CCSで会社を強化。オアシス・イラボレーションが若手主体の組織に舵を切る
更新日:2025/4/25
オアシス・イラボレーション(高知市)は、今年5月からCCS(コーポレート・カルチャー・スタンダード) の導入を開始している。CCSとは、オアシス・イラボレーションのミッション・ビジョン、バリューなど、独自の組織哲学を盛り込んだ冊子を輪読・唱和することで、社員同士の認識を共有・向上するための時間。オフィスだけでなく、現場単位でも毎朝開催しており、会社として目指す方向性や価値観をすり合わせることで、社内で起こり得るすれ違いの事前対策を手掛けていると同時に、一体感の醸成を行なっている。


川渕誉雄社長は、「社員が増えるにつれて、組織が無駄に膨張していく印象を受けていたので、CCSの導入を決断した。これまでもコンサル企業を入れて、様々な方式を試してきたが、ここまで会社全体の強化を実感できたことは無かった。もちろん、自身のやり方とCCSが合わないと退職する社員も居た。しかし、会社が導き出したベクトルに難色を示す状況が続くのは、双方にとって健全ではないと納得して貰った経緯がある。新卒採用では、入口の段階で組織に共鳴する学生が名乗り出始めているので、今後も継続とバージョンアップを心掛けていく」と実感を述べる。CCSは3ヶ月毎の更新を予定しており、川渕社長の組織マネジメントに対する本気度が見て取れる。

川渕社長がオアシス・イラボレーションの3代目・代表取締役に就任したのが2005年。当初は、資金調達と営業活動の奔走に多くの時間を割いていたが、大型重機の納入と資格保有者を増やすことで大幅な業績向上を実現。「解体現場は、所有する建機をどのように組み合わせるかが重要なポイント」とバリエーションを増やし、顧客の期待に応えてきた。昨年には、「会社は社長のマインド以上は大きくならない。持続的な経営手法を身に着ける必要がある」と川渕社長自身がMBAを取得。これまでの経験と感覚に加え、論理的な知識・思考を兼ね備えたことで、同社が数年先に目指すIPO実現の可能性が格段に高まったことが予想される。

「現在、解体から建築、不動産の全てを、一気通貫で取り扱っていく構想を立ち上げている。今後は、これを具現化するために建築部門を新規で立ち上げるか、M&Aを選択するかを真剣に吟味し、10年後には売り上げ1000億円を達成することが目標だ。実現には、若手の育成や更なる組織強化が必要など、まだ改善すべき点は多く残っている。しかし、会社が成長するにつれて、高い志を持ち、変化を希望する新卒が増えるなど、年々具体策の明確化が進んでいることは間違いない。今後も経営者として、社員全員が生きがいを持って働ける組織作りができるよう、努力していきたい」と展望を語った。取材中、川渕社長からは何度も「若い人にリーダーを任せたい」という言葉が出ており、この先の組織運営でも「いかに若手を幹部に引き上げ、モチベーションを阻害しない環境を作れるかが肝」と語っていた。既に若手を主体とした組織にシフトし始めているオアシス・イラボレーションだが、その更なる先の到達点に辿り着けることが出来るのか。「最近の若者はすぐに辞める」というセリフが根付いてしまった企業にこそ、同社の成長過程はカンフル剤として機能するはずだ。
この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。