SAKURAが、経営の多角化を視野に動く
更新日:2025/5/2

岩手県や宮城県などで塗装工事を手掛けるSAKURA(岩手県盛岡市)は、今年1月25日に会社を設立した。社長の櫻井快斗氏は、20歳で個人事業主として開業後、元上司や実の妹、協力業者など参画したメンバーと共に規模を拡大。取引案件や協力業者が増え続けている状況を考慮し、「SAKURA」の法人化を決断した。


櫻井社長は「真相を包み隠さず話すと~」と前置きした上で、会社設立に至った要因を「昨年、一挙にメンバーが3人も増えた影響で売り上げが急増し、出入金の双方が莫大に増え過ぎたことだった」と照れながら振り返る。社長自身も現場に出て施工に奔走していた為、計上などの数値感覚が今ほどなく、処理が追い付かない事態が発生。赤字ではなかったが、1人親方時代に事業用として蓄えていた貯金を全部支払いに回す結果に陥った直後、「個人事業主としては、ここが限界点。法人化して経営者として組織運営に専念できるスタンスに切り替えようと悟った」と話す。会社設立以降は、社内で各々の役割分担や持ち場などを明確化し、社長が現場に立たなくても回る組織を確立。会社にしたことで銀行との付き合いもできるようになり、社内の数値を見て現場の詳細まで把握できるようになったという。


昨年まで塗装業一本で事業を進めてきたが、不動産関係やフランチャイズ店舗などの案件に携わる中で、清掃関連の仕事を得られてきた。これを機に、今年から社内に清掃事業部を設置。その理由を櫻井社長は、「岩手県内での塗装業だけの伸び代を考えると、正直に言って天井が見え始めてきたから」と本音を話す。事実として今期の売り上げ見通しが、創業70年近くになる古巣の塗装会社に近付き始めている。この現実を鑑みて、「現在は、足場や大工、内装やクロスなど、新たな基盤を作ることを目指している。年内には、産業として成り立つかのシミュレーションを終え、人集めや取引先の確保まで進めたい」と先を見通す。常に現況を客観視でき、具体策にまで考えが及ぶ独自のスタンス。この新規事業が順調の伸びを見せられたら、3~4期目を目処に飲食業に参入することも視野に入れるなど、その飽くなき構想力は他の追随を許さない様子である。


「現在、私が頭の中で計画する先の未来が具現化できるよう、今期は塗装部門と清掃部門に集中し、売り上げを飛躍的に伸ばす方針だ。実現には従来とは違った人脈の獲得手法や、当社が魅力的に映る実績を積み上げ、会社の規模を拡大していく必要がある」と先を見据える。塗装技術者集団として、更なる躍進を遂げる必要があるなど課題も多い。「しかし、この現状を会社一体となって克服し、新たな可能性を創出できるよう全力を尽くしていきたい」と展望を語った。
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この記事を書いた人

クラフトバンク総研 記者 川村 智子
新卒で入社した建設コンサルタントで、農地における経済効果の算定やBCP策定などに従事。
建設業の動向や他社の取り組みなどに興味を持ち、建通新聞社では都庁と23区を担当する。
在籍時は、各行政の特徴や課題に関する情報発信に携わる。2024年よりクラフトバンクに参画。
記者として企画立案や取材執筆などを手掛けている。