岐阜の美しい郷土を未来に残すために~篠田株式会社
更新日:2026/1/13
▼目次
- 1 創業110年を超える歴史と事業の変遷
- 2 建設会社嫌いの父と30名での再出発
- 3 ガードレール県内シェア75%からの飛躍
- 4 ドイツで目にした「環境」と「エネルギー」の最先端
- 5 日本は欧州より「半世紀」遅れているという危機感
- 6 造船業界から建設業界への意外なキャリアパス
- 7 M&Aを通じた多角化と地域の足跡
- 8 建設業界の「2024年問題」への対応
- 9 スマートフォンを活用した現場管理のデジタル化
- 10 配送ルートのシステム化と効率化
- 11 パソコン嫌いの「原始人」が主導するDX
- 12 現場作業員の健康管理とIoTの可能性
- 13 新卒採用と「現場での修行」の大切さ
- 14 スケジュール共有が生む「天国状態」と多忙な日々
- 15 社員とのコミュニケーションと「餅つき大会」
- 16 「ひるがの」で進むカーボンフリー・プロジェクト
- 17 木質バイオマスと25年持つ蓄電池の導入
- 18 父が騙されて買った土地を「宝の山」へ
- 19 フィンランド・ヘルシンキへの技術研修
- 20 炭化装置と地域農業への貢献
- 21 若い世代を呼び戻す、新しい街のカタチ
2024年11月3日(日)15:00~15:55
ゲスト:篠田株式会社 代表取締役・篠田篤彦さん
創業から110年を超える岐阜市の篠田株式会社。「自然と共生」をテーマに安全で住みやすい街をプロデュースし、土木建設資材の専門商社でありながら、防災・減災・交通安全施設設置工事を行う専門業者でもあります。また、再生可能エネルギーをはじめとする環境に配慮した製品の企画提案・販売も。地域の特性を活かしたエネルギーの地産地消を目指しています。今回は代表取締役・篠田篤彦さんに、社としての取り組みや今後の展望などをお伺いしました。
創業110年を超える歴史と事業の変遷
クラフトバンク中辻(以下、中辻):まずは、会社のことについて教えていただけますか。篠田株式会社は、どのようなことをされている会社なのでしょうか。
篠田篤彦さん(以下、篠田):元々は篠田製作所という会社がありまして、祖父が立ち上げたのですが、創業は大正元年になります。一番最初はスコップや鍬など、戦時中に使われていたものを軍事工場で作っていました。
クラフトバンク田久保(以下、田久保):大正元年からとなると、相当な歴史ですね。
篠田:その後、橋梁や砕石プラントといったことを手がけるようになりました。転機となったのは伊勢湾台風の時です。堤防が各所で決壊したことで土嚢が非常に売れるようになり、そこから土木資材の取り扱いを始めました。
建設会社嫌いの父と30名での再出発
中辻:お父様の代から現在の形になったのですか。
篠田:私の父は、どちらかというと建設会社があまり好きではありませんでした。「俺が仕事をしている時はお前も休むな」というような、非常に厳しい職人気質の人間でして。父から「お前なら向いているかもしれないから、そっちへ行け」と、なかば片道切符で放り出されたのが今の篠田の始まりです。
田久保:篠田さんご自身が創業されたということになるのですね。
篠田:来年でちょうど40周年になります。最初は社員30名ほどを預かってスタートしました。今では事務社員を含めると300名を超える規模になっています。
ガードレール県内シェア75%からの飛躍
田久保:30名からスタートして10倍以上の規模まで、どのように成長させてこられたのですか。
篠田:当時はスーパーゼネコンの下請けとして、トンネル工事の一部にも携わっていました。九州の鹿児島から、北は東北の磐越自動車道あたりまで、全国の現場に関わっていました。
中辻:物を作るだけでなく、工事もセットで手がけてこられたのですね。
篠田:当時は商社が工事まで一括で受けるのは珍しかったのですが、利益率や手間を考えると、工事込みでやった方が良いと考えました。ガードレールに関していえば、一時期は岐阜県内のシェア75%を占めていたこともあります。自分でガードレールをぶつけてしまった時に、隣にある自社のレールを持ってきて自分で直したこともあるくらいです。
ドイツで目にした「環境」と「エネルギー」の最先端
田久保:今はガードレールだけでなく、環境に配慮した製品も扱われているとお聞きしました。
篠田:商材を求めてドイツの展示会へ行った際、現地のメーカーと接点ができました。木を使った防音壁などを試してみたところ、都内近郊の幼稚園や保育園で非常に需要が増えてきました。
中辻:環境という分野に興味を持たれたきっかけは何だったのでしょうか。
篠田:ヨーロッパは日本に比べて環境意識が30年は進んでいると言われています。実際に行ってみると、その意識の高さに驚かされました。向こうでは既存の建物をすぐに壊すのではなく、リフォームして古い建物を生かすという考え方が定着しています。
日本は欧州より「半世紀」遅れているという危機感
篠田:環境というよりも、エネルギーの問題ですね。ドイツへ行った時もそうでしたが、天然ガスも石油もほとんど入ってこない状況で、何かをエネルギーに変えなければならないという切実な課題があります。
田久保:エンジニアリングに近い、設計の段階から手がけようとされているのですね。
篠田:日本は実際、欧州に比べて半世紀は遅れていると感じます。今あるものをどうエネルギーに変えて発電していくか。そうした取り組みを、エンジニアリング系の設計も含めて進めていきたいと考えています。
造船業界から建設業界への意外なキャリアパス
中辻:篠田さんご自身は、元々この業界に進みたいというお気持ちはあったのですか。
篠田:全くありませんでした。当時は住友重機械という造船関係の会社にいたのですが、昭和55年から56年頃、造船不況で退職勧奨が多かった時期でした。誰かが手を挙げれば他の誰かが助かるかなと思い、辞めて家に戻ってきました。
田久保:戻ってこられてからは、順調だったのでしょうか。
篠田:戻れば楽ができるかと思ったら、毎晩のように飲み歩く日々でした。当時の社名を出せばツケが全部きくような時代で、お盆から正月までの間にベンツのSクラスが2台買えるくらいの請求が会社に来ました。父から「自分で払え」と銀行に連れて行かれ、多額の借金を背負わされたのも今では良い思い出です。
M&Aを通じた多角化と地域の足跡
田久保:39年の歴史の中で、大きなターニングポイントはありましたか。
篠田:リーマンショックの時も特に大きな影響はありませんでした。事業を拡大する中で、海の魚が食べたいと思って三重県の会社を、日本海の魚が食べたいと思って福井の会社をM&Aしたりもしました。
中辻:決断が非常に早い印象を受けますが、直感で動かれることが多いのですか。
篠田:切れるのは早いです。社内では「丸まって寝ている猫」のような状態だと言われていますが、その反動が翌日社員に行くこともありますね。3人の娘からは「斧のチェーンソー、二枚カミソリ」という物騒な名前をつけられています。
建設業界の「2024年問題」への対応
中辻:ここからは、篠田株式会社のDXやデジタル化への取り組みについて伺いたいと思います。2024年問題もあり、残業時間の管理などは厳しくなっていますよね。
篠田:うちは定時が5時なのですが、5時2分か3分にはみんな打刻して帰っていきます。
田久保:それは素晴らしいですね。いつ頃からそのような体制になったのですか。
篠田:総務部長が5時10分には帰るような会社ですから。建設業界では「帰りづらい」という雰囲気があるかもしれませんが、うちは全くありません。
スマートフォンを活用した現場管理のデジタル化
田久保:具体的なデジタル化のツールとしては、どのようなものを導入されていますか。
篠田:現場作業員の勤怠や空き状況をスマートフォンで管理できるよう、今取りかかっています。限られた人数と時間の中で回していくためには、そこまでやらないと無理があると感じています。
中辻:経費精算などもデジタル化されているのでしょうか。
篠田:経費精算や決済などは、私が海外にいても時間に関係なくスマホにどんどん飛んできます。気に入らないやつだけ承認せずに残しておいたりしますけどね。
配送ルートのシステム化と効率化
田久保:配送のスタッフの方々も、システム化の対象なのですか。
篠田:配送ルートも全てシステム化しています。最初からナビで目的地までのルートが入っているので、どの道を通れば効率的か一目でわかるようになっています。
中辻:スタッフの方々の反応はいかがですか。
篠田:ルートが指定されてしまうので「コンビニに寄りたいのに」なんて思っているかもしれませんが、そこは効率化のために徹底しています。
パソコン嫌いの「原始人」が主導するDX
田久保:篠田さんご自身がDXを推進されているのですか。
篠田:私自身はパソコン嫌いの「原始人」なのですが、これからは必要だということで「これをやれ」と言っています。社内にはプログラミングができる若い子もいますので、自社で開発したりソフトを導入したりしています。
中辻:自社で開発までされているとは驚きです。
篠田:ハンコを押しに会社に戻らなければならない、というような無駄は省きたいですから。海外にいても仕事が回る仕組みを整えています。
現場作業員の健康管理とIoTの可能性
田久保:今後、さらに進化させたいデジタル技術はありますか。
篠田:現場作業員にIoTデバイスをつけてもらえば、血圧などの健康管理がリアルタイムでできますよね。そこまで見守れるようにしたいと考えています。
中辻:安全面でも非常に有効そうですね。
篠田:自分自身の健康管理は何もしていませんが、社員の健康は大切ですから。ヘルスチェックのような機能を充実させていきたいです。
新卒採用と「現場での修行」の大切さ
田久保:新卒採用についても積極的に行われているそうですね。
篠田:毎年採用しています。多い時で10名ほど取ったこともあります。
中辻:新人教育で大切にされていることはありますか。
篠田:今年は1人採用したのですが、少し甘えが見られたので「現場へ行って修行してこい」と言いました。そうしたら退職願が出てきまして。私はしっかり見ていますから、厳しいことも言います。
スケジュール共有が生む「天国状態」と多忙な日々
田久保:社長がいらっしゃらない間、事務所は「天国状態」だそうですね。
篠田:この1ヶ月ほど事務所に帰っていないので、みんなのびのびしているでしょう。私のスケジュールは社内のクラウドカレンダーで共有されています。
中辻:ご家族とも共有されているのですか。
篠田:家族用にもスケジュールを伝えていますが、たまに抜けることもあります。来週はバンコクへ行かなければなりませんし、その前にはイタリアにも行きます。自分でスケジュールを詰め込みすぎて、管理してくれる人がいないと大変です。
社員とのコミュニケーションと「餅つき大会」
田久保:社員の方々とのコミュニケーションで、心がけていることはありますか。
篠田:冠婚葬祭はこれまで全て出席してきました。結婚式だけでも150組くらいは出ていると思います。社員の親の葬式にも必ず行きます。
中辻:ご家族の構成まで把握されているのですね。
篠田:そうすると自然に奥様の性格までわかってきたりします。毎年正月には全社員を集めて餅つき大会をしています。そこでも外部の方も含めて色々なお話をします。お酒も入っているので「いつでも来い」という状態ですね。
「ひるがの」で進むカーボンフリー・プロジェクト
中辻:これからの展望についてお聞かせください。岐阜県の「ひるがの」でプロジェクトが動いているそうですね。
篠田:ひるがののコンセプトは、化石燃料を一切使わない「カーボンフリー」なエリアを作り上げることです。そこには木質バイオマス、蓄電池、そして炭化装置などを導入します。
田久保:「ひるがのミニエコタウン」という名前で進められているのですね。
篠田:地域で農業をするにせよ、UターンやIターンの若い人たちをもう一度呼び戻せるようなエリアを作りたい。脱炭素の最先端設備をそこで整えようとしています。
木質バイオマスと25年持つ蓄電池の導入
篠田:蓄電池についても、普通のリチウムイオンではなく「レドックスフロー蓄電池」を導入します。これは最低でも25年、中身を入れ替えれば50年は持つというものです。
中辻:50年も持つ蓄電池があるのですね。日本ではあまり普及していないように感じます。
篠田:意識の問題でしょうね。コストがかかるという壁もありますが、補助金なども活用しながら進めていきたい。これからの天気や環境を考えると、何かしら手を打たなければならないという気持ちがあります。
父が騙されて買った土地を「宝の山」へ
中辻:ひるがのという土地を選ばれた理由はありますか。
篠田:昔、父が地元の建設会社に騙されて、どうしようもない土地を買わされたんです。それを私が二足三文で買い戻しました。50年以上経った杉の木がそのままになっていたので、それらを伐採して有効活用しようと考えました。
田久保:負の遺産を宝の山に変えるということですね。
篠田:そのままにしておいても間伐もされないヒョロヒョロの杉ばかりですから。保養的な要素と教育的な要素を兼ね備えた場所にしたいと思っています。
フィンランド・ヘルシンキへの技術研修
篠田:近々、ヘルシンキへ行きます。フィンランドでは下水汚泥をそのまま炭化させて肥料を作り、その熱を発電に使う施設があるんです。
田久保:ヨーロッパの技術をモデルにされるのですね。
篠田:モデルに特化しているのはそこだけなので、現地のエンジニアリング会社と見に行ってこようと思っています。12月を過ぎると氷点下になるので「早く来てください」と言われています。
炭化装置と地域農業への貢献
中辻:炭化装置では、どのようなことをされる予定ですか。
篠田:そこで出た熱や肥料を使って農業にも貢献したい。社員にはみんな反対されていますけどね。でも、トータル4年間のうちに全ての設備を整えるつもりです。
田久保:あと1年ちょっとで完成ということですね。
篠田:完成すれば外部からの見学も受け入れたい。温暖化について口で言っても仕方がないですから、現実を見せていきたいです。
若い世代を呼び戻す、新しい街のカタチ
中辻:篠田さんが目指す「未来の街」とはどのようなものですか。
篠田:ひるがののスキー場のリフトの頂上付近、標高1050メートルくらいの場所です。下界とは10度くらい気温が違います。夏は涼しいところで酒でも飲みながら、リモートでガンガン仕事ができる。そんな環境を若い世代にも提供したい。
田久保:エネルギーも含めて本当の自給自足ですね。
篠田:若い人たちがもう一度ひるがのに戻ってこれるような、そんな活気あるエリアを自分たちの手で作り上げていきたいと思っています。
■篠田株式会社 https://www.gifu-shinoda.co.jp/
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