太陽光発電の先を見据え、コクホーシステムが施工管理体制を強化
更新日:2025/5/2
コクホーシステム(藤沢市)の安田哲社長は、「自家消費型太陽光発電」に関する需要を見据え、社内の施工管理体制を強化すると表明した。自家消費型太陽光発電とは、ソーラーパネルを敷地内に設置し、発電した電力を所有者自身が消費すること。個人宅や会社などの空きスペースで太陽光発電を行い、売電せず自宅や会社内で電力を使用することをいう。

安田哲社長は、「国内では近年まで、電力の固定価格買取制度(FIT)を主軸に動いていたが、現在の電気代高騰やCO2削減に、各企業・家庭が圧迫される現実を見て、『まだコクホーシステムにしか出来ないことがあるはず』と施工管理の強化を決断した。当社は、工場の設備工事を手掛けることで始まった企業。これまで協力会社に頼り切っていた部分も多かったが、先を見据えると、より継続的かつ強固な組織編成を実施しなければならない。特に人材採用・育成面の対応は急務だ。今後、元請けとしての責任を更に全うするため、この難解な課題解決を進めていきたい」と戦略を話す。FITから自家消費に移行するに当たってのポイントは、耐荷重や躯体に関わる施工・技術力と言われる。当初から安田社長は、太陽光発電を「設備」と捉えており、「建設・設備の知識がなければ、いずれ行き詰まりを見せる」との見立てが、現実と合致する可能性が高くなっている。

ランニングコストの縮小は、CO2削減だけでなくSDGs推進にも繋がる。「この点を何となくは理解しつつも、具体的にどのような過程を踏めば実現に向かうか、理解する企業があまりにも少なかった」と安田社長は語る。これを象徴するように、コクホーシステムは今年、綜合警備保障(東京都港区)・千代田組(同区)と業務提携を結んだ。これまで自家消費型太陽光発電に携わらなかった大手企業が、コクホーシステムと連携することで営業やノウハウなどを学び、可能性を拡張している。きめ細かな指導も好評で、既に千代田組はこの機会を活かし、海外への進出も視野に入れるという。省エネとCO2削減とSDGs。正確な一手を打てば全て解決に向かう道筋は見えるが、現時点では誰も取り掛かれていない。これまで築き上げてきた強靭な建築ネットワークを持つコクホーシステムが、この千載一遇のチャンスをどのように掴んでいくかは見物である。

「当面は、屋根など現時点で余っている各所のスペースを活用し、安全・安心な自家消費型太陽光発電の施工ができるよう、施工管理の強化に注力する。国内に限っても全国には、工場やスーパー、商業施設など、様々な要請により省エネを迫られる企業は多い。この顕在的になりつつあるニーズを、当社が各地の地場に根差した建設業者と協力して取り掛かれるよう、まずは仕組み作りから取り組む。当社の理念は、再生エネルギーを通して持続可能な脱炭素社会を作り、素晴らしい地球環境を子供たちに繋ぐこと。2050年カーボンニュートラルの実現に向け、唯一無二の活動を続けていきたい」。

この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。