寿建設が「シン・大変化」をテーマに飛躍に挑む
更新日:2025/4/25
寿建設(福島県福島市)の森崎英五朗社長は、「最大のピンチは『今』だ」と強調する。社長就任から約18年間、さまざまな波がありながらも業績は堅調に推移し会社も一定の評価を獲得できている。しかし、現状を「ぬるま湯」と断言する理由を、「現在は大きなトラブルなく、たまたま安定した経営ができているだけ」と分析する。会社の歴史を辿ると社会情勢の変化や自然災害などの外的要因を受け、対策せざるを得ない危機が幾度もあった。自身の性格を「ひねくれ者」と謙遜するが、常に最悪の状況を想定する経営者特有のスタンスが備わっていることが分かる。

祖父がトンネル屋として創業した会社に、森崎社長が3代目の社長に就任したのは2006年。当初は継承する気はなかったが、身内が事業継承することが前提という時代背景もあり、入社後は現場や総務、営業などを歴任し、経験を積むごとに会社経営の奥深さを身に付けたという。「社長になった前後数年間は、主要な取引先だった企業の経営破綻や競争入札の激化、現場での事故の多発などの問題が続き、自社も倒産の危機を迎えるなど今思えば苦難の連続だった」と当時を振り返る。復調の兆しを見せ始めた時期に発生したのが2011年の東日本大震災。本社がある福島市周辺でも福島第一原発事故の影響で、大規模な除染作業が進められるようになった。多くの建設会社が除染事業を手掛ける中、「これからは補修の時代」という考えを重視し父の代から取り組んできた、トンネル屋としての経験を活かしたトンネルを中心とした補修事業への注力を選択。「当社には長年積み重ねたトンネル補修の特殊技術という強みがある。補修専門の会社は多くあるが、調査段階から携われるノウハウは付加価値として将来に亘り提供できると考えて決断した」と語る。時代の趨勢や周囲に流されず、信念ともいえる「独自の技術」を突き詰めた結果、経営は回復を見せることができ、現在の「トンネル補修といえば寿建設」というイメージ定着に繋がったようだ。


今年何よりも優先すべき事項は「働き方改革」と明言。「労働時間の規制緩和も終了し、なんとしてでもやるしかない状況。昨年度は働き方改革の推進に向け、3つあった工事部署を1つに統合するなど具体的な対策を実行した。引き続き、現場に皺寄せがないよう、どの方法がベストか試行錯誤する」と見立てを話す。最近では、世代交代も視野した取り組みや業務のデジタル化など、意識改革も進めている。

寿建設が掲げる2024年度のテーマは「シン・大変化」。新たな時代を迎えるに当たり、前年度の「大変化」をより「深め」、更に「進める」という意味を込め、「シン」を付け加えた。森崎社長が重要視してきた顧客・社員との「信頼関係」を更に刷新していくことはできるのか。2024年度も寿建設は、更なる飛躍に向けた着実な歩みを心掛けていく。

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この記事を書いた人

クラフトバンク総研 記者 川村 智子
新卒で入社した建設コンサルタントで、農地における経済効果の算定やBCP策定などに従事。
建設業の動向や他社の取り組みなどに興味を持ち、建通新聞社では都庁と23区を担当する。
在籍時は、各行政の特徴や課題に関する情報発信に携わる。2024年よりクラフトバンクに参画。
記者として企画立案や取材執筆などを手掛けている。