「関西で一番キカクガイな会社」を目指す花岡工務店。新規事業による局面転換を実施
更新日:2025/6/5
「社員の暮らしを豊かにするため、利益率や働きやすい環境づくりにも着目した組織運営を始める」。

花岡工務店(大阪府摂津市)の花岡雅仁社長はこの数年間、体制の盤石化を見据えた人材確保・育成を進めてきた。理由は、大半の重要事項をオーナーである社長が決め、会社の成長を鈍化させてしまう、オーナーズトラップの傾向にあると自身が考えたから。創業から「数多くの職人と共に地元に根付く工務店」として定着してきたが、これを受け一歩先を見る経営を意識するようになり、各部署に「最適な人の配置ができるよう動き始めた」と近況を語る。「これまでは、運転で例えるとハンドルの遊びに当たる要素が少な過ぎた。今年7月に創業20周年を迎えるに当たり、新たな取り組みを考えるようになった」と経緯を話す。現況を次のステージを迎えるための準備期間と位置付けており、それも最終段階に入ったようだ。


具体的に社内で掲げた打開策は、これまでのリフォームを主軸にしながら不動産・サウナ・知育玩具・ハウスクリーニングの4つの事業を新たに展開すること。所有はしていたものの、全く活用のなかった土地を見ながら、「自社が所有する賃貸物件にサウナ設置の選択肢を設け、外販できる仕組みも作れば可能性が広がる。その上で、随時エアコンやキッチンなど室内をクリーニングできる部隊を揃えれば、組織として上手く回せるのでは?」と漠然と思索。そこから即座に純国産ひのきを活用したサウナの製造を始め、正式リリース前に6台の導入先を決める実績を残すことができた。また、クリーニング事業でキャンペーンとして打ち出した「摂津応援プロジェクト」は、地元で大反響を呼び「全ての事業で想定以上のスタートダッシュを切れた」と振り返る。花岡社長が「人材や新規事業。不思議と危機感が頭をよぎった時に、ベストなタイミングで話が舞い込むことが多い」と話すように、花岡工務店で何かを始める際の動機は、運や縁やインスピレーションによることが多い。それは、小さな糸口でもチャンスと捉え、即決・即断・即実行に移せる花岡社長が、常に様々なアンテナを張り巡らせ続けてきた賜物。「これからは、私だけでなく社員全員が、自身による判断で同様の動きが取れる会社を目指す。仲間たちみんなの暮らしを豊かにできるよう、WIN×WIN×WINの三方よしの精神で健康的な経営にも挑戦する」と宣言しており、今後どのように組織が変容していくか興味深い。


2026年までの中期VISIONに「『関西で一番キカクガイ』と言われる企業になる」と掲げている通り、「当面は会社として桁外れに活躍できる分野を増やし、各企業と共に摂津市全体を盛り上げる活動を増やしたい」と目標を話す。2018年に発生した台風第21号の際、社員総出で町中の破損した屋根やガラスなどの修復に当たったことを受け、地元からは「次に天変地異が起きても、花岡工務店が居てくれるから大丈夫」と安心感を与えられている強みも大きい。「当社は、豊富な経験・技術を持ち合わせた唯一無二の職人集団。このプライドを胸に、今後も縁・絆を最重要視した活動を続け、地域活性化に貢献していきたい」と思いを述べた。会社の信念は、「縁を繋いで花となる」。今後、この花の輪がどのような広がりを見せるかに注目すべきである。


この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。