事業承継を前に、大河原建設が盤石な体制を構築
更新日:2025/5/2
大河原建設(静岡県島田市)が、SDGs宣言を実施してから1年以上が経過した。宣言までの経緯を朝倉純夫社長(以下・純夫社長、写真左)に聞くと、「これまで静岡県および志太榛原地区で、いち早くISO9001(品質マネジメント) やエコアクション21、COHSMS(建設業労働安全衛生マネジメントシステム)、BCP特別保障(災害時発動型保障予約システム)を取得してきたので、SDGs宣言に行き着いたのは自然な流れだった」と振り返る。既に協力会社とは、エコアクションで連携した取り組みを始めていた。また新たな要素を加えると混乱を招く可能性があった為、朝倉大輔専務取締役(以下・大輔専務、写真右)は、「まずは、すぐに出来ること、今も出来ていることを宣言して、時間を掛けてSDGsを定着させていこう」と提案。少しずつではあるが、社員・協力会社に環境配慮や持続可能な活動の重要性が根付き始めてきたという。

大河原建設では、4年以上前から働き方改革関連法の猶予期間が終了する、いわゆる「2024年問題」の対策に着手してきた。早期から労働時間の上限や時間外割増賃金率引上げを行い、新入社員には研修で「災害復旧や復興事業に従事する場合は例外となる」などの基本教育を徹底。建設業界の慣習や特徴の理解を促進することで、社員の水準を向上させ、組織全体の強化を図ってきた。このような事前準備が功を奏し、「社内浸透までは時間を要したが、2024年を迎えるに体制を整えることができた」と純夫社長は語る。純夫社長は、「来年7月に完成する新社屋のグランドオープンを目処に、事業承継を実現したい」と考えており、この数年は「社長のバトンを渡すのが最後の仕事」と覚悟を決め業務を進めてきた。社長就任から21年目を迎える純夫社長は現在、有終の美を飾るための最終段階に入っている。

後継者となる大輔専務も徐々にバトンを引き受ける準備を進めており、3年前には社内で「IWORK(アイ・ワーク)委員会」を創設。何か新たな取り組みを開始する際は、委員会で共有後に各部署内でフィードバックし、正式な決定を通さなければならないというルールを策定。それ以降は、「書類の電子化やクラウド活用、土木のICT導入など、社内のDX化が加速し始めた」と大輔専務は話す。土木事業本部の鍋田卓宏工事部長は、「特に社員全員にスマートフォンとi-padを配布できた効果が顕著で、コロナ以前から少しずつオンライン化を進めてきたことが、現在のスムーズなDX活用に繋がっている。組織としての決まりを明文化し、社員がきちんと理解した上で物事を進める効果は計り知れない」と分析する。常に目線を先に向けているため、どこよりも早い取り組みが実現できる。SDGsや2024年問題、BCP対策など、大河原建設が早期に下した決断に、時代が後から追いつくというケースは想像以上に多い。



「4月から新卒13人・中途5人が入社したが、組織の永続を考えると、社員・組織全体の更なる強化は急務だと自覚している。当社は、地域社会との融合・調和を図り、豊かな文化づくりと発展を使命とする総合建設企業。頻発する天変地異が発生した際は、常に社員総出で駆けつけられる堅実な組織になれるよう、日々の業務に全力を尽くしていきたい」と大輔専務は今後の展望を述べた。
この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。