「唯一無二の職人集団」を定着へ。髙津建設が体制強化に備える
更新日:2025/5/30

リフォームや公共事業など幅広い工事を手掛ける髙津建設(福岡県飯塚市)では、取り扱う木材を特一等材のみに限定することを信条としている。特一等材とは、四面均一の角を持ち、節がより小さく、耐久性に優れた希少な状態の木材。これ程までに徹底する理由を髙津秀人社長は、「元大工として、最高品質の素材による施工を届けることを使命としているから」と即答する。年間300件以上となる全ての案件で、手間暇かけたサービスを提供しており、特に地元の顧客からは「いつも要望以上の成果を出してくれるので重宝している」と厚い信頼を得ている。


髙津社長は、個人事業主として長く事業を展開していたが、「もっと大規模な仕事がしたい」と2010年3月に会社設立を決意。法人化以降は、個人では成し得なかった資材の大量発注も可能になり、現在の下請け工事を一切しない完全自社施工のスタイルを確立できたという。これまで最大のピンチは、コロナ禍でリフォーム工事に関する個人客がゼロに陥ったこと。極めて数は少ないが、何とか外構工事などに携われてはいた。しかし、瀕死の経営状況に変わりはなく、「このままでは全ての職人を外部に流出させてしまう」との危機感から、自社事務所のリフォームを発注することで需要を作り出し、何とか人材流出を防いだ過去がある。その後、この極限状態を救ったのは、過去の顧客(OB)。創業当初より髙津建設では、天変地異が巻き起こった際、高齢者のOBに対して「破損物の修理や荷物の移動など、無償で積極的に駆り出ること」を徹底していた方針が功を奏し、「しばらくすると、OBから『今度は、私たちが髙津建設を助ける番だ!』と、規模を問わず多くの注文を頂いたことで命拾いをした」と感慨深そうに振り返る。髙津社長が「個人客からの依頼は、例え500円の棚の修理であっても絶対に引き受けるように」と指示し、忠実に社員が従い続けてきた結果が、思わぬ形で会社を救済したという、髙津建設を象徴するような出来事である。


髙津社長は、「もちろん売り上げ向上も重視しているが、今は件数をこなすことで、当社が唯一無二の職人集団だということを周知したい」と当面の目標を語る。数年前から特に社員の採用・育成に力を入れており、現場を最優先にした教育を圧倒的に低い退職率に繋げたという実績も残し始めている。この体制を維持したまま、社員を増加できるかが直近のテーマになりそうだ。「民間だけでなく公共工事など、まだ工夫次第では様々な部分で取れる余地が残っている。現在、進めている組織強化を成し遂げることで、会社としての可能性が更に拡張できるよう全力を尽くす」と並々ならぬ覚悟を見せる。「課題は多い。しかし、あらゆる工事に対応できる強みを活かし、今後も建設業を通した地域貢献ができるよう、地に足の付いた活動を継続していきたい」と意気込みを語り、先を見据えている。
髙津建設のInstagram= https://www.instagram.com/takatsukensetsu


この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。