組織変革を実現したローカスブルー。Deep3で社会課題の解決を目指す
更新日:2025/4/28
ローカスブルー(東京都渋谷区)は1月20日、国土交通省が主催する「PLATEAU STARTUP Pitch」にて、「GRAND-PRIX」を受賞した。同イベントは、3D都市モデルを活用した上で、新たなプロダクトサービスを生み出すビジネスアイデアを7分間で発表し、審査員の講評により各表彰を決めるもの。宮谷聡社長は当日、3Dデータ処理専用AIエンジン「Deep3(ディープスリー)」についてのプレゼンテーションを行い、最優秀賞GRAND-PRIXを獲得。4月の正式リリースに向けて、弾みをつける形となった。
宮谷社長は、「これまで、自動解析オンライン3D点群処理ソフト『ScanX(スキャン・エックス)』を主軸に展開してきたが、『Deep3』の開発を機に新事業部を設立した。両製品ともにコアな技術は同じだが、Deep3はディープラーニング等を使い、信号や標識、電柱、街路樹など、様々な分類が自動で行えるようになる」とポイントを語る。ScanXが中小建設業に特化したSaaSだったのに対し、Deep3は大規模な3Dデータを扱う企業に3D・AIエンジンをAPIとして提供できる。ユーザーの案件毎に処理モデルをカスタマイズし、テラバイト(TB)を超える場合は、HDDでの受領・納品が可能なこともあり、既に電力会社や自動運転関連会社でのプロジェクトを進行しているという。
ローカスブルーは、半年ほど前より「永続する組織」を目指し、宮谷社長はビジネス・プロダクト面における大部分の権限を双方の責任者に委譲。ルールの明文化を進めたことで、宮谷社長がファイナンス以外で参加する社内業務は、新事業や中長期計画の策定、採用など限定的なものに変化。この現状を「各部門が能動的に判断し、スピーディーな対応ができる組織に変革し始めている」と手応えを感じている。昨年末には、7社から総額約4億円の資金調達を実施。取り組む事業が社会課題を解決し、変化に適応した成長・転換を伴っている点、社員のバックグラウンドがユニークな点などが評価された結果となった。これはローカスブルーが、次のステージにステップアップする上でのメルクマールになりそうだ。
「これまでScanXを通じて建設業界に向けて点群データを取り扱ってきたが、今後はScanXをさらに普及させつつ、インフラ業界など少し視野を広げた形でDeep3を活用していきたい。4月からの正式リリースにはまだ時間があるので、もちろん改善・改良にも注力する。5年後には『3Dデータが関わるところには、ローカスブルーがいる』という状況が定着しているよう、積極的な挑戦を繰り返していく」と意気込みを語った。宮谷社長の目標は、「Locus Blue=グーグルの3D版」という評判が浸透すること。盤石な体制を築きつつあるローカスブルーが、次に打つ手は何か注視すべきだ。
この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。