中小建設業は大手とどう戦うか ~ 集客コストに目を向ける
更新日:2025/4/17
「工務店経営を継いだんだけど、どうやって生き残る?」
「県外の大手が進出してきた!中小はどうする?」
「チラシ集客の反応が年々悪くなっている」
「馴染みの客も最近発注が少ない」
など、最近は建設業の後継者の方と交流することが増え、こういう会話をするようになりました。
年始の2021年業界動向予測でも紹介した以下の図の通り、既に民間建築市場は大手の寡占が進んでいます。そんな中で中小企業はどう戦えばいいのでしょうか?
参考:住宅リフォーム領域における大手シェア

1:中小工務店は54%、リフォーム会社は50%が赤字
会計事務所・税理士事務所向け情報サービスのTKC社がまとめている業種別の経営指標を見てみましょう。(令和2年9月時点)

工務店(木造建築工事業)の54%、リフォーム工事業の50%が赤字(※)になっています。工務店の売上対前年比は1%、リフォームは▲9%と増収には遠い状況です。
※赤字の定義は「純資産がマイナス」もしくは「当期損益がマイナス」です
https://www.tkc.jp/tkcnf/bast/sample/
2:大手は材料に加え、集客コストの構造が違う
そんな中、家電量販店で最もリフォーム売上の大きいエディオン(521億円)は2020年8%、額にして39億円の増収を果たしています。リフォーム事業単独の利益率は公開されていませんが、小売等の異業種からの大手参入事例として、一つの参考になるでしょう。
【材料コスト】
エディオンの売上(2020年3月期)は
・全体で7,335億円
・リフォーム事業単独で521億円
三井不動産のリフォーム部門よりも大きく、業界9位の規模です。
当然、建材・住設の仕入の際、メーカーに対しコスト交渉力があります。
【集客コスト】
売上・粗利に関心を向けている会社は多いですが、「集客コスト」も含め、営業利益、経常利益まで見据えて計算している会社は少ないです。
建設・不動産業は販促費が大きな業態ですが、中小企業の場合
「100万円の仕事をチラシを撒いて24万円かけて取っている」4%)
(販促コスト2
「チラシ5千枚配って反応一件(契約ではない)」
「効果が出るか分からない看板を駅前や市役所に出している」
のが実態です。
粗利は確保しても集客コストで営業・経常赤字という会社も多いでしょう。
以下に、中小リフォーム工事業とエディオンの集客力を比較しました。

大手のエディオンの決算(2020年3月期)を見てみると、広告・販促費は本業の家電販売も含めた全体売上の2%です。リフォーム事業で見た場合、家電を買いに来た顧客をリフォームに誘導できるため販促コストは2%以下、「100万円の仕事を0円~2万円以下」で獲得できていることになります。
しかし、企業規模が大きいので、「売上の2%」でも広告・販促費の総額は家電も含めて158億円、リフォーム単独だと単純計算で10億円です。紙のチラシに加え、テレビCM、youtube等のSNSもフル活用し、売上を作っていることになります。
https://note.com/cri/n/nb7508e890355
3:大手と正面から戦わない
「チラシ集客の反応が年々悪くなっている」「なじみの客も最近発注をくれなくなった」という経営者の相談に対し、「もっと広告費を増やしましょう」と提案しているコンサルタントもいるようですが、「反応が悪くなっている理由」を再度考える必要があります。
前回の「人口が減っている町で家は建たない」に加え、「異業種から参入してきた大手に顧客が流れている」のではないでしょうか。「毎年同じことの繰り返し」だと元請・下請関係なくじり貧になっていきます。
改めて以下の点を見直してみましょう。
①自社が今、営業している地域におけるシェアと見通しを考える
②向き合うべき顧客は今のままでよいか考える(大手と取り合いはしない)
③集客方法は今のままでよいか考える
①は前回の記事の通りです。
②は大手が展開していないエリア、工種を狙う、大手のサービスには満足していない高所得層を狙う等です。大手が進出していないスキマのエリアでシェアを獲得している工事会社もありますし、不動産会社やデザイン会社と連携し、医師・弁護士に特化している工務店もあります。
③集客については新築などの若年層が顧客の場合はネット(ホームページとSNS)、リフォームなど、高年齢層が顧客の場合はネットとリアルの併用など改めて自社の顧客層に応じて見直しが必要です。
最新の調査では顧客はコロナ禍の影響もアリ「ネットで情報を収集してから対象を絞り込んで来店する」傾向が強くなっているので、「ネットを抜きにした販促」はまず無いと言ってよいでしょう。
この記事を書いた人

クラフトバンク総研 所長 / 認定事業再生士(CTP) 髙木 健次
京都大学在学中に塗装業の家業の倒産を経験。その後、事業再生ファンドのファンドマネージャーとして計12年、建設・製造業、東日本大震災の被害を受けた企業などの再生に従事。その後、内装工事会社に端を発するスタートアップ・クラフトバンク株式会社に入社。
2019年、建設会社の経営者向けに経営に役立つデータ、事例などをわかりやすく発信する民間研究所兼オウンドメディア「クラフトバンク総研」を立ち上げ、所長に就任。
テレビの報道番組の監修・解説、メディアへの寄稿、ゼネコン安全大会、業界団体等での講演、建設会社のコンサルティングなどに従事。
・YouTube出演
「石男くんの建設チャンネル(@construction-Youtuber)」にて多数出演