松下産業が「四方よし」体制で挑戦を加速化へ
更新日:2025/6/16
昨年12月に松下産業(東京都文京区)が、会社創業65周年を迎えた。これまで日本初の大深度地下立体駐車場付きビルの施工や、建築ストックの飽和状態を予測し早期にリニューアル事業に取り掛かるなど、独自性に富む事業を積極的に展開してきた。昨今では、4期連続での「健康経営優良法人認定(ブライト500)」や、がん予防活動に顕著な功績のある企業を表彰する「朝日がん大賞」を受賞するなど、堅実な経営理念を基に創意ある組織運営を手掛けている。

松下和正社長は、東京大学を卒業後に新卒で父・貞清氏が創業した「松下産業」に入社。当初、50人に満たない社員数を目の当たりに、「継続的な発展を望むならば、現時点から人集め・人づくりに全力を尽くすべき」と毎年20人規模の採用を続けてきた経歴を持つ。一昨年には、施工管理職の事務業務を全面的にサポートするため、グループ会社として建設総合サポート(東京都文京区)を設立。現場事務所で発生する事務作業などを請け負うことで、現場の負担軽減を試みている。「業界全体で慢性化する人手不足は深刻で、あらゆる策を講じなければ、手遅れになると感じて取り組みを開始した」と動機を話す。グループ会社には、とび土工・土木・外構などの専門工事会社も存在する。協力会社の事業承継がスムーズに進まないケースも増える中、「一定以上は自社グループ内で施工できる体制を構築できなければ、次に備えられない」と常に先を想定した動きを見せている。


現状では、隈研吾建築都市設計事務所(東京都港区)や安藤忠雄建築研究所(大阪市北区)など、名立たる一級建築士事務所との付き合いも多く、安定的な業務量の確保はできている。しかし最近、松下社長は「自分が今すぐトップを降りても、現状維持以上のパフォーマンスを発揮し続ける為には、どのような戦略を練るべきか?」と自身に問い掛ける時間も増えてきたという。長い年月を掛けてホールディングスを組成し、グループ全体の企画立案・経営管理も推進しており、直近の目標としては組織永続の道筋を確立することを至上命題にしているようだ。


日頃より「建設業は、お客さまの目的を叶える手段」と唱える通り、松下社長は「当社は、コンシェルジュのようなお手伝いの役割を担っている認識が強い」と本音を語る。時代がどのような変遷を辿っても、インフラ整備を含めた建物は決して無くなる物ではない。この普遍的な事実を原動力に、顧客の「思い」を価値に変えるプロフェッショナルとしての伴走者を目指している。会社としては、常に各社への高品質な技術の提供や、不動産の活用・処分、ファイナンシャルプランなど徹底したサポートを提案し、「四方よし(顧客・社員・地域社会・協力会社)」の関係を心掛ける。環境変化のスピードが加速する中でも、人・空間・時間に対して確かな技術で応対する松下産業。創業期から盤石な連携を見せる大林組(東京都港区)との関係性も強みの1つだ。建設に関わる「困りごと」を解消し、常に新たな価値の創造に挑戦するスタンスに変わりはなく、今後も現実に呼応した経営を続けていくはずだ。


この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。