Saaaveが再チャレンジ雇用を基軸に、次のステージを目指す
更新日:2025/5/30
Saaave(埼玉県所沢市)の星山忠俊社長は、2022年6月に発足した日本足場会の代表理事を務めている。「ゼロから経営手法を共有できる場を提供したい」と、10社の同志たちと新たに立ち上げた足場施工を専門とする団体。活動開始から3年目を迎える状況だが、執行部の創設や例会の定期的な開催などを実施したことで、順調な体制強化を進められている。

日本足場会を設立した理由を星山社長は、「私自身が創業後、会社を軌道に乗せることはできたが、経営面を学べる機会が無かったので、組織運営に苦慮する現実に直面したことがあった」と振り返る。周囲にも困難な状況に陥った際、相談できる相手が居ないケースが多く、「このまま各々が我流で進め続ければ、いずれ足場業界の行き詰まりに繋がる」と感じ、有志のみで立ち上げた会員数は現在64社まで増加している。



星山社長は、2019年に少年院出院者を採用する「再チャレンジ雇用」を開始した。取り組み着手の動機を、「最初は社内の人手不足を解消するためだった」と本音で語る。現場で慢性的に発生する人材不足を解決するには、知人から「少年院を出所した人が最適なのでは」と提案され、即座に現地へ赴いたという。実際に刑期を終えた人と対面して初めて気付いたことは「彼らには、働く場を得るためのチャンスが極端に少なく、この状態の継続こそが再犯に繋がるリスクと痛感したこと」。まずは生活の困窮という悪循環を断ち切るため、働く場を提供し、「自分の会社で働き続けることで、自然と通常の社会生活に戻れるサイクルを構築したかった」と率直に話す。時には俗に言う「やんちゃ」な社員も現れるが、入社前の覚悟や出所前の手紙での度重なるコミュニケーション、採用後も実家に本人も同席した上での訪問を続けていると、不思議と社内での良好な関係も作れるようになり、「徐々にだが活躍できる人材に成長するようになる」と感慨深げに話す。周囲からの「なぜそこまでするのか?」との質問に対しては、常に星山社長は「人が好きだから」と即答。「困っている人が居て、自分に出来ることがあれば力になりたい。仕事をするなら雇用創出も含め社会貢献にも繋げたい」との気持ちは誰よりも強く、再チャレンジ雇用を更に定着させ、将来的には社員数を50人規模にする意向も掲げている。


当面の目標を星山社長は、「再チャレンジ枠の人だけで一棟組める体制を作ること」と述べる。最初は周囲から不安視されていた社員が飛躍的な成長を果たし、一目置かれる存在に変貌を遂げた時の喜びは「何物にも代えられない」と醍醐味を話す。現在、最優先事項として挙げているのは「社員が辞めたくない組織を作り上げること」。その実現には、教育や安全の配慮はもちろんだが、「何よりも技術やマナー、モラル意識を高められる仕組みが必要」と気付いている。自社内を強化した過程を「日本足場会にも浸透させたい」と想定するなど、為すべきことは多い。「本気の反省と行動を継続すれば、やり直しができる会社」。Saaaveの取り組みは、日本経済の再生にも直結しているはずだ。

この記事を書いた人

クラフトバンク総研 記者 川村 智子
新卒で入社した建設コンサルタントで、農地における経済効果の算定やBCP策定などに従事。
建設業の動向や他社の取り組みなどに興味を持ち、建通新聞社では都庁と23区を担当する。
在籍時は、各行政の特徴や課題に関する情報発信に携わる。2024年よりクラフトバンクに参画。
記者として企画立案や取材執筆などを手掛けている。