりも断熱を厚くしなければならないということですね。
大井:そうです。今は断熱性能が「UA値」という数値で出るようになりました。昔は「うちの家は温かいよ」と言えば済みましたが、今はサッシ1枚に至るまで全ての部材に数値が入っていて、計算で性能が出るようになっています。
中辻:その数値には基準があるのですか。
大井:この数値がいくら以下でないとダメだという基準があります。これまでは推奨レベルでしたが、今年の4月から建築基準法等で、この地域はこの断熱性能がないと建ててはいけないという義務化が始まります。非常にタイムリーな時期に来ています。
東京への憧れと、父親による「進路変更」の裏側
中辻:大井さんは元々、建設業に興味があって継ごうと思われていたのですか。
大井:今から思うとあったのでしょうが、当時は「宣言します」という感じではありませんでした。いつかやるのかな、というぼんやりした気持ちでした。ただ、大学進学の時に父親と中学校の先生の間で相談があったようです。専門の建設系の高校へ行くよりは、まずは普通科へというアドバイスがあったみたいですね。
金村:大学では土木を学ばれたのですね。
大井:はい、信州大学の工学部に入りました。ただ、本当は東京の大学に行きたかったんです。強い思いがありました。
中辻:それなのになぜ地元の信州大学に。
大井:やむを得ない理由がありまして。当時は国立大学の試験と合格発表が一番最後で、私立大学が2月頃に先にありました。私立に受かって国立を受ける人は、まず入学金の一部を入れますよね。私も私立に受かってお金を入れました。
授業料払込最終日に父親が失踪
金村:私立に行く準備はできていたのですね。
大井:頭の中は東京に行く仲間とどこで遊ぼうかということでいっぱいでした。ところが、私立の授業料を払う最終日に、なんと父親がいなくなってしまったんです。朝からいない。お金は父親が持っていて、私は持っていない。
中辻:それは大変ですね。お父様はいつ帰ってこられたのですか。
大井:夜の10時です。銀行も郵便局も閉まった時間です。「明日だよな」なんて言いながら帰ってきました。当時の私からすれば、もう絶望ですよ。
金村:どうやって立ち直ったのですか。
大井:私立に行けないとなると、国立の信州大学に行くか浪人するしかありません。私は勉強があまり好きではなかったので、1年間浪人して勉強する気も起きず、国立に受かったのだからそこへ行くしかない、と思うしかありませんでした。
信州大学との共同研究、モデルハウスに200本のセンサー
中辻:信州大学へ行かれたことが、その後の共同研究に繋がったのでしょうか。
大井:今思えば父親に感謝ですね。私たちの地域は寒いので、暖房が本当に効くのか、寒さがどのくらい伝わるのかを知りたかったんです。そこで母校に相談に行きました。土木と建築の先生は交流があるので話をしてみたら、4年生の卒業研究のテーマとしてやりたい学生がいれば一緒にできるかもしれないということになりました。
金村:どのような実験をされたのですか。
大井:御代田町に普通の住宅のモデルハウスを建て、そこにセンサーを200本くらい入れました。外壁、断熱材の外側、内側、部屋側という風に。外がマイナス10度の時に、この冷たさが家の中にどう伝わるかを調べたかったんです。
「床下エアコン」の効果を数値で証明
大井:その実験では「床下エアコン」という方法を取り入れました。エアコンを基礎のところに少し埋め込むんです。そうすると温かい空気が床下を動き、フローリングが温かくなります。床暖房と同じ原理ですね。
中辻:床暖房とは違うのですか。
大井:床暖房は電気や不凍液のパイプを流しますが、光熱費が高くなったり故障したりします。もっと簡単な方法はないかと指導を受けて試したのが床下エアコンです。でも本当に効くのか分からないので、大学と一緒にセンサーを入れて検証しました。
金村:結果はどうだったのでしょうか。
大井:3年ほど続けて、「こうすれば効く」「こうすると効かない」ということがよく分かりました。根拠がないと私は納得できないタイプなので、大学との共同研究は非常に分かりやすく、納得できるものでした。
米国の論文で採用された研究成果
大井:今日、その研究結果の論文をお持ちしました。
中辻:わあ、すごいです。本格的な論文ですね。
大井:一緒に研究した学生がこれを英文にして、アメリカで発表して採用されたんです。大井康史の名前も載っています。アメリカの論文で発表され、取り上げていただいた。その学生も本当によく頑張ってくれました。
金村:それが御社の家づくりの技術として生かされているのですね。
大井:やはり根拠がないとダメなんです。他人が良いと言っても、本当にそうなのか。信州大学との共同研究で数値化できたことは、お客様からの信頼や説得力において大きな財産になりました。
土木現場でのドローン活用と進捗管理
金村:建設・土木業界におけるデジタル化、DXについて、御社で取り組まれていることはありますか。
大井:土木と建築はデジタル化が遅れていると言われてきましたが、最近は非常に進歩が早いです。土木ではドローンを使っています。
中辻:ドローンでどのようなことをするのですか。
大井:ドローンを飛ばして上空から撮影し、全ての座標を特定します。「1ヶ月前はこうだった」という進捗状況まで一瞬でデータ化できます。
金村:これまでの測量と比べて効率はどうですか。
大井:今までは人手で各所を測量していましたが、遠くからデジタルで一瞬にして終わります。時間は10分の1、あるいはもっと短縮できていると思います。非常に画期的ですね。
警察よりも早く現場へ、災害復旧の最前線
大井:もう一つ、デジタル化が必要なのは安全面です。私たちが仕事で行く場所は、比較的災害が起きた場所、土砂崩れの現場などが多いんです。
金村:災害現場に最初に行かれるのは建設会社なのですか。
大井:私はよく言うのですが、災害が起きたら私たちは警察よりも先に現場へ行きます。消防団よりも早いかもしれない。道路などの搬入路や避難経路を確保しなければならないからです。
中辻:一番危険な場所へ行かれるのですね。
大井:そうです。そこでの応急処置や作業が必要になります。見えないところが一番怖いんです。土砂崩れの奥がどうなっているか分からない。ですから、なるべく危険性を分かった上で作業をしたいと考えています。
無人化施工による安全確保
大井:そこで取り入れているのが、重機の無人化施工です。人が行けない危険な場所で、遠隔操作によって応急処置をします。
金村:無人化施工は以前からある技術なのですか。
大井:雲仙普賢岳の土石流の際の災害復旧で、無人重機が作業したのが走りだったと思います。最近はそれがさらに進んでいます。
中辻:現在はどのような技術が使われているのでしょうか。
大井:ICTと呼ばれる技術ですね。3次元でデータを作って、そのまま工事ができるようになっています。レーザースキャナーなどの1台1千万円クラスの非常に高価な機械を使って測量を行い、目に見えない土砂の堆積状況などを把握して作業に当たっています。前のデータがあれば、どこに異常があるかもすぐに分かります。
長野県建設業協会による災害情報共有システム
大井:長野県建設業協会でもシステムを導入しています。災害が起きた際、まずは通路の確保が第一です。道路がどうなっているか、写真を撮って位置情報と共に県のシステムに載せるんです。
金村:リアルタイムで状況が共有されるのですね。
大井:そうです。「ここは通れる」「ここはダメだ」ということが一目で分かり、県でパッと見て作戦会議ができる。年3回ほど訓練もしています。
中辻:非常に優れたシステムですね。
大井:やる側が慣れないといけませんが、写真を撮るだけでどのくらいの土砂が流れたかまで分かるようになります。今後はそういった活用が進んでいくでしょう。
人手不足をデジタルの力で補う
金村:若手や働き手の不足という課題がある中で、こうした技術導入は不可欠だとお考えですか。
大井:その通りです。今までは1人がやっていた時間を、短時間で量も多くこなさなければならない。マンパワーでやるか、機械を使うかという選択で、もう機械やデジタルを使わざるを得ません。
中辻:働き方の面でも変化はありますか。
大井:今は休みもちゃんと計画的に取らなければなりません。「休みなんてない」と言っていた私たちの時代とは違います。しっかり休みを取るためにも、デジタル化による効率向上は必要不可欠です。
建築現場でのタブレット活用と最新データの共有
金村:建築の現場でも、デジタル化の波は来ていますか。
大井:はい。例えばタブレットで図面を見たり、現場で拡大しながら書き込んだりしています。紙だとどこに書いたか分からなくなったり、最新の図面がどれか分からなくなったりしますが、デジタルなら一元的に共有できます。
中辻:ベテランの職人さんたちとのギャップはないのでしょうか。
大井:そこはまだ壁がありますね。棟梁さんなどはやはり紙の図面の方が落ち着くという方もいらっしゃいます。私も古い人間なので、図面の方が見やすいと感じる部分はあります。
金村:無理に全てを変えるのではなく、併用されているのですか。
大井:目的は時間が短くなって正確で使いやすいことですから、使う人に合わせています。ただ、将来的には間違いなくタブレットなどのデジタル媒体に移行していくでしょう。打ち合わせもリモートが増えましたし、ハードルは低くなっていると感じます。
空き家を高品質・低価格な住宅へ再生する挑戦
中辻:最後に、大井建設工業の未来、今後取り組んでいきたい目標について教えていただけますか。
大井:人口が減っていく中で、これから家を建てるお客様も統計上は減っていきます。そうなると、今建っている住宅が余る「空き家」の問題が起きてきます。
金村:空き家問題は全国的な課題ですね。
大井:私はマイホームを持つことは、思い出が残る場所として非常に大切だと思っています。ただ、新築は資材高騰で高くなっている。そこで、私たちの建築技術を使って、空き家を今の新築と同等レベルまでリノベーションし、価格は新築より3、4割安く提供したいと考えています。
不動産業と建築業の融合による伴走支援
大井:空き家を売りたい方、必要ない方と、安くて良い家が欲しい方の間を私たちが取り持つ。そのためには建築だけでなく、私が持っている不動産の免許も生かして不動産業としても関わっていく必要があります。
金村:家の始まりから最後までをサポートするということですね。
大井:そうです。先日も「空き家相談会」を開催したのですが、20組ほどの方がいらっしゃいました。皆さん、今ある建物や土地をどうしたらいいのかが一番の悩みなんです。私たちがプロの目線で「こう直せば大丈夫」あるいは「これは難しい」という判断を下し、最適な解決策を提案する。これが本当の住宅会社としての姿なのかなと思います。
中辻:長年の実績と経験があるからこそできる、素晴らしい挑戦ですね。本日は貴重なお話をありがとうございました。
大井:ありがとうございました。
■大井建設工業株式会社 https://www.ooi-kensetsu.co.jp/
■fmさくだいら http://www.fmsakudaira.co.jp/
\ こちらからお聴きいただけます /
アーカイブ配信:https://audee.jp/program/show/300006512






