DXの積極導入で若手が定着。幸建が建設業界に希望を照らす
更新日:2025/5/2
基礎・外構・造成工事などを手掛ける幸建(愛知県春日井市)は、2023年1月1日にDX認定を取得した。DX認定制度は、経済産業省が「情報処理の促進に関する法律」に基づき、DX推進の模範的な企業を認証する制度。これまで幸建が、9種類のDXツールを駆使し、社内の生産性向上を実現してきたことが評価された。愛知県内の建設事業者でDX認定を取得した企業は、幸建が初めてとなる。


山本邦夫社長は、「5年ほど前から、『スマートフォンとクラウドシステムを繋ぐことで、事務負担を減らすこと』を念頭に、原価管理システムや勤怠・給与管理、請求書の電子化など、徐々に浸透度を見極めながらDXを取り入れてきた。導入を決めた大きな理由は、『働く現場を快適にしなければ、若い人が建設業を選ばなくなる』という危機感からだった。実際に若い人と接すると、スマホ操作に長けており、アナログな職場環境を改善しなければ、若手の採用・育成ができず、会社の発展に繋げられないと悟った」とこれまでの経緯を振り返る。導入開始から全社員が使いこなすまで、数年の時間を要した。しかし、「最前線で活躍する現場作業者が、コア業務に集中できる環境をDXで整備することが経営者の使命」と、周囲より早めに取り組めたことが、現在の社員・平均年齢29.7歳に直結していることは間違いない。

積極的なDX導入の他、幸建では特有の独立支援システム「AGNシステム」を完備。AGNシステムでは、建設業で将来、独立・起業を目指す若者に、事務スペースや重機、型枠などをレンタルや安価な費用で貸し出し、全面的なバックアップを行う。既に3人の社員が同システムを経て独立を果たしており、売り上げ1憶円を上げる人材も輩出しているという。「高齢化が進む中、建設業界に希望を持って働く若者が増えるようAGNシステムを始めた。社員が独立しても協力関係は続くので、この相乗効果は計り知れない。将来的には、独立する社員を20人まで引き上げ、マネジメントができるリーダーの増員を目指す」と意気込みを語る。


幸建では、入社した若手にはシェアハウス(独身寮)への入居を勧めており、寮の家賃は月額2万8000円と破格の値段を設定。その中には、駐車場やWi-Fi、電気、米飯などの費用も含まれている。入居者からは「他県から独り身で就職したので、最初は知り合いが誰も居ない状態だったが、同じ会社の仲間から直接サポートを受けることで、不要な孤独を感じずに済んだ」との声も上がっている。金銭面・精神面でギリギリの生活を続けると心身が疲弊し、マイナスのスパイラルに陥ってしまうケースが少なくない。山本社長は、「当社にとって、若手社員は無限の可能性を秘める貴重な存在。経営者として、若者の障壁となる物を極力取り除けられるよう、引き続きトライ&エラーを繰り返していく」と決意を述べる。

「ニッチな分野でダントツにならなければ、競争優位性に立てない」として、山本社長は、「基礎工事で東海No,1を目指す」と宣言。建設業界には50~60代の作業者が今なお多く、先を見通すと「若者に正しい努力と経営を行えば、利益を継続的に出す組織が作れるというサンプルを示したい」と熱い気持ちを話す。東海地方には、協力関係を結ぶ仲間も多くいて、何かあれば常に補完し合える状態にあることも強みの1つだ。「当面の目標は、売り上げ30憶円を達成することだ。DX・若手ともに定着したと評価された自体は嬉しいが、私の感覚では現在地も発展途上だと認識している。今後も既存のビジネスモデルの変革に挑戦することで、常に付加価値を生み出せるよう、より強固な体制を構築していきたい」と展望を語った。
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この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。