COZUCHIで新たな希望を創出へ LAETOLI
更新日:2025/4/28
LAETOLI(東京都港区)は、2021年に「COZUCHI」の提供を開始した。COZUCHIは、不動産特定共同事業法を活用した、不動産投資型のクラウドファンディングサービス。1万円からの不動産投資を実現し、中途換金制度を設け、資金の流動性を確保することで、先を見据えた投資環境を整備している。リリースから4年弱の期間で登録した投資家の数は8万人、累計調達額も882億円を超えた状況となっている。順調な発展を続けているが、武藤称社長は「クラウドファンディングの商取引総額は、年間1000億円以上となっている。不動産全体で数百兆円の規模が動く世界では、まだマイノリティに当たる。当社では、この状況を伸び代と捉え、COZUCHIの普及促進に注力したい」と明確なスタンスを述べる。

武藤社長は、大学院まで建築学を学び、学生時代からリクルート創業者である江副浩正氏の設立したスペースデザインに所属し、土地の仕入れなどに奔走した経歴を持つ。在籍時から「不動産・建設において、『ものづくり』と『企画』を事業にコミットさせることが困難な中、建築家の業務進捗が変わらないことに、もどかしさを感じていた」と当時を語る。江副氏に「小さな案件でも魅力的な商品にリノベーションし、テナントの全てを埋められる環境を作れば、新たな需要を見出せるのでは?」と提案するも、「日本人は古い物が嫌い。新しい物しか売れないです」と返答されたことで起業を決意したという。その後、リーマンショックを経験したことで「金融機関だけに頼る資金調達では、非常時を乗り切れない。キャッシュフローを生み出す仕組みまで含めた事業構造を構築する必要がある」と悟り、自身が設立したTRIAD(東京都港区)の経営を後進に譲る形で、2019年にLAETOLIの社長に就任した。

COZUCHIが浸透した要因を、武藤社長は「不動産特定共同事業法の改訂と、それに伴う電子取引の免許解禁。またコロナ禍におけるDXの加速化という、転換期の波に乗れたことが大きかった」と分析する。不動産部門はTRIADと連携する形で展開し、社内にはマーケティングとファンドの出入金などを管理するメンバーが機動する。特有の商品形成と資金調達。学生の頃から自身が培ってきた知見を最大限に活かし、時代の流れに呼応しながら事業を進められている点が特徴である。

現在は、1〜2年程度の短期間でのファンドが主流を占めているが、「今後は中長期を考慮したファンド運用に力を入れる」と展望を述べる。先を見据えて買った案件を、途中で他の投資家に売ることで現金化できる仕組みは既に構築しており、どのよう過程を経て広がりを見せるか注目である。武藤社長には、常に投資家の利便性と安心感を追求し、資金の流動性を最優先すべきという理念がある。不動産・建築物にニーズを生み出し、利益と価値を共存させることは、地域の活性化・社会課題の解決に直結する。テクノロジーを介した武藤社長の挑戦が長期的に定着した時、不動産・建設産業界に新たな希望が見出されていくことは間違いない。
この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。