クラフトバンク総研

”地震被害ゼロ”の「TNF2.0工法」で急成長~株式会社タケウチ建設

更新日:2026/1/14

2025年5月25日(日)15:00~15:55

ゲスト:株式会社タケウチ建設 常務取締役・山田三弥子さん、建設部マネージャー・中川啓祐さん


「High-Growth Companies Asia-Pacific 2022 〜アジア太平洋地域における急成長企業ランキング〜」において上位500社にランクインした、広島県三原市の株式会社タケウチ建設。”地震被害ゼロ”という建物と地盤の最適化を図るローコストな基礎「TNF2.0工法」を武器にベトナムでも展開。社員の半数以上が外国籍という先進的な企業です。番組では、山田常務と中川マネージャーに「TNF2.0工法」についてや、カリスマと呼ばれる竹内社長のお話など、たっぷりと聞かせていただきました。(広島県三原市 FMみはらにて収録)

創業35年、設計と施工を一体化させた事業展開

クラフトバンク津吉(以下、津吉)まずはタケウチ建設さんについて、どのようなお仕事をされているのか、会社の基本的な情報からお伺いしたいのですが。

山田三弥子さん(以下、山田):タケウチ建設は1990年に創業し、ちょうど35年になります。最初は設計事務所としてスタートしました。当社の社長がT&B設計事務所を立ち上げ、その3年後にタケウチ建設を設立いたしました。現在は総合建設業として、地盤や基礎、独自に開発した工法技術をメインに基礎の最適化を事業の中心に置いています。設計から施工までを一貫して当社で責任を持って行う体制を整えています。

津吉:元々は設計事務所だったのですね。

山田:そうですね。設計事務所とタケウチ建設という2つの組織で長くやってきましたが、2024年に設計事務所をタケウチ建設に合併いたしました。今はタケウチ建設の中に設計部門もあるという形になっています。

独自工法「TNF工法」誕生のきっかけ

津吉:タケウチ建設さんといえば「TNF工法」という独自の工法が有名ですが、この工法が生まれた背景にはどのような経緯があったのでしょうか。

山田:これは当社の社長が創業して間もない頃に、ローコスト店舗の設計コンペに応募したことが始まりです。多くの大手企業が参加する中で、いかに店舗をローコストで建設するかというテーマがありました。内装や建物自体の材料を安くすると、どうしてもチープな印象になってしまいます。そこで、最もコストを下げられる部分はどこかと考えた時に、躯体や基礎の部分ではないかと思いついたのが、TNF工法の始まりです。

津吉:設計コンペから生まれたアイディアだったのですね。

山田:スーパーマーケットなどの店舗を想定していました。社長は元々意匠設計の出身なのですが、構造設計もできるという強みがあったからこそ、この発想に至ったのだと思います。

環境に優しくコストを抑える「Tender Net Foundation」

クラフトバンク田久保(以下、田久保)TNF工法とは具体的にどのような工法なのでしょうか。

中川啓祐さん(以下、中川):TNFは「Tender Net Foundation」の略です。「Tender」は「優しい」という意味ですが、二酸化炭素の排出を抑え、ゴミを出さない環境に優しい工法です。私たちの工法は、表層の浅いところで地盤改良を済ませてしまいます。地盤の深いところを乱さず、環境破壊をしないという意味で「Tender」と名付けました。「Net」は格子状の改良形状を地盤の中に作ることを指し、建物を安定させる基礎形状を構築します。

津吉:ローコストを目指した結果、環境にも優しい工法になったということですか。

中川:そうですね。例えば田んぼのような非常に軟弱な地盤の場合、一般的には杭を深く打つ「杭工法」が主流です。しかし深くなればなるほどコストが上がってしまいます。私たちの工法は特殊な形状を浅い層で形成するため、深い杭を打たずに済む分、コストメリットが大きく出る仕組みになっています。

全国2,000棟を超える実績と工法の普及

田久保:このTNF工法は、現在どれくらい普及しているのでしょうか。

山田:現在、日本全国で施工させていただいており、実績は累計で2,000棟を超えました。面積にすると500万平米を超えています。

中川:TNF工法での工事は、従来の杭を打つ工事とは異なる高い技術力が必要です。そのため「TNF工法協会」を設けており、当社が許可を出した会社さんしか施工できない体制をとっています。技術力を向上させ、満足いただける品質を提供できる業者さんのみに施工していただくことで、品質を担保しています。

津吉:誰でもできるわけではなく、厳選されたパートナーと広めているのですね。

進化する「TNF 2.0」とデジタル解析の導入

津吉:山田さんの胸元には「TNF 2.0」というバッジが付いていますが、これはさらに進化したものなのですか。

山田:2022年にリリースしたTNFの進化版が「TNF 2.0」です。

中川:元々は一般的な地盤計算と私たちの考え方に沿った計算を行っていましたが、現在は社内で解析技術を内製化しています。計算したものをさらに解析にかけることで、手計算では見えてこなかった結果が得られるようになりました。これにより、本来不要だった部分の改良を減らし、逆に補強すべき箇所の改良を増やすといった設計が可能になり、さらなるローコスト化と安全性の向上を両立させました。

田久保:デジタル技術を駆使して、より精密な設計を行っているのですね。

中川:安全率をより高めた設計手法へ変更したことで、工法をバージョンアップさせました。

ベトナムを拠点としたグローバル展開

津吉:事業所の展開についても伺いたいのですが、三原の本社以外にも拠点があるのでしょうか。

山田:4月に北海道支部をオープンしたほか、名古屋や九州にも拠点があります。さらにベトナムにも現地法人を構えています。

津吉:ベトナムでの取り組みについて詳しく教えてください。

山田:ベトナムの子会社は2016年に設立しました。現在は約35名の社員がおります。主な業務は、日本のタケウチ建設の設計や施工図の作成を現地で行うことです。今後はベトナム国内でのTNF工法の施工を目指しており、時期を見極めながら準備を進めているところです。

田久保:日本とベトナムで連携して設計業務を行っているのですね。

全社員の6割が外国籍、多様性に富んだ組織

田久保:タケウチ建設さんの従業員数は全体でどれくらいですか。

山田:日本国内に92名の社員がおり、ベトナム現地法人の35名を合わせるとさらに多くなります。

津吉:外国籍の社員の方も多いとお聞きしました。

山田:国内の92名のうち、51名が外国籍の社員です。約6割を占めており、半分以上になりました。ベトナムだけでなく、インドネシア、イラン、インド、フィリピン、ミャンマーなど、非常に多国籍です。最先端のIT企業のようだとよく言われます。

中川:私が入社した12年前は中国の方が1名いらっしゃるだけでしたが、その数年後からベトナムでの採用を毎年行うようになり、一気に増えていきました。

ベトナムでのリファラル採用と教育体制

田久保:ベトナムでの採用はどのように行っているのですか。

山田:最初は難しかったのですが、卒業生が当社で働いてくれるようになり、彼らが後輩にPRしてくれる「リファラル採用」のような形ができてきました。ホーチミン工科大学やハノイ工科大学といった大学のジョブフェアに参加したり、説明会を開いたりするのですが、そこに現役の先輩社員が行ってリクルート活動をしています。

田久保:先輩が直接声をかけるのは安心感がありますね。

山田:採用が決まると、入社までの約1年間、現地の当社子会社で仕事をしながら日本語を勉強するプログラムを受けてもらいます。仕事も覚えつつ日本語も習得し、ある程度コミュニケーションが取れる状態で日本の会社に入社する仕組みを作っています。

津吉:採用から育成、日本での就業まで完璧に設計されていますね。

地震の揺れを吸収する新工法「T-BAGS」

田久保:もう一つの注目技術「T-BAGS減震工法」についても教えていただけますか。

中川:建物の下に「土のう袋」を敷き詰める工法です。地震が起きた際、建物とその下の基礎が揺れますが、そのさらに下に特殊な土のう袋を二段重ねで設置します。地震の力によってこの土のう袋が滑り動くことで、建物に振動を伝えないようにします。車のサスペンションのように地震力を吸収する仕組みです。

山田:2012年に実際に施工して特許も取得していますが、これから本格的に普及させていこうと考えています。

田久保:従来の免震工法との違いはどこにあるのでしょうか。

中川:一般的な免震は高硬度のゴムを使うことが多いのですが、ゴムはサイズも大きくコストもかかります。T-BAGSは土のうをスライドさせる「滑り免震」という考え方で、非常にローコストで導入できるのがメリットです。

低層建物に最適なローコスト減震

津吉:「土のう」を使うというのは、コスト面で非常に有利そうですね。

中川:40センチ角のコンパクトな土のうを間隔を空けて敷き詰めます。ゴムのような変形を利用するのではなく、滑らせることで揺れを軽減します。

山田:特に低層で面積の広い建物の場合、高価な免震装置を入れるのはコストのハードルが高いのですが、T-BAGSなら安価で安全な地震対策が可能です。企業のBCP対策への意識も高まっていますので、このニーズに応えていきたいと考えています。

中川:基本的にはTNF工法とセットで導入する形になります。TNF工法があってこそのT-BAGS工法ですね。

田久保:マーケティング的にも、独自性とコストメリットがしっかり考え抜かれていますね。

建設現場のDX:**

津吉:ここからは現場のDXやデジタル化の取り組みについて、中川さんに伺います。現場ではどのようなデジタル化が進んでいますか。

中川:主にバックホーなどの重機にICT技術を導入しています。いわゆるICT建機です。地盤の作業は目に見えない部分が多いのですが、ICT建機を使うことで深さや高さの管理を「見える化」できます。どれくらいの深さまで掘り進めているかをリアルタイムで確認できるため、精度が飛躍的に向上しました。

津吉:熟練の技術が必要だった部分がデジタルで補完されているのですね。

中川:建設業界の高齢化も課題ですが、ICT建機には自動制御機能が付いています。設定した深さ以上はバケットが動かないように制御できるため、入社したての若手でも高い精度で施工が可能です。技能者不足を補い、教育のスピードを上げる効果も期待しています。

3次元図面の活用と測量作業の撤廃

田久保:測量の面でもデジタル化の効果は大きいのでしょうか。

中川:劇的です。建機メーカーさんと打ち合わせを重ね、3次元の図面データを直接バックホーに取り込んでいます。さらに衛星測位システム(GNSS)と建機を連動させることで、現場に丁張りをかけるような従来の測量作業がほとんど不要になりました。

田久保:測量の手間が大幅に削減されるわけですね。

中川:通常は建機メーカーやリース会社に図面データを作ってもらうことが多いのですが、当社ではそのデータ作成も内製化しています。自分たちでデータを作り、機械を借りてすぐに現場で動かせる体制を整えています。これにより、外部に頼るよりも迅速かつ柔軟に対応できるようになりました。

社内システムの内製化「TNFクラウドシステム」

津吉:社内のデジタル化についても、山田さんにお聞きします。社内システムの構築も進んでいるのでしょうか。

山田:社内にITチームを擁する研究開発グループがあり、独自に「TNFクラウドシステム」を構築しています。データベースをはじめ、施工管理、営業、顧客管理、資材調達といったあらゆる業務を統合するシステムを自社開発しています。

田久保:建設会社が自らクラウドサービスを開発するというのは驚きです。

山田:既存のパッケージシステムも検討しましたが、当社の特殊な工法や業務フローにマッチするものがなかなかありませんでした。それなら自分たちで作ってしまおうと。日本とベトナムのITチームが連携して開発を進めており、名刺管理のSansanや電子契約のクラウドサインといった外部サービスともAPI連携させて、利便性を高めています。

津吉:将来的にそのシステムを外販することも考えられそうですね。

目標は「2025年に売上100億円」の突破

田久保:タケウチ建設さんのこれからの展望や目標についてお聞かせください。

中川:私が入社した頃は売上が約12億円でしたが、社長は「2025年に100億円を目指す」とずっと仰っていました。昨年度は60億円でしたが、今期は100億円を超える見込みです。売上が増えるということは工事数も増えますので、ICTの活用や生産性の向上をさらに進め、人員体制を整えていく必要があります。

津吉:有言実行で目標を達成しつつあるのですね。

中川:次のステップとして売上250億円という目標も掲げています。単純に人を増やすだけでなく、デジタル技術を駆使して一人ひとりの生産性を高め、目標を達成できる準備を整えていきたいです。

イノベーションを続け、1,000年続く企業へ

津吉:山田さんはこれからの会社をどのようにしていきたいとお考えですか。

山田:入社当時は社員3名、売上数千万円という規模でしたので、今の姿は想像もできませんでした。しかし社長が常に仰っているのは「イノベーションを続けること」です。現状に満足せず、創意工夫を重ねていくことが大切だと思っています。

津吉:常に新しいことに挑戦する姿勢が根付いているのですね。

山田:私たちの工法は地震から命を守り、社会の役に立つ技術だと自負しています。この技術と会社を1,000年続けたいというのが、今の私たちの思いです。若い世代の社員たちもこの仕事に誇りを持ってくれています。建設業の「怖い」「きつい」というイメージを払拭し、イノベーションを起こし続ける、みんなが笑顔になる会社を目指していきたいです。

■株式会社タケウチ建設 https://www.takeuchi-const.co.jp/
■FMみはら https://www.fm-mihara.jp/

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アーカイブ配信:https://audee.jp/program/show/300006512

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