正反対の2人が、拓伸の更なる躍進を担う
更新日:2025/4/25
仮設工事業などを手掛ける拓伸(神奈川県逗子市)は、2016年の会社設立から現在まで右肩上がりの売り上げを記録し続けている。会社経営の舵取りを担うのは、松田拓也社長と安藤優副社長(写真)。安藤副社長が、「今年こそ、売り上げが落ちるのではないか」と不安で対策に余念がない日々を送るのに対し、松田社長は「たぶん何とかなるさ」と極めて前向きなスタンスを堅持する。悲観と楽観。会社が躍進を続けている現状でも、常に2人は対局の考えを持ちながら事業に取り組んでおり、それが業績を押し上げている要因という特別な現象が起きている。

安藤副社長は、初期メンバーとして拓伸に合流した理由を「私自身は仕事の確保などはできるが、人を集められる自信がなかった。これに対して社長の松田は、大雑把な性格だが、とにかく皆が魅力に引き寄せられて集まって来る。2人が真逆の性格だからこそ、一緒に会社を運営すれば、きっと上手くいくと考え入社を決めた」と当時を振り返る。松田社長も「いつも冷静かつ的確、時には厳し過ぎるとも思える安藤の指摘は、会社にとって必要不可欠になると感じ入社の依頼をした」と話しており、双方が足りない部分を補い合う理想の関係性を構築できたことが、拓伸の強みだと見て取れる。


安藤副社長は現在、「全社員が目の前のことに全力疾走し過ぎているので、早急に組織としての仕組み化を進めていきたい」と見立てを話す。特にこれまでマンパワーに頼り切っていた社員の育成方法を確立する意向で、「誰が入っても1人前に育つシステムの構築は急務だ」と強調する。常日頃から松田社長が、「社員が『一生働き続けたい』と思える環境を整えたい」と話している通り、今後は「離職率が圧倒的に低い会社を作り上げる」という経営者として究極の目標に挑む方針であり、この挑戦がどのような変遷を辿るのか興味深い。

安藤副社長は、直近の目標を「これまで培ってきた技術を更に伸ばし、『拓伸に任せれば全てが安心』という評価が定着できるよう最善を尽くす」ことを明言。会社が掲げる「3A(挨拶、安全、安心)の精神」も若手社員には浸透しており、会社の成長に陰りが見える気配は現状では皆無である。安藤副社長は、「好調な今だからこそ組織を安定化させ、売り上げの主体となる仮設工事以外の選択肢を見出したい。今後は『人を育てること』に重点を置いた経営で、微力ながら建設業界の発展を下支えしていく方針だ」と意気込みを語り、先を見据える。正反対の人間性の2人だからこそ、相互補完する形で上手く循環する組織。意見の相違による議論は日々繰り広げているが、喧嘩に至ったことはないようだ。会社のトップは参謀にどのようなタイプを置くべきか。松田拓也社長と安藤優副社長の関係性には、大きなヒントが隠れている。
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この記事を書いた人

クラフトバンク総研 記者 川村 智子
新卒で入社した建設コンサルタントで、農地における経済効果の算定やBCP策定などに従事。
建設業の動向や他社の取り組みなどに興味を持ち、建通新聞社では都庁と23区を担当する。
在籍時は、各行政の特徴や課題に関する情報発信に携わる。2024年よりクラフトバンクに参画。
記者として企画立案や取材執筆などを手掛けている。