法人化した三栄ルーフが難題解決に挑む
更新日:2025/5/2
防水・外壁工事などを手掛ける三栄ルーフ(大阪府堺市)は、9月20日に会社を法人登記した。代表取締役を務めるのは、吉野健一社長。15年以上の職人としての経験を積んだ後、個人事業主として活動を続けていたが、インボイス制度の開始が目前に控えていること。また、現状の下請け工事を継続するだけでは、社内にゆとりが生まれず、若手育成も滞ると痛感したことなどから、会社を設立する決断をした。

コロナ禍でも業績は右肩上がりの状態を保っていた。しかし、吉野社長は「下請けのままだと、お客さまの顔が見えないことが大きな悩みだった。建設業界では、人手不足がひっ迫していると言われる反面、周囲は建設需要に溢れている感触もあった。この現実に直面し、『今の自分には何が出来るのか?』と自問した際、出てきた結論は『適正価格の見直しや、受注形態の変革』というものだった」。これら全てを実現するには、「施工品質を最優先事項に考える仕組みを作らなければならない。そのためには会社を設立し、組織を運営する側に回らなければ始まらない」と考えた。現段階で適正に仕事を各社に振り分ける存在にならなければ、すぐに価格の叩き合いが始まり、それは全ての専門工事会社にとって地獄のシナリオになり得る。「元請けになっていく」という自身の願望を一時封印してまで、「まずは身近な仲間たちと、この地盤固めを始める」と吉野社長の決意が極めて強いことが見て取れる。


吉野社長の現在はアスファルト防水工事や、屋根の葺き替え工事に注力。関西では、高齢化などによりアスファルト防水の施工業者が急速に減少しており、この面でも「早急に対抗可能な施工業者数を増やさなければならない」と危機感を募らせる。技術の継承はなされているとはいえ、このまま何もせず放置すると、若手の担い手が減り続け、貴重な職人の技術は途絶えてしまうと、後進の育成にも意識が向き始めているという。

「会社を設立して間のない状況だが、当社では人との繋がりを重視し、社員には働きやすい環境を提供したいと考えている。当社では、幅広い視野で人間的な成長も方針のため、独立も積極的に推奨していく方針だ。AIやロボットなど技術の発展が著しい昨今だが、どの仕事でも最後の決め手になるのは『人』。どこまでいっても対話に励み、業績を順調に伸ばし、全国展開も検討できるよう堅実な道を歩んでいきたい」。
この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。