トーシンリフォームが世代継承に向けた動きを加速
更新日:2025/5/2

塗装・防水・屋根などの改修工事をメインに手掛けるトーシンリフォーム(相模原市)が、本格的な事業承継を開始して数年が経過した。後継者に目される社員は、田中徹正社長の長男である田中彪(あきら)氏。現在は現場職人と営業を兼任し、双方の場面で様々な経験を積んでいる。田中社長の年齢は48歳。早過ぎるとも言えるタイミングで決断した理由を聞くと、「私たちの仕事は、15年以上先のメンテナンスを保証するもの。先の道筋をお客さまに示さなければ、企業としての責任は果たせないと考え、周知することに決めた」と経緯を答える。次男の麟太郎(りんたろう)氏も在籍しており、トーシンリフォームは先を見据えた盤石な体制を築きつつあるようだ。



田中社長は、18歳から足場職人として建設業に入職後、塗装業に転身。自身の携わった案件で手抜き工事が常態化している現実を知り、「このままでは、お客さまが望む良い仕事が出来ない」と1年未満の現場経験ながら、一念発起し「トーシンリフォーム」を立ち上げた。創業当初は、大手企業の下請けとして稼働していた。しかし、大手メーカーからの厳しい予算内での業務が続く現状に限界を感じ、元請けとしての事業転換を決意。懇意にしていた不動産事業者の紹介やポータルサイトを駆使するなど、必死の営業活動を続けた結果、「ようやく自信を持って薦められる塗料と、適正価格で施工を行える環境を整備できた」と道のりを話す。直接依頼を受ける形に変えてから数年後には、顧客からの紹介や口コミでの問い合わせが増え、徐々に営業ゼロでも仕事が舞い込む現在のスタイルが定着していったという。定期的に顧客に送付する「塗人通信」も好評で、彪氏による会社の継承宣言もいち早く掲載。施工のこだわりや、社長のコラムなどの連載コーナーも人気を博しており、顧客との重要な接点となっている。


これまで堅実な成長を続けてきた実績が評価され、少し前からトーシンリフォームには金融機関などから「他店舗型へのシフト」や「経営の多角化」などの提案を受けることも増えてきた。しかし、田中社長は「私の掲げる使命は、当社が取り掛かる仕事の質と、職人の給料を上げていくこと。この2点を実現するために全精力を尽くすだけ」と断言する。「自分の見える範囲でしか事業を展開しない」という意志は固く、それ故に田中社長が月300時間を超える労働を自らに課すケースも少なくない。このような属人化を減少させていくためにも、早期に会社の若返りを目指す姿勢は大きな意味を持つ。「今後は、創業者である私が不在でも、問題なく組織が回る体制づくりを進めていく。幸いなこと当社の大部分の社員は20~30代。この数年間で、私が経験した大部分を社員全員に引き継げるよう、最善を尽くしていきたい」と見立てを述べた。少数精鋭で手堅く実績が積み上がり続けることのみに専念する。田中社長のブレないスタンスが、企業永続に近づくことは間違いなさそうだ。

この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。