EV分野に進出のMAEKOU。元請けとしての役割拡大を目指す
更新日:2025/5/2

外壁塗装やリフォーム工事などを手掛けるMAEKOU(静岡県袋井市)の前田陽亮社長は、18歳で建設業界に入職し、22歳で起業を果たした。21歳の職人時代に、4階から転落し大怪我を負った経験もあった。しかし、退院後に当時の親方から「しばらく現場に立てないだろうし、営業を体験すれば今後に活きるはず」と、前向きな配慮を受けたことが「『早く起業したい』という気持ちをより強くした」と振り返る。
創業直後から現在に至るまで、毎年売り上げをアップさせ続けてきた。しかし、「30歳を過ぎる頃までは、現場作業から営業、給与計算など全てを1人で抱えていた。このままでは、年間の売り上げ3億円の領域を出ないと悟り、担当者に業務を任せ始めると、更なる成長ができるようになった」と当時の変化を語る。組織として会社を動かせるようになると、リフォーム事業にも力を入れられるようになり、新たな可能性を追求できるようになったという。2014年には、太陽光パネルを設置施工する会社「前光」も設立。現在に至るまで太陽光パネル設置の分野でも、確かな技術施工を顧客に提供しており、前田社長は「塗装」と「太陽光パネル」の双方で安定的な経営を継続できるようになっている。
これまで前田社長は、「必要とされるなら、全国どこにでも施工に行く」というスタンスで、静岡から全国の現場に出向いていた。しかし、千葉県や神奈川県からの要請が多くなっている現状を受け、近々にでも厚木近辺に支店を構える計画を発表した。「平塚や流山にある小学校の外壁塗装など、公共工事の案件も増えており、支店では社員を常駐させる予定だ」と戦略を話す。政府の「2035年までに新車販売の全てを電気自動車(EV)にする」という方針を受け、今年からは台湾企業が手掛けるEVステーションの施工代理店にも加盟。太陽光の施工で蓄積した施工力を、今後の需要増加が見込まれるEV設置に活かす算段だ。職人時代から従事してきた、建設業界で生き抜く覚悟はできている。しかし、「時代の過渡期を迎える現状では、より多くの選択肢を持つことが重要」とEV分野の進出を決めた。この前田社長の決断が、どのような変遷を辿って会社の可能性拡張に繋がるか。経営の多角化を目論む建設事業者で気になる層は多いはずだ。

長い期間、完全自社施工を貫いてきたが、今後は元請けとしての役割を多く果たしていきたいと、7月に特定建設業の許可を取得した。「元請けを主体にするということは、協力会社との固い信頼関係を結び、若い経営者の創出・育成にも力を入れる必要があるということ。この挑戦はまだ始まったばかりだが、まず静岡県内で実現できるよう全力を尽くしたい。慢性的な人手不足が叫ばれて久しいが、当社の『一塗り一塗りに想いを込めて』をモットーに、10年後20年後も見据えた会社経営を心掛けていく」。
この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。