秋田県から塗装業の塗り替えを目指す 刀根商店
更新日:2025/3/27
刀根商店(秋田市)の刀根一社長は昨年3月、秋田県塗装技能士会の会長に就任した。自身に「この世の中から塗装が無くなってしまったらどうなるか?」を問うと、「無骨で味気ない、無味乾燥な世界が広がってしまうはず」との回答が出た。それを踏まえ「日々、意識されることの少ない塗装の重要性を、一般の方にも認知して頂けるような活動を心掛けたい」と業界の魅力を発信していく意義を語る。

目下、尽力するべきことを「塗装業界の知名度向上」に設定。県内各種にある塗装団体の役職を掛け持ちし、業界のPRに奔走する。「世間一般の方々が持つ塗装への印象は、『塗料の匂いが苦手』や『汚れてしまう』などネガティブな要素が多い。事実の一面を示すため否定はしないが、施工後に見違えるように変化した建物の姿。また、別の彩りを加えると違った街として活性化する実態も周知していきたい」と意気込みを見せる。県が主導する「けんせつ未来フェスタ」にも出展し、主に小学生らに簡単な塗装体験の機会も定期的に提供する。現場では自ら率先して「塗装が持つ『保護』『美観』『特殊機能の付与』の重要性を教えている。これは私自身の学びにも繋がり、新たなアイデアの源泉にもなっている」と全てを前向きに捉えられるスタンスが印象的である。

「他県と比べて」と前置きした上で、刀根社長は「幸い秋田県内の塗装工事は、他工種と分離発注される割合が高く発注量は多い状況のはずだ」と分析する。これは団体として何十年も陳情してきた成果であり、この先にインフラ維持修繕の激増が見込まれる重要なポイントになりそうだ。既にこの点を刀根社長も気付いており、「決して乗り遅れることがないよう、技術向上と担い手の確保を徹底する」と見通す。技能士会会長として、国家資格である塗装技能士の合格者を増加させていくことも重要任務となっており、採用を増やし適正な施工確保に向け、「優良な技能士を今まで以上に輩出してみせる」と強い覚悟を示している。

刀根社長は、「塗装という伝統の仕事を大切に引き継ぎ、移り行く時代とも向き合いながら、県民の皆さまの暮らしをより良くするサポートが続けたい」と意欲を見せる。会社は1948年の創業後、2代目が県内で初めての「特殊外壁吹付工事」「現場発泡ウレタン断熱工事」を施工するなど、その技術継承は今なお続いている。周囲からの「近い将来は、県内塗装業界の中核的な立場を任され、牽引していくはず」という期待も感じている。塗装業界を秋田県から塗り替えていくことは可能か。今後の刀根社長の活躍に注目していきたい。

この記事を書いた人

クラフトバンク総研 記者 信夫 惇
建通新聞社に10年間勤務。東京支局・浜松支局・岐阜支局にて、県庁などの各自治体や、建設関連団体、地場ゼネコン、専門工事会社などを担当し、数多くのインタビューや工事に関する取材に携わる。
2024年にクラフトバンクに参画。特集の企画立案や編集、執筆などを手掛けている。