世代交代を控える小野建設が、元請け体制を強化へ
更新日:2025/5/2
小野建設(秋田県)の小野人平副社長は、来年の秋頃を目処に3代目の代表取締役に就任する予定である。これまで同社は、環境保護と地域との調和を基本姿勢に事業展開しており、土木・建築・解体を手掛ける総合建設企業として、秋田県内の安全・安心を守ってきた。全国に事業承継に悩む企業が多い中、世代交代に向け着実な準備を進めてきた小野建設が、次のフェーズに進もうとしている。


小野副社長は、東京のサブコンで現場監督などを経験後、社長である父の要望もあり入社を決意。入社当初は、各部門で役割が分かれていた都心の現場と違い、「当社では、土工班で型枠や鉄筋、コンクリート工事など全て行う必要があったので、幅広い知識・業務を要求され、困惑しながら業務を進めたことを覚えている」と振り返る。当時は、2009年で民主党が政権を担っていた時期。「コンクリートから人へ」というスローガンの下、徐々に公共工事が削減されながらも、顧客との関係を強化するために奔走した日々は、「後に起こった東日本大震災後、現場からの要請で出向いた際に大きく役立った」と話す。被災地での解体・土木施工で復興に取り掛かった期間は8年に渡り、ここで共に時間を過ごした企業とは、今なお仕事を通じて固い関係で結ばれ続けているという。


これまで土木工事を主体としてきたイメージが強かったが、「現在は、秋田では取り掛かる業者の少ない、アスベスト除去工事に注力している」と語る。数年前には、ウォータージェットのポンプとバキュームカーを購入。大気汚染防止法が改正により、アスベスト関連の規制が強化される中、県内に「アスベストの専門家」として多くの声が掛けられるようになった。最近では、社内だけではウォータージェットを活用したアスベスト需要に対応しきれない為、重機や工具を協力会社に貸し出すことで、地域の課題を連携して解決する動きも活発化してきた。小野副社長は、かねてより「地域の方々から『小野建設に頼めば大丈夫』という安心感を獲得したい」という理想を抱いてきたが、その実現と現在地の乖離はそれほど大きくないことが見て取れる。小野副社長の入社時は30名程度だった社員数も、現在では64名までに増えているという現実が、その証左ではないだろうか。


「当面は、元請けとしての役割をこれまで以上に果たせるよう、ICT施工を強化するなど新たな挑戦に立ち向かう機会を増やしていきたい。まだ私自身も、社員が30名くらいの感覚で経営を手掛けている要素もある。今後は、効率を意識しつつ、マンパワーも活かすスタイルを早急に体現できるよう、あらゆる手段を尽くしていく方針だ」と展望を述べた。
余談になるが小野副社長が、定期的にアップするブログも好評で、入社希望者が面接で社内の雰囲気を把握するために、事前にチェックしてくる確率が極めて高いようだ。技術と知識豊富な「匠集団」が、次のステージではどのような活躍を見せるのか。世代交代後の小野建設の先行きが楽しみである。

この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。