「圧入技術」を世界に発信。技研製作所がRED HILL 1967をオープン
更新日:2025/4/28

技研製作所(高知市)は、今年5月に「RED HILL 1967」をオープンした。RED HILL 1967は、「百聞は一見に如かず」をコンセプトに、同社の独自技術・圧入原理の優位性を可視化し世界に向けて発信することを目的にした施設。施設内にある実証展示場や創造館、研究棟などで、実物の機械、工法、構造物を体感し、圧入技術の詳細を学ぶことができる。



経営戦略部の冨山明秀部長は、「RED HILL 1967を整備した高知県香南市赤岡町は、当社グループの創業者であり現会長の北村精男の生誕地。圧入原理の発見者を生んだ地から、圧入技術の魅力を心から理解してもらい、世界に発信するために建設した施設だ。圧入とは、既に地中に押し込まれた杭・矢板を数本掴み、その引抜抵抗力を反力として、次の杭を油圧による静荷重で地中に押し込む工法技術だが、特に海外では実物を見て頂く機会が少なく、世界的な知名度の浸透に悩む状況が続いていた。今回のオープンを機に、圧入原理の普及促進に更なる力を入れていきたい」と意気込みを語る。北村会長は、冨山部長の入社した頃から「圧入は、重力を必要としない技術の為、原理上は宇宙空間でも施工可能である」と唱えており、図らずも2021年10月に政府主導の「月面等での建設活動に資する無人建設革新技術開発推進プロジェクト」にて、「F/S(可能性調査)」ステージとして採択されたことで、その仮説が認証されたことになる。現在、同プロジェクトは、「技術研究開発(R&D)」ステージに進み、技術開発や実証に着手。圧入が建設のあり方を大きく革新するポテンシャルがあることが理解できる。


技研製作所は現在、中期経営計画(2022年8月期~2024年8月期)を実践しており、当面は2031年8月期の売上を1000憶円、そのうち海外比率を50%に伸ばす方針などを固めた。冨山部長は「壮大な目標になるが、インプラント工法のパッケージ化や、技術提案に特化したグローバル化などを堅実に進めれば達成可能だと想定している。実際に当社のグループ企業を中心とした合弁会社が、アムステルダム市と連携協定を結び、護岸改修で圧入工程を完了させるなど、徐々にだが様々な国で結果が出始めている。こうした技術提案から圧入市場を創造する成功パターンとして積み重ね、世界各国での展開に繋げていきたい」と見立てを話す。デジタル技術でリソースを最適化し、更に進化した工法を目指すなど、実現に向けた具体策にも既に取り組んでおり、普及促進に向けた準備は整いつつあるようだ。
冨山部長は「当社は、『公害対処企業』として創業以来、常にサステナブルな社会への貢献を目指してきた。当社の原点は、社会課題を解決すること。今後も経営方針である『インプラント工法で世界の建設を変える』というテーマを具現化できるよう、グループ一丸となって挑戦を続けていきたい」と展望を述べた。

6月20日には、国土交通省が国際競争力の強化や海外進出の後押しを目的に立ち上げた「第6回JAPANコンストラクション国際賞」の表彰式が開かれ、技研製作所は「先駆的事業活動部門」を受賞。グループが参画する「オランダの世界遺産運河の護岸改修プロジェクト」が、海外の「質の高いインフラ」の実現に貢献していることが評価された。世界における圧入技術のプレゼンスは着実に上がっている。世界を意識する建設企業の中には、技研製作所のグローバル企業に向けた、更なる業容拡大や企業価値向上の過程を参考にすべき点が多いはずだ。

この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。