利益重視の企業を増やす。行政書士法人みそらが「戦略的経審1.0」で組織変革
更新日:2025/5/2
行政書士法人みそら(静岡県浜松市)の塩﨑宏晃代表は、祖父が創業した昭和初期から続く建築塗装会社の長男として生誕。幼少期から父の仕事仲間である大工職人や設備業者と触れ合う機会が多く、建設業に愛着を持ちながら毎日を過ごしていた。将来を見据える時期に入ると、実家の跡取りは弟に譲ることを決断。行政書士試験の合格を経て事務所を開設後は、しばらく建設分野だけでなく、在留資格の申請や遺言・相続などの業務も手掛けていた。しかし、1年ほど前から「やはり、自分の慣れ親しんだ建設現場で働く人々を下支えしたい」と建設業に特化した業態に変更。今年7月に行政書士法人みそらは、開業20周年を迎える。

現在は、経審の最適化と会社の目的達成の双方を、逆算型で提案する「戦略的経審1.0」の普及促進に注力する。戦略的経審1.0とは、来期の経審を見据えて、顧客から上がる毎月の情報を基に整理・シミュレーションし、目標とのギャップから解決策をアドバイスするワンストップサービス。借入の状況や工事の出来高、社員の入退社、資格取得などの情報を分析。現在値や問題点をリアルタイムで情報共有し、徹底的に寄り添うスタイルが好評で、「徐々にではあるが、利用する企業が増えている」と塩崎代表は現状を語る。確かに金融機関とのお付き合いという形で直前に借り入れてしまったこと、また手続き漏れに気付けなかったことなどが原因で、「結果的に経審の加点に繋がらなかった」と、後になって嘆く建設事業者は少なくない。プランによっては会計事務所とも連携し、細かな気付きやアドバイスをその都度受けられるシステムであり、建設事業者がコア業務に集中できるサービスとなっている。塩崎代表は「2023年度から国土交通省のオンライン申請システム(JCIP)が稼働し、ほぼ全ての地域の事業者に対して、リモート対応できたことで、『戦略的経審1.0』拡大の可能性が更に広がった」と近々の変化を話す。「これまでの経審の取り組みを変革して、利益を意識した組織を創ることが『戦略的経審1.0』の目標」と塩崎代表が掲げた通り、浜松からの一手により、建設業界に新たな風穴が空きつつある。


行政書士法人みそらの顧客は、塩﨑代表の妻である明子氏が代表取締役を務める、株式会社みそら(静岡県浜松市)が提供する「家系図・ファミリーヒストリー」の作成も同時に依頼するケースが多いという。昨今では、自分のルーツに興味を示さない人々が増える中、建設業界では家族で経営に参画するケースが多いからか、先祖の辿った軌跡・詳細を深く知ることで、更なるステップを図る事業者が多いそうだ。みそらでは、戸籍調査やルーツ歴史調査、古文書読解や製本までワンストップで実施しており、塩崎代表と明子氏の2人は、文字通りタッグを組んで、建設企業とその家族を縁の下からサポートしていることが分かる。

「建設業の技能・技術の継承、組織の発展に貢献することが私の使命。今後は行政書士の立場から、各企業に経営面でのアドバイスも行えるよう、多角的なサポート体制を築いていく。地域の生活基盤を支える建設業は、国の根幹をなす必要不可欠な存在。引き続き、現場で働く人々の負荷が少しでも軽減できるよう、積極的な活動を行っていきたい」と塩崎代表は今後の目標を述べた。

この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。