次のステージを見据え、パックシステムが組織の盤石化を推進
更新日:2025/5/2
中古物件の仕入れやリノベーション・販売などをワンストップで手掛けるパックシステム(東京都品川区)。技術部の部長を務める五十嵐隆氏は、ビル・マンション建設などの現場監督を担当した経験を持つ。新築の施工時は、予め全容を策定後に詳細を詰めることが主流だが、「同じ手法をリフォーム・リノベーションで取り入れると、サッシや床、配管の高さなどにズレが生じ、結果的に全体が破綻する形に陥る」と語る。それを防ぐため、これまで若手の職人には各部門における細部策定の重要性を指導してきた。しかし、組織が成長するにつれて、「墨出しなど新築時の考え方を、どのように工夫すれば植え付けられるかも考えるようになった」と近況の変化を話す。似て非なるものである双方だが、ゼロから測量→設計→施工という過程を知ることで、俯瞰した視点を獲得できるという考え。「見えない箇所に最新の注意を払い、苦慮した点は決して見せない」という五十嵐部長の基本スタンスを象徴しており、今後どのような過程で現実を変革していくか注目である。
現場では、新入社員などが全力で作業に取り組んでいるが、「現在は、若手から会社の核になるリーダーを早急に育て、2世代先も見据えた後継者候補を見出すことに注力している」と本音を述べる。以前は、1ヶ月・10数件程度ある現場調査を全て五十嵐部長が行ってきたが、最近では様々な社員に場数を踏ませることを心掛け、順調に各々が技術の習得と積極的な体験を積み重ねることができているという。なぜ、このように部下を100%信用して仕事を任せられるのかという理由を聞くと、「私も技術に関しては社長から全ての権限を委譲されていて、それにより責任感が増し、組織を急速に成長させる経験ができたから」と回答。五十嵐部長が入社した2019年頃と比較すると、2022年度の売り上げは6倍以上を記録する見通しで、現在の若手社員の気力・モチベーションは溢れている状態にあるようだ。社長・上司からの信頼や期待、責任感の中で結果を出し続けてきたからこそ、同じように部下を心から信用することができる。パックシステムが次のステージを迎える準備は整いつつある。
「当社に所属するリーダーを一人前にすると同時に、当面は売り上げ100億円の達成を目指して事業展開することが目標だ。当社には、大工・設備・電気・クロス職人などの他、専属の協力会社など、緊急時にはお互いが補完し合える強固な関係で結ばれた仲間が多くいる。今後も『戦略は臆病で細心に、そして行動は大胆に』というスタイルを具現化できるよう、シンプルで美しく、壊れない建物を創る活動を続けていきたい」と展望を語った。
取材の終盤に、「余談になりますが~」と前置きした上で、「ビジネスは、将棋でなく囲碁をするイメージで行っている。面での展開という点では同じだが、囲碁にはパターンがあり、一瞬にしてターンが変わる特徴がある。あらゆる想定をしつつ、想定外が起こった際の対処が結果に直結することを把握しておくのがポイント」と仕事の神髄を教わることができた。ビジョン・ミッション・パッションを併せ持つ五十嵐部長が、羅針盤を務めるパックシステム。同社の着眼点からヒントを得られる要素は多いはずだ。
この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。