クラフトバンク総研

前橋林業土木協会

更新日:2026/8/10

【報われる社会構造を】

 2020年に鈴木秀城氏(笠原建設・代表取締役社長)が、前橋林業土木協会の会長に就任した。同協会は、群馬と栃木、福島、新潟の4県に渡り、52社の会員企業で構成される広域組織である。鈴木会長は「担い手不足や事業量の不安定さなど、林業土木を取り巻く環境は極めて厳しい状況に陥っている。しかし、協会として過酷な環境下で山林関係の仕事に携わる人々が報われるよう、徐々にでも社会構造を変える努力を続けたい」との一貫した信念を掲げる。現在は、新潟県建設業協会の副会長も兼任しており、地域のインフラと林業土木業界の更なる発展に全身全霊を捧げている。

【林業の活性化に向けて】

 新潟県の特に上越・中越地域は、古くから地滑りや地震の脅威と隣合わせの状態が続いてきた。このため同エリアでは、事業の比率が林道整備より、山地を抑える「治山」に置かれてきた歴史がある。鈴木会長は「林業活性化という大きな目的を達成するには、治山をさらに進めながら『林道』に取り組むことが不可欠な要素。このインフラを再度機能させることで現場に活気が戻れば、山を支える人々の声も増えていくはずだ」と林業土木の果たすべき社会的意義を訴える。こうした理念を実現するため、協会では発注者と綿密な連携を図り、関東森林管理局との意見交換会を定期的に開催。予算に反映させるための地道な草の根活動を続けている。

【「選ばれる森林土木」を目指す】

 業界共通の難題である担い手の確保について、鈴木会長は「地元で生き残れるという未来や夢を提示することが重要」と説く。自社では、約180人の全従業員を直接雇用し、現場を支える技能職を1から育成する体制を貫いている。特筆すべきは技術者の約2割を女性が占めていることだ。鈴木会長は女性の入職が続く理由を「先輩の働く姿を見て、次の世代が自然と続く好循環が生まれているようだ」と分析。採用の門戸を土木系学科以外にも広げることを心掛けており、普通科出身者も積極的に受け入れ、入社後に技術を習得できる環境を整えている。「人々の暮らしを下支えする仕事は格好良く、誇らしいもの。協会としても『選ばれる森林土木』であり続けるため、魅力の発信を加速させていく」とその視線は常に前を見据えている。

【インフラ整備は「未来への贈り物」】

 鈴木会長は、公共事業を単なるコストや「負の遺産」と捉える世論に対し、「インフラ整備とは、将来の世代に対する『贈り物』である」と異なる視点を示す。北陸自動車道の建設に伴う掘削土を活用して造成された「マリンドリーム能生(糸魚川市)」が地域に雇用を創出し、観光拠点として活気をもたらす例を挙げ、「短期的な数値だけでは決して計れない持続的な価値が、公共事業には常に宿っている」と主張する。昨今の国防や経済安全保障の議論も引き合いに出し、「経済安保の世界では、多少コストが掛かっても国内の供給網を確保することの重要性が語られている」。その上で「建設産業も同様であり、国土を守ることは『社会安全保障』そのものだ」と公共投資の在り方を提言する。公共工事が、費用対効果との比較で切り捨てるべきと言われて久しい。しかし、一度手を緩めれば地域の安全はあっけなく崩壊を招き、人々は住む場所を喪失する現実は、昨今の天変地異の際に明らかになっている。「社会を安定化させていくには、効率性という物差しを一旦度外視し、コストをしっかりとかける必要性がある」と繰り返し必要性を説く姿は象徴的である。国土を次世代に引き継ぐことを心掛け続ける鈴木会長が訴える概念は、建設産業の価値を再定義するメッセージとして、今後も色濃く残っていくはずである。

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